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辺境のあざとい魔導士は禁忌の術式で死を欺く ―最強の盾と歩む理外の成り上がり譚―  作者: ゆっきー
第1章:始まりの王都

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第5話:「裏表と本音」

いつもお読みいただきありがとうございます!

探索を重ねるうち、エレンとノルンの関係にも変化が。エレンの「あざとさ」と「素の顔」の使い分けにご注目ください。

 王都の地下ダンジョン1階層。数匹のスライムとゴブリンを討伐した二人は、安全な通路の隅で休憩を取っていた。


「ふぅ……。はい、ノルンちゃん。水飲む?」


「あ、ありがとうエレンちゃん! 助かるー!」


 ノルンが水筒を受け取り、勢いよく水を飲む。その無防備な姿を見て、エレンはふっと肩の力を抜いて地べたに座り込んだ。


「本当に体力おばけだよね、ノルンちゃんって。私はもう足がパンパンで動けないよ」


「えへへ、元農婦だからね! でもエレンちゃんも、魔法のタイミングすっごく上手になったよ!」


「そう? ……まあ、死にたくないから必死なだけだけどね」


 エレンは飾らない口調で苦笑いする。

 出会った当初の『か弱くておっとりした少女』の完璧な演技は、すっかり鳴りを潜めていた。裏表がなく、自分のために必死に剣を振るってくれるノルンと一緒にいると、計算してあざとく振る舞うのが馬鹿らしくなってくるのだ。


 その時、通りがかった見知らぬ男の冒険者が、二人を見てニヤリと下卑た笑いを向けてきた。


「おいおい、こんな浅い階層でへばってるのか? 初心者のお嬢ちゃんたち。俺が奥の効率のいい狩場を案内してやろうか?」


 下心丸出しの軽薄な声。

 その瞬間、エレンの纏う空気がガラリと変わった。


「えっ……ほんとですかぁ?」


 エレンはパッと立ち上がり、上目遣いで男を見つめる。声のトーンは二段階上がり、潤んだ瞳で小首を傾げた。


「でも私たち、まだ本当に弱くて……。強いお兄さんの足手まといになっちゃうから、やっぱり申し訳ないですっ……」


「お、おう? そ、そうか……? まあ、怪我しないようにな!」


 エレンの完璧な『可憐で控えめな美少女』の圧に気圧され、男は鼻の下を伸ばしながらそそくさと立ち去っていった。


 男の背中が見えなくなった瞬間、エレンはすんと真顔に戻り、大きなため息をつく。


「……あー、気持ち悪っ。あんなのに付いていったら、絶対ろくなことにならないわよ。身ぐるみ剥がされるのがオチね」


「えっ? そうなの? 親切な人かと思ったけど……」


 キョトンとするノルンを見て、エレンは毒気を抜かれたようにクスッと笑った。


「ノルンちゃんは素直すぎ。王都は怖いところなんだから、変な虫がつかないように私がちゃんと守ってあげるからね」


「うんっ! エレンちゃん、すっごく頼りになるー!」


(……ほんと、この子の前だと素が出ちゃうな)


 エレンはノルンの頭を優しく撫でた。

 他人の前ではあざとく、計算高く。けれど、たった一人の相棒の前では、ただの素直な女の子でいられる。それが今のエレンにとって、何よりの居場所になっていた。


最後までお読みいただきありがとうございます!

他人の前では完璧な演技をこなしつつ、ノルンの前では年相応の顔を見せるようになったエレンでした。

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