第2話:「愛嬌と鉄則」
いつもお読みいただきありがとうございます!
いよいよエレンが冒険者ギルドに足を踏み入れます。純朴な田舎娘を演じる彼女の計算高さにご注目ください。
王都の中央にそびえ立つ、巨大な石造りの塔。冒険者ギルド協会。
重厚な観音開きの扉を押し開けると、むせ返るような酒と汗の匂い、そして荒くれ者たちの喧騒がエレンを包み込んだ。
(……うわ、見事にむさ苦しい男の人ばっかり。でも、これだけ人がいれば『使える』人も多そうね)
無数の鋭い視線が、入り口に立つ華奢な少女へと突き刺さる。
エレンはわざとらしくビクッと肩を震わせ、おどおどと身を縮こまらせた。小動物のように怯える姿を見せれば、大抵の男は毒気を抜かれるか、見下して興味を失う。無駄な絡まれ方を防ぐための、彼女なりの処世術だ。
視線を伏せたまま、受付カウンターへと小走りで向かう。
「あの……すみません。冒険者の登録をお願いしたいんですけれど……」
上目遣いで、消え入りそうな声を出して受付嬢に話しかける。
ベテランらしき女性受付嬢は、エレンの小柄な姿を見て少しだけ眉を下げた。
「登録だね。いらっしゃい。……でもお嬢ちゃん、ここは遊び場じゃないよ? 怪我じゃ済まないこともあるけど、覚悟はあるのかい?」
「はい……っ。辺境のアルンから、立派な冒険者になるために来ました。お父さんたちみたいに、強くなりたいんです!」
エレンは両手でギュッと拳を握り、真っ直ぐな瞳で熱弁した。
健気で一生懸命な少女の姿に、受付嬢は小さく息を吐き、微笑みを浮かべた。
「そうかい。それなら止めないよ。この用紙に名前と年齢を書いて。まずは一番下の『Fランク』からのスタートになるよ」
(ちょろい。愛想よくしておけば、ギルドの職員は絶対に見方になってくれる。これも計算通りね)
エレンはにっこりと笑い、流れるように手続きを済ませた。
渡されたのは、粗末な銅製のギルドカード。これが、彼女が冒険者になった証だ。
レベル1、HP20、MP10。魔法は初期の火炎球と、剣の基本スキルであるスラッシュしか使えない。
「ありがとうございます! あの、王都のダンジョンって、初心者でも安全な場所はありますか?」
「1階層の入り口付近なら、スライムや弱いゴブリンしか出ないから安全だよ。でも、奥には絶対に行かないこと」
「はいっ! 気をつけて行ってきます!」
受付嬢に元気よくお辞儀をして、エレンはギルドを後にした。
足取り軽く、王都の地下に広がるダンジョンへと向かう。
(1階層の入り口付近なら安全、ね。……でも、それじゃあ効率が悪い)
薄暗いダンジョンの入り口を前に、エレンは冷めた目で周囲を観察する。
これから自分に必要なのは、前衛で壁になってくれる都合のいい『仲間』だ。
(誰か、お人好しで、適度に強くて、私の言うことを聞いてくれそうな人……いないかな)
ショートソードの柄に手をかけながら、あざとい少女はダンジョンの暗がりへと足を踏み入れた。
最後まで読んでいただきありがとうございます!
無事にFランク冒険者になれたエレンですが、ソロで地道に戦う気は毛頭ないようです。
次回、いよいよダンジョン探索開始です。彼女がどんな「カモ」を見つけるのかお楽しみに!
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