第16話:「贈り物の真価」
いつもお読みいただき、ありがとうございます!
九死に一生を得て、伝説の勇者一行から宝物を授かったエレン。
贈った本人の意外な反応(?)にご注目ください。
エドとレノアの背中が、ダンジョンの奥深くへと消えていく。
エレンはその場に一人取り残されたが、先ほどまでの絶望感は嘘のように消えていた。手の中にある青い宝石の熱が、彼女に確かな「生」を実感させていたからだ。
「……つけてみようかな」
エレンは震える手で、銀の鎖を首にかけた。
宝石が胸元に触れた瞬間、ひんやりとした感覚とともに、体温がわずかに上がるような錯覚に陥る。
(……あ、すごい。本当に魔力が……)
エレンがステータスを確認すると、底を突いていたはずのMPが、一秒ごとに一滴ずつ滴り落ちる水のように、じわじわと回復し始めていた。彼女にとって、MPが自動で回復するなど、本来なら夢のような話だ。
だが、変化はそれだけではなかった。
「……? なんだか、視界が……」
ペンダントをつけてから数秒。
エレンの視界の端に、ノイズのような光が走り始めた。
集中して前方の岩壁を見つめると、そこにあるはずのない『文字』が、薄らと浮かび上がって見えたのだ。
(【材質:迷宮石】【耐久値:800/800】……? なにこれ、どういうこと……?)
それだけではない。
通路の影を這っていた小さなスライムに視線を向けると、その頭上にも奇妙な情報が表示された。
(【種族:スライム】【レベル:1】【危険度:E】【弱点:火属性】……うそ、魔物の情報が勝手に見える……?)
レノアから貰ったペンダントには『魔力回復』以外の、明らかに異常な付与効果。
エレンは、自分にだけ見えるその景色に、驚愕して立ち尽くすしかなかった。
***
その頃、エレンたちが別れた場所からさらに数階層下。
エドとレノアは、暗闇の中を猛スピードで突き進んでいた。
「ふふーん、ふふふーん♪」
機嫌よく鼻歌を歌いながら、レノアがスキップ混じりに通路を曲がる。
その背後で、エドがふと思い出したように口を開いた。
「そういえばレノア。さっきエレンにあげたペンダント、あれお前の私物だろ? 結構いいやつじゃなかったか?」
「え? ああ、あれね! うん、お師匠様からもらった試作品だよ。あー、でも今思い出しちゃった! あのペンダント、もう一つ特殊効果があったんだっけ!」
レノアはポンと手を叩き、テヘッ、といたずらっぽく舌を出した。
「特殊効果? 回復以外にか?」
「そうそう! 確か『鑑定』とかいう、隠されたステータスや弱点を可視化しちゃう呪……じゃなくて、祝福がついてた気がする! 言うの忘れちゃった、えへへ!」
「……おい。それ、初心者が持ってて大丈夫な代物か?」
「まあ、いっか! 悪い効果じゃないし、エレンちゃん賢そうだったから使いこなせるでしょ! それよりエド、またそっち行き止まりだよー!」
「なっ、嘘だろ!? こっちが最短ルートだと思ったのに!」
レノアは鼻歌を再開し、再び迷走を始めるエドを笑いながら追いかけていく。
彼女が忘れていたその「おまけ」の効果が、少女にとってどれほどの劇薬になるのか。
レノアには、知る由もなかった。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
エレンが手にしたのは、ただの回復アイテムではなく、世界の理を覗き見る「情報の武器」でした。
計算高いエレンにとって、これ以上の相棒はありません。
次回、地上に戻ったエレンとノルンの再会、そして……?
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