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辺境のあざとい魔導士は禁忌の術式で死を欺く ―最強の盾と歩む理外の成り上がり譚―  作者: ゆっきー
第1章:始まりの王都

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第13話:「終わらない迷路」

いつもお読みいただき、ありがとうございます!

死を覚悟したエレンの目の前で、ついに勇者エドがその力の一端を見せつけます。

絶望が希望に変わる瞬間……と思いきや、彼らには致命的な弱点がありました。



「――グルアッ!!」


 キマイラがその巨体を揺らし、エドにめがけて突進を開始した。

 空気が震え、床が鳴る。エレンにとっては、山が崩れてくるかのような絶望的な光景だった。


 しかし、エドは一歩も動かない。

 それどころか、剣を鞘から抜くことすらしなかった。


「邪魔だ!」


 冷淡な一言と共に、エドは鞘に収まったままの剣を、無造作に横へと一振りした。

 たったそれだけだった。


 ドォォォォォンッ!!


 衝撃波が通路の空気を圧縮し、キマイラの巨体を真横から叩き潰した。

 鋼のような筋肉も、3本の頑強な角も、レベル70の圧倒的なまでの力の前には紙細工も同然だった。

 キマイラは悲鳴を上げる暇すらなく、通路の壁へと叩きつけられて絶命し、一瞬で光の粒子となって霧散した。


「あ……」


 エレンの喉から、乾いた声が漏れる。

 自分が死を覚悟した「絶望」が、たったの一振り、それも鞘のままで片付けられた。

 恐怖があまりに大きすぎて、もはや驚愕すら追いつかない。


「ねぇエド、そんなことより早くエレンちゃんを送ってあげようよ! 見てよ、可哀想にまだ震えてるじゃない!」


 レノアがエレンの肩を抱き寄せ、エドを急かすように声を上げた。


「分かってるって! ……えーっと、たぶんこっちだな」


 エドは頭を掻きながら、自信なさげに左側の通路を指差した。

 だが、その表情には先ほどの圧倒的な強さは微塵も感じられない。


「エドの『たぶん』は一番信じられないんだからー! エレンちゃん、大丈夫? もう怖いのはいないからね」


「あ、ありが……とう、ございます……」


 エレンはレノアに支えられながら、ふらつく足で立ち上がった。

 命を救われた安堵。異次元の力への畏怖。そして……。


(……この人たち、強い。信じられないくらい強い。……なのに、どうしてこんなに迷ってるのよ!?)


 それからさらに15分。

 三人は再び、先ほどキマイラを倒した場所とよく似た、行き止まりの広間に立っていた。


「……なぁ、レノア。さっきもここ通らなかったか?」


「もう! 分かってるって言いながら、また逆方向に進んでるじゃない!」


 勇者の力を持ってしても、ダンジョンの構造という壁だけは、どうしても切り伏せることができないようだった。



最後までお読みいただき、ありがとうございます!

キマイラを鞘のまま一撃で粉砕したエドでしたが、方向音痴という呪いからは逃れられないようです。

エレンを抱えたまま、迷子の勇者一行は果たして1階層に辿り着けるのでしょうか。

次回、さらなる迷走が彼らを待ち受けます。ぜひお楽しみに!面白かったらブックマークや評価での応援をよろしくお願いします!

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