第10話:「迷子の勇者と絶対的な力の差」
いつもお読みいただき、ありがとうございます!
命を救われたエレンですが、助けてくれた恩人たちも少しばかり『抜けている』ようで……?
ついに規格外の強者たちの年齢と正体が明かされます。最後までお楽しみください!
粉々に砕け散った魔物の残骸と、冷たい冷気が漂うダンジョン2階層の通路。
へたり込んでいたエレンは、震える足に鞭打って立ち上がり、目の前の少年と少女に深く頭を下げた。
「あ、あの……! 助けていただいて、本当にありがとうございました……っ!」
「気にするな。たまたま通りかかっただけだから」
少年は無造作に剣を鞘に収め、呆れたようにエレンを見た。
「それよりお前、なんでこんな階層に一人でいるんだ? どう見てもレベルが足りてないだろ」
「それは……」
エレンは俯き、野良パーティに騙されて魔物の群れのど真ん中に囮として置き去りにされたことを、かいつまんで説明した。
それを聞いた途端、天真爛漫な表情をしていた少女が「信じらんない!」と頬を膨らませた。
「ひっどーい! エド、その悪い奴ら見つけてやっつけに行こうよ!」
「馬鹿言うな、レノア。そんなことより、こいつを1階層に送り届けるのが先だろ」
エドと呼ばれた少年は小さくため息をつき、エレンに向き直った。
「俺たちが上の階層に繋がる階段まで護衛してやるよ。ついてきな」
「本当ですか!? ありがとうございますっ!」
(よかった……! この人たちがいれば絶対に安全ね)
エレンは内心でホッと胸を撫で下ろし、自分よりも年下に見える二人の後ろを小走りでついていく。
しかし、頼もしい恩人たちの背中を見つめながら歩くこと十数分。
通路の角を曲がるたびに、なぜか見覚えのある冷たい石壁の行き止まりにぶつかっていた。
「あれー? エド、ここさっきも通った行き止まりだよー?」
「おかしいな……俺の直感だとこっちのはずなんだけど……」
エドが気まずそうに頭を掻く。
エレンは引きつった笑顔で悟った。この圧倒的な強さを持つ恩人たちは、ダンジョンで完全に迷子になっているのだと。
「あ、あの……もしかして、道に迷われましたか……?」
「うっ……まあ、その。下層に向かってる途中で道に迷……い、いや、寄り道、そう!寄り道さ!」
「エドったら本当に方向音痴なんだからー! あ、私レノアって言うの! 年齢は13歳! こっちの方向音痴がエド! 君は?」
「エレン、17歳です。辺境から来たばかりの、レベル3のFランク冒険者です……」
(えっ、13歳!? 私より4つも年下……!?)
臨時パーティとして1階層を目指す道すがら、エレンは内心で驚きつつも、ずっと気になっていた最大の疑問を口にする。
「あの……お二人は一体、何ランクなんですか? さっきの魔法も剣技も、すごく手慣れていて……」
「俺たち? ……Sランクだけど」
「えっ?」
あまりにもあっさりとした回答に、エレンは素っ頓狂な声を上げた。
Sランクといえば、冒険者の頂点。一騎当千の化け物たちだけが名乗ることを許される、生きた伝説だ。
目の前にいる、自分よりも4つも年下の子供たちが、Sランク?
「エドはレベル70の『勇者』でね、私はレベル60の『エレメンタルマスター』なんだよー!」
レノアが無邪気な笑顔で、とんでもないことを言い放った。
(レベル、70……!? 60……!?)
エレンの頭の中が真っ白になる。
エレンのレベルはたったの3だ。自分より年上のカインですらレベル7程度だったというのに、13歳で70という数字はもはや理解の範疇を超えていた。
「ゆ、勇者って……あの伝説の……?」
「まあ、そうだな」
「エレメンタルマスターは、魔法職の最上位ですよね……!?」
「うんっ! すべての魔法をマスターしてるよ!」
何でもないことのように頷く二人を見て、エレンはゴクリと唾を飲み込んだ。
間違いない。この二人は、ただ強いだけの冒険者じゃない。
世界そのものの理を外れた、本物の『規格外』だ。
(……すごい。この人たちと一緒にいれば、絶対に死なないどころか……)
恐怖と混乱が引き去ったエレンの胸の奥で、成り上がるための、ある途方もない『計算』が黒く芽吹き始めていた。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
迷子になっていたのは、まさかの勇者たちでした。
そしてついに明かされた13歳という年齢と、レベル70・60という圧倒的な数字。レベル3のエレンは、この絶対的な強者たちを前に何を企むのでしょうか?
次回もぜひお楽しみに!面白かったら、下部のボタンからブックマークや評価をお願いいたします!




