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辺境のあざとい魔導士は禁忌の術式で死を欺く ―最強の盾と歩む理外の成り上がり譚―  作者: ゆっきー
第1章:始まりの王都

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第1話:「計算高い田舎娘」

数ある作品の中からお目に留めていただき、ありがとうございます。

辺境の街アルンから夢を抱いて王都セントイベリアへとやってきた少女エレン。

けれど彼女は、決してただの純朴な田舎娘ではありません。

本話は、そんな彼女の“始まり”となる一幕です。

 巨大な石壁に囲まれた王都セントイベリア。

 その威容を前に、エレンは小さく目を見開いた。


(……うわぁ、さすがは王都。大きな街……辺境のアルンとは規模が違いすぎる!)


 胸の内では冷静に分析しながらも、表向きには“初めての大都会に圧倒された、純朴でか弱い田舎娘”を完璧に演じる。


 正門前では、厳つい顔つきの門番が訪問者たちを検問していた。

 エレンはちらりと列を眺め、小首をかしげる。


「あの列に並べばいいのかな……?」


 やがて彼女の番が来ると、門番が値踏みするように声をかけた。


「お嬢ちゃん、王都は初めてかい?」


「あっ……はい! あの、冒険者になりたくて、遠くのアルンっていう街から来たんです!」


 エレンは少しだけ上目遣いになり、不安げにモジモジと身をよじる。

 小柄で華奢な体格も相まって、いかにも庇護欲をそそる少女の姿に、門番の険しかった目元がわずかに緩んだ。


「アルン? また随分と遠いところから来たんだな。ようこそ王都へ! だが悪いな、規則で素性の分からない者を簡単には通せないんだ」


 門番は大きな槍を交差させ、申し訳なさそうに通せんぼをする。


「えっ……私、街に入れないんですか……?」


 エレンは大きな瞳にうっすらと涙を浮かべた。もちろん嘘泣きだ。


「い、いや! 入れないわけじゃない! 何か身分を証明できるものはないかい?」


 慌てて取り繕う門番を見て、エレンは心の中で舌を出す。


 彼女は小さなポシェットから銀色のプレートを取り出した。

 それは出発の日、父から手渡されたものだ。縁は擦り減り、長年大切にされてきたことがうかがえる。


「これ……お父さんが、肌身離さず持っていなさいって」


 門番はそれを受け取り、手元の魔道具にかざした。淡い光が走り、刻まれた紋章が一瞬だけ浮かび上がる。


「うん、身分は問題ないな。改めてようこそ、王都セントイベリアへ! 冒険者になりたいなら、中央の大きな塔が冒険者ギルドだ。まずはそこに行きな」


「本当ですか!? ありがとうございます、門番のおじさんっ!」


 満面の笑みでぺこりと頭を下げると、門番はすっかり気を良くしたのか「気をつけろよ」と、ポケットから携帯食の干し肉をいくつか持たせてくれた。


(ふふっ……チョロい。やっぱり愛嬌とあざとさは最大の武器ね)


 干し肉をありがたく受け取りながら、エレンは王都の門をくぐる。


 まだ冒険者ですらない、何のランクも持たないただの少女。

 だが、辺境の一階層ダンジョンで弱い魔物を相手に、地道な計算と立ち回りを積み重ねてきたその瞳は、決してただの田舎娘のものではない。


(まずはFランク……そこから一気に駆け上がる。

 ――絶対に、頂点まで)


 壮大な王都の景色を前に、エレンは誰にも見せない野心の笑みを浮かべた。


王都の門をくぐり、エレンの下剋上がいよいよ始まります。

次回は、冒険者ギルドでの登録へ――。

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