No.6 この世界で暮らす為に
No.6 この世界で暮らす為に
"無人島に流れ着いた時にまず初めに何をするか?"
人間、一度は考えた事のあるテーマだと思う。
まさに、私は無人島に流れ着いたと同等の始まり方をしていると言っても過言では無い。
何も無い所に来て、地理も何も分からないまま闇雲に歩き続けている。
さて、無人島生活1日目にする事と言えば、日が沈む迄に、水の確保・寝る所の確保・食料の確保・火の確保が優先事項とされているが、水の確保はクリアしている。
「後は、火と寝床と・・・食料は・・・」
チラリと先程絶命した鹿に目線を向けるが…
「無理無理無理、私動物を捌くとか出来ないし!度胸も無い!」
そもそも、今は何時なのだろう?この世に日暮れとかあるのだろうか・・・?
「正直、余りお腹空いてないと言うか…死後の世界ってお腹空くとか、あるの?」
日が沈まなければ、火も必要が無い気もして来た。寝床も同様。
悩んだ結果
「取り敢えず、ここは水の確保出来る所として覚えておいて、人を・・・・・・村的な物を探そう!」
小道があるのだから、道なりに進めば自分と同じような、死人が作った村とかあるかもしれない。
何も出来ない人間が暮らして行くには、情報も手段も何もかもが足りない。
何でも調べられる便利なスマホはこの世に存在していないのだ。
人を見つけてそのコミュニティに所属すれば、知恵も知識も手に入れられる。
「後々お腹が空いた時に、食べられる物の区別とか知っていた方が良いし・・・」
水洗いして枝に掛けていたスーツ・・・・・・
かなり破けてダメージジーンズかと思う程のパンツと、袖がそれなりに破けてノースリーブに近いジャケットとブラウスが乾いたタイミングで、森を抜けて小道に戻った。
「この方向で合ってると良いけど・・・」
そこから更に誰に出逢う事も無く、2時間くらい道なりに歩き続けた。
「・・・これで人が住んでる村が真反対でしたーなんてオチだったら、笑っちゃうかも・・・」
日は相変わらず、高々と空に鎮座している。
「もうこうなったら、日暮まで粘って粘って歩き続けてみるしかない・・・!」
日を指差し、勝手に勝負を挑んだ。
日が落ち切るが先か、私が人を見付けるか・・・
絶対に負けられない戦いが今始まった。
ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー
「はい!私の負け!!!!!!」
あの後急に日が傾き始めた。
私を嘲笑うかの様に、確実にスピーディーに落ちて行き、人工物の無い屋外を闇が覆い尽くした。
街灯なんて物も当然無く、月の様な光が上空にあるのみで、明るいとは言い難い。
負け犬の私は、慌てて夜を凌げる場所を探したと言う訳だ。
「ふぅ・・・危なかった・・・ここなら平気かな?」
この世に来てからと言うもの、地上で生物達に襲われすぎて良い思い出が無い為、せめて夜の間くらいはゆっくりしたい・・・と、日暮れギリギリ迄粘った末ようやく見つけたこの木の上を安息の地と決めた。
大樹と言うほどでは無いが、そこそこ大きい立派な木だ。ひとまずこれで無意味に襲われる心配も無くなったと思う。
産まれて初めて経験する、月明かり頼りの夜。
生きていた頃は夜であっても、車の走る音、人のざわめき、犬の鳴き声がアパートの部屋に聞こえて来ていた。
その状況で寝ている時には、うるさいと思っていたが、今は自分が立てる音と風の靡く音以外に聞こえない。それがこれ程に不安を掻き立てるとは思わなかった。
「うぅ・・・早く寝て、明日は日の出と同時に出発しよう・・・おやすみー!」
明日こそは人に出逢う事を願って。
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