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No.30 これ迄の事


No.30 これ迄の事





皆が寝静まった後、パチパチと焚き火が爆ぜる音と草を揺らす風の音を聞きながら過ごす。


馬車に付いていた光魔法の魔導具に比べると照らす範囲は狭いが、火の灯りの先にある闇夜は不思議と怖くは無かった。


1人で夜を過ごしたあの日が、もうずっと前に感じる。たった数日しか経っていないにも関わらず、そう思うのはヴィクターさんに出会い、ギルドに辿り着き、温かい食事と帰る家迄・・・

知らない世界での不安が柔らいで、安心感に変わりつつあるからかも知れない。



「早く、一人前になって、助けて貰った分助けけ返せる様に・・・戦力になれたら良いな・・・」



火に新しい薪を焚べると振動で火花ほくずが舞い、そのまま空へと昇って行く。



ユラユラと揺れる火を眺めながら、怒涛の様に過ぎて行った数日を思い出していたのだが、いつの間にか数時間経っていたらしい。



「そろそろ交代だ」


「えっ?あ・・・もうですか?」


「睡眠は十分に取れた」


木の幹から体を起こし、ヴィクターさんが焚き火の側に座る。


「えっと、異常はありませんでした」


「そうか」


「・・・・・・まだ眠く無いので、もう少し火を眺めていても良いですか?」


「・・・構わないが、頃合いを見て休むように」


「はい」


昨日と一昨日は割とすんなり寝られたが、今日はまだまだ眠気が来なさそうだ。ヴィクターさんの邪魔にならない様、出来るだけ静かにその場に残った。



「───聞いても良いか?・・・・・・」


「?」


「夕食の時、口に含んだ肉に"熱い"と言っていたな?防御力が規格外であっても、火傷程度に反応する痛覚が機能しているのか?」


「・・・・・・あ、本当だ」


言われてみると、確かにそうだ。

衣服を溶かす程のスライムの液を初めて食らった時も、熱さを感じた。


本来肌に触れると皮膚が溶けてしまう物を受けて、その程度で済んでいる事を考えると、防御力の高さは言わずもがな。にも関わらず、口の中の熱さに反応したのは不可解である。



「痛み?と言うより瞬間的な驚きに近いです・・・・・・あ、でも鹿に突進された時は触れた感覚はあったんですが、痛みとかは無くて・・・・・・」


「・・・・・・・・・そうか・・・」


「なので、普通なら口の中を火傷してもおかしくないはず・・・でも、火傷をしている様な痛みも無くて・・・あの瞬間だけ、熱いと感じたのは確かなんですが・・・」


それとも、反射的に熱さを感じるのは、前世の名残りなのだろうか・・・?


「・・・・・・どうなっているんでしょうね、私の体は・・・」


はははー、と乾いた笑いが辺りの闇に消える。


「俺の知り得る範囲を超えている事象が多い中で、適当な事も言えないが、冒険者として経験を積む中で、解明されると良いな」


「そうですね・・・ありがとうございます。そろそろ寝ますね・・・」



ヴィクターさんの、穏やかな声色に喉の奥がギュゥ・・・と詰まり、感情が揺れるのが分かった。

多分、このまま話し続けると涙が溢れ出そうな気がして、慌てて立ち上がり木の幹の方へと歩き出す。



「ゆっくり休め」


背中に向けられる声に頷き、「はい」と返事をしたかったのだが、込み上がる感情で喉が詰まり、声は上手く音にならなかった。



火の番をする際に冷えるからと渡された外套のフードを目深に被り、目を閉じると背中を預けた幹を返して自分の鼓動を感じる。


きっと、少し気が緩んだだけだ。眠って今日を終えれば、明日はまた踏ん張れる。



分からない事だらけだが、立ち上がって歩き出すには、十分過ぎる程に助けられている。


成り行きで師従関係を結んで貰えたヴィクターさんは、私には勿体無い程に頼れる上司。

それ故に、余り心配は掛けたくない。




"いつまでも新人の感覚でいて貰っても困るんだよね。こっちも自分の仕事もあんだからさ"




意識が落ちる寸前、誰かに言われた言葉が頭に響いた───・・・





.


今回は、文字数がかなり短めですので、後でもう1話更新します( ̄^ ̄)ゞ

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