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No.18 また何か問題が?


No.18 また何か問題が?





「では、続いてギルド登録も行わせて頂きます。腕輪を装着後こちらの魔導具に手を置いて頂けますでしょうか?」



身分登録の時に使った丸い魔導具が下げられ、今度は四角い板の様な物を前に置かれる。

深い青と透明が混じり合った不思議な色合いだ。


ゆっくり手を乗せると、ヴンッと言う音と共に目の前に何かが投影させる。


「こちらが、メグミ様の今の冒険者としての情報になります。基本ステータス、魔法適正───・・・があった場合の使用可能魔法、技のスキルと言った、おおよそ必要になって来る情報はこちらからご確認して頂ければと思います。こちらも個人情報となりますので、我々の確認できる項目とご本人のみが確認出来る項目と分かれています」


「ん?冒険者レベルとしてはE級なのは分かるが、ステータスが低過ぎやしねぇか?」



基本ステータスは自分以外も見られるらしい。

とは言え、そもそもの基準を知らない為これが低いのかどうかは判断出来ない。


「個々の数値も魔力以外がほぼ1000以下・・・精神は他より少しマシなくらいか・・・・・・1000以下が当たり前のE級らしいっちゃらしいが・・・」


「あら、本当ですね。マスターの一撃を耐えるとなれば、防御力が最低でも1500は無いと即死ですが・・・メグミ様は無傷でいらっしゃるので、おかしいですね・・・」


「ミスリルも、この攻撃力で砕ける程脆くは無い・・・」


3人共、齧り付くように私のステータスを確認している。私もちゃんと確認したいので、3人の間に頭を捩じ込ませて覗き込む。


私のステータスは1000以下のE級相当ばかりとの事で、防御力も780としっかりとEだ。


ステータスは白文字で表示されているのだが、その数字の横に"かっこ書き"で何か表示があるのだ。これは何の表示だろう?色も青色で何の意味があるのだろう・・・



「あのー、この数値の後ろ?横?に、かっこで別の表記が並んでいるのですが、これは何でしょうか?」


「かっこ?もしかして、+の事か?」


「はい、えっと、防御力の数字の後に+10000とありますね」


「「「はぁ(え)?」」」


部屋の空気が凍る気配がした。

3人の表情と動きは完全に固まり、時間が止まったとすら思える程に静寂に包まれる。

少々経った後、初めに沈黙を破ったのは、グランさん。


「はぁぁ?!待ってくれ、嬢ちゃん!!お前さん、それは冗談か??」


「え、いえ、書いてあるがままです+10000で間違い無いです」


「どう言うこった・・・アイテム複数使用、魔法バフ重ねがけをしたとしても、精々+1000」


先程まで、細かい事は気にするな!と快活の表情だったグランさんが一転、口籠もった独り言と共に頭を抱え込んでしまった。

この+は一体何だと言うのだ?誰か説明をして欲しい。


「は――・・・これを見てみろ。その+は付いていたとしても他人に見えないが・・・」



魔導具にヴィクターさんが触れ、私の表示の横に私のステータスと同様の表示が現れる。

並ぶ2つの表示は良く似ているが、それはヴィクターさんの物で、羅列される情報はごく僅か。なるほど、私の表示も他の人にはこう見えているのか・・・


ヴィクターさんのステータス、今議題に上がっている防御力は、7600・・・


「7600としか見えないです」


「その+表示は、防具や戦闘時にアイテムを使用しステータス上昇をした時、もしくは自他の魔法バフ効果によってのみ上昇する。言わば、追加効果のような物だ。ちなみに俺のステータスにはその+表記は出ていない。効果を発揮する物を何も使用していないからな」


「私も何も持っていませんし、出来ませんよ?」


スーツのまま、この世界に来た無一文、所持品無しの私が、アイテム?を持っているはずも無い。魔法適正もたった今、無いと公認されたばかりだ。


「あぁ、そう言っていたな。なら何故お前にバフが掛かっているのか・・・と言う話になって来るな」


「・・・た、確かに・・・」


「思い当たる節は?何か口にしたか?」


「え――と・・・」


思い当たる事と言われても、こちらに来てから水くらいしか摂っていない。そう言えば何も食べずじまいだ。


「水以外は何も食べていません」


「最後に何か口に含んだのはいつだ?」


逆に最後に食べたのはいつだろうと考えたが、多分会社のデスクで、パソコンと格闘していたあの日・・・エナドリ過剰摂取したのが最後だろう。


「あ、ここに来る前に、仕事中にエナドリ・・・眠気を飛ばして、集中力とかやる気を持続させる飲み物は飲みました」


「ポーションの事か?」


「ぽーしょん?」


「体力を回復したり、特殊効果を付随する経口薬液だ。戦闘時に使用する場合が殆どだが、飲めばこの防御力の後に+で追加で数値が表示される」



いやまさか、普通にコンビニで買える飲み物がこんなファンタジーな世界の飲み物と同等の物なはずが・・・


「でも、飲んだのかなり前ですよ?もう日にちも変わっています。エナドリの効果なんてもって精々6時間くらいで・・・もうとっくに効果切れてるはずです」


本来の用法容量を見ないふりして、切れる度に追いエナドリしていたのでそれだけは分かる。


「そうか、なら後考えられるのはお前自身の特性か何かが関係しているのか・・・?」


「特性?」


「正解には固有スキルと言う物で、生まれながら通常とは違う体質を持っている者の事だ。例えば俺は・・・まぁ、血筋の関係で"剣聖"の特性がある。端的に言うと、剣の才能に加え初めから剣術に特化したバフが掛かっている状態だ」


「へぇー!生まれつき才能があるの凄いですね!」


「それより、今表示されているステータスの下辺りにその記載があるはずだ。特性は人によっては秘匿情報だから自身しか見る事は出来ない様になっている」



なるほど、細かい説明文が付いている項目はまだ目を通して無かった。指示された項目に目を通しながら読み上げる。


「《固有スキル》えっと・・・過去に積み重ねた行いがやがて自身の体を常に強化し続ける。その体は盾となり矛となり自身を輝かせる───と書いてあります」


「そうか・・・」


「でも《固有スキル》の横と、説明の後半はボヤけていて読めません」


過去に積み重ねた行い・・・

不摂生、睡眠不足、雑な食生活、栄養補う為のサプリや栄養ドリンク、エナドリ漬け

およそ、人としての生活における悪行の限りを尽くしたと言える積み重ねの先に私は、一体何を得たのだろうか?


「と言う事は、まだ情報開示に必要なレベルが足りていないのか、または経験か。どちらにせよ、原因は分かった。そのお前の飲んだというポーションからの影響をこの世界でも受けているんだろうな」


「まさか・・・」


「そうとしか説明が付かないだろう。人によって一風変わったスキルもある。固有スキルならあり得ない話でも無い」


繰り返した悪行の中でも突出しているのが、確実にエナドリ過剰摂取。

酷使され続けた私の体は、この世界で固有スキルと言う物に変化したとでも言うのだろうか。


「ギルマス原因が分かった。固有スキル持ちだ」


眉間に深い皺を刻み、唸り続けているグランさんをヴィクターさんが静止し、事の次第を説明してくれた。



「なるほどな、固有スキルか・・・またとんでもないタイプのスキルだな・・・嬢ちゃん、そのスキルについては、余り口外せずここだけの話にしとくぞ」


「分かりました」


3人の表情から他人に知られると、良くない事になる気配がビシビシ伝わって来る。気を付けよう。


「それでは、この情報をメグミ様の腕輪に登録させて頂きます!───はい、完了しました。最後に、師従関係の契約を致します。ジルニード様、メグミ様、握手の様な形でお互い腕輪を付けた手を握って下さい」


お互いの左手を前に出し、握り合う。よろしくお願いしますの挨拶と言う事だろうか?そう思った瞬間、同時に魔法石が金色に光り、私とヴィクターさんを大きな円で囲った。


何事かと驚いていると、その光の帯は直ぐに8の字の様な形に変化した。それぞれが円の中に収まっている状態だ。

全く予測不明の事に思わずヴィクターさんに、これは何ですか?と目で訴える。


「直ぐ終わる」


その声と同時に、光の円は急速に小さく縮小して行き、互いの腕輪の石に吸い込まれた。


「はい!これで師従の契約も終わりです!お疲れ様でした」


エリスさんは、パンッと手を叩き終了の合図をする。光の吸い込まれた腕輪の石を不思議そうに眺める。


「大まかな情報と、師従の契約についての情報がそっちと俺の魔法石に記録された。今後の冒険者としての成長や変化はこちらでも見られる様になった」


「そうなんですね、えっと、改めてよろしくお願いします」


「あぁ、よろしく」


先程より僅かだが返答に柔らかさが含まれている気配がして、少し安堵する。

このままちょっとずつでも、打ち解けられたらより良い関係を築けるはずだ、気持ち長めに行こう。


「後は、私個人から1つ。メグミ様、もしよろしければ私が浄化魔法をおかけ致しましょうか?」


「え?浄化魔法ですか?」


「はい、その全身に浴びられたと言うクローベアの血ですが、本来魔物の血はバッドステータスを起こす為、早々に洗い落とすか、浄化魔法をかけて払拭させる物でして・・・時間が経ってしまっているので完全に消し去れるかは分かりませんが・・・」


色々あって忘れていたが、未だに全身血まみれのままである。

ヴィクターさんから借りたままのフードを外して、改めて見てみると相変わらず酷い有り様。これを綺麗にして貰えるのであれば万々歳だ。


「お願いします!」


「はい、では。洗滌浄化(ピュリフィケーション)!」


エリスさんが何かの言葉を唱えると、私の全身は大きな水の膜包まれた。内部ではグルグルと水流と泡が発生し、思わず息を止めようとしたが、溺れる様な息苦しさは無く普通に呼吸が出来る。

水に触れられている感覚はあるにも関わらず、肺には一切入って来ない。不思議な感覚だ。


30秒程その中に居ただろうか。膜が音も無く弾ける。


「はい、浄化完了です――・・・え!?!」


下を向くと、血が跡形も無く消え去り、久しぶりに自分の肌の色と対面した。

その洗浄具合に「ありがとうございます」と感動していると「申し訳ございませんっ・・・!!!」と言う叫び声と共にバサリと何かを掛けられ視界が遮られる。


「わっ?!」


「メグミ様っ、あのお召し物がっ・・・!」


そうだった・・・色々な生物に攻撃され、ジャケットやシャツはノースリーブに見えるくらいには袖が無くなり、パンツスーツはショートパンツ丈まで溶けている上、全体的にボロボロになっていた。その後、クローベアの血を浴びて全身一色。

とどめに、グランさんの一撃だ。


見た目には肌と服の境界線が曖昧になり、露出部分が目立たなかっただけで、汚れが取れた今は肌の露出した部分がはっきりと見えてしまっている状態に、エリスさんが慌ててしまうのも無理は無い。



「申し訳ございませんでしたっ・・・男性の前でこんな状態をお見せしてしまい・・・!!」


掛けられた布を整えるエリスさんは、心底申し訳ない表情で。よく見ると整えて貰った布は先程返したはずのヴィクターさんの外套。


目線をエリスさんの後ろに向けると、2人とも身体ごと反対を向いてしまっている。

恐らく、反射的にヴィクターさんが私に投げ返してくれたらしい。


下着などは見えていないし、水着に比べたら全然露出は無いと思っていたのだが、さすがに見苦し過ぎたか。



「ひ、ひとまずギルドの制服をお貸ししますので、そちらに着替えて下さい!マスター、暫く席を外させて頂きますっ」


「おー、ゆっくりで良いからな」



そのままエリスさんに体を反転させられ、一緒に隣の部屋に移動した。本当に重ね重ね申し訳ない。



私達が退室した後に、残された2人が今日1番の盛大なため息をついたのは知る由も無かった。




.

設定①の公開順がこのエピソードと前後していました(汗)

修正しました!


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