No.17 一般人以下ですか?!
No.17 一般人以下ですか?!
3人から告げられた「魔法適性がゼロ」の言葉。今いちピンと来てない私は、リアクションが出来ずにいた。
「まさか、適正が無いパターンは予想外だったぜ・・・異世界から来た人間はそう言う物なのか?」
「どうでしょうか・・・私も初めての事で・・・」
かなり深刻そうな面立ちの反応に困惑していると、腕を組みため息がちのヴィクターさんが「説明してやる」と声をかけてくれた。
「まず、この世界ではほぼ全員が生まれながらにして魔法が使えると言う事は、数時間前に説明したが覚えているか?」
「はい」
「その魔法と言うのが、この7属性に分類されている。全ての属性を扱える事はまず無い、この国にある王国魔法師団の中であっても、3属性が良い所だろう。属性は干渉し合いやすいからな、属性が増える程扱いが難しくなる。したがって、得意とする魔法の属性は1人1つが基本になっている。」
「は、い・・・」
「ここまでは良いか?続けるぞ。扱える属性は各々異なるが、その中でも扱える程度が変わって来る。誰もが得た属性を上手に行使出来る訳でも無い。上手い者もいればそうで無い者もいる・・・ここを見ろ」
ツイッっと指し示すのは、先程のエリスさんと同様の場所。
「この属性の横に出ている数字が扱える魔法のレベルだ。ちなみに一般生活魔法とされる、火を起こしたり飲み水を出したり、洗濯物を乾かすそよ風のような魔法はレベルが1だ。ギルドや自警団、騎士団と言った戦闘が必要な職や、武器や装飾、建造物と言った物造り特化職に付いていない”一般人の人々”の大部分がそれに相当する」
今の説明を聞き、改めて示された私の数字は────・・・
「全ての属性の横に、0が付いていますね・・・私、適正に◯(まる)が付いているんだと思いました」
「いや、0だ。お前には魔法適性が無い」
衝撃の事実である。誰しもが使えると聞き、密かに楽しみにしていた魔法が私は使えない。
「となると、嬢ちゃんは完全に近接型のフィジカル特化って事だな。いや、ギルドとしては魔法が使えなくても冒険者は出来るが、日常生活には支障が出て来るかもな・・・」
「えぇ、この世界の動力は魔法が基本ですから・・・暖炉に火を点す為の火の魔法石すら魔力を込めなければ使えません。当然、任務中に火を起こさなければならない場面においては、かなり不利になるかと・・・」
そうだ、火を起こす際に私達が便利に使っていたライターはこの世界には無い。その代わりが、まほうせき?になるのだろうが、魔力適正ゼロではそれすら扱えない・・・
完全にアナログ、板に枝を擦り付ける古来よりの方法で火を発す事になりそうだ。
ブラック労働から抜け出せたと思ったら、こっちではハード日常生活が待っていたと言う事か・・・
「・・・・・・・・・ジル」
「・・・・・・何だ?」
「後見人の件は、取り敢えず引き受けてくれるって話になったよな」
「不本意だが・・・拾って来た義理と、国益の件も一理ある」
「そうだよな“国益”だよな?“古巣”の目線からしたら、他国に持って行かれちまうのは看過出来ねぇよな?」
ヴィクターさんの表情が目に見えて曇って行くのが分かる。
「端的に言え」
「嬢ちゃんが一人前になる迄、諸々の面倒も見てやれ」
「は?」
────え?
「それが良いかもしれませんね!まだ街に来て間も無いでしょうから、分からない事だらけですと、お1人で生活基盤を構築するのも大変でしょう!ジルニードさんにお世話になられた方が安心ですよ!」
グランさんの提案に手を鳴らし、うんうんと頷くエリスさん。
そして、明らかにヴィクターさんから漂って来る、面倒ごとに関わってしまった後悔の念。
これはマズい・・・私のせいで空気が果てし無く悪い。
ここで私が選択すべき流れは、グランさんとエリスさんの提案をやんわりと断り、自分で生活を頑張ってみる・・・これしか無い。ヴィクターさんは、私を快く思って居ないのは火を見るより明らか。これ以上は正直申し訳ない。
「あのっ、私―――「これは、ギルドマスターからの命令だ。ジルニード=ヴィクター、新入りの育成と指導、並びにこちらの世界の知識教育。一人前の冒険者になる迄の師従関係の無期限任務を言い渡す」
あ・・・上司命令・・・。現時点を持ってして、新人の私には拒否も何も言える権利が無くなった。もう後は結果がどうなるのかを見守るしか出来ない・・・冷や汗が背を伝う。
「────はぁ・・・・・・拝命した」
長い長い沈黙の後、ヴィクターさんはこの理不尽極まり無い命令を受諾した。
思えば、この世界に来てから私はこの人にかなり、いや・・・相当の迷惑をかけているのだが、いつ終わるとも分からない新人教育により、この先しばらくの迷惑を掛け続ける事が確定してしまった。本当に申し訳ない。
「おう、よろしく頼むぞ」
「あぁ」
「・・・ヴィクターさん、改めましてよろしくお願いします」
「あぁ」
「───では、改めて身分証の作成・交付を行いましょう。マスターとジルニードさんはこちらの魔導具の近くに、身分証をお願いします」
手続きを早急に進めるべく、エリスさんの言葉に2人それぞれが何かを机に置く。
ヴィクターさんは腕輪の様な物で、グランさんは所謂ドッグタグの様なネックレス。
形も色味の違う金属製のアクセサリーで、共通しているのはどちらにも青い色をした宝石が付いていると言う事。
これが身分証と言う事なのだろうか?カード型の身分証が一般的な前世と随分仕様が違う。物珍しさに凝視していると、すかさずエリスさんが説明をしてくれる。
「こちらが、この世界の身分証となります。と言いましても種族によっては身分証が無い事もありますが、この国ではこの様な形になっております。ですので、種族によっては入国制限等ございますが、その辺りは追々・・・」
「成る程、変わった形をしているんですね」
「そうですね、形はいくつかありまして、私の様に指輪の場合も。ご自身に合った形を選んで頂けます、どの様な形を希望されますか?」
大きな箱にズラリと並べられた金属のアクセサリー。3人のデザインの他に、ブローチやペンダント、大ぶりのピアスの様な物もある。
「大体、使い易さで選ばれていますね。例えば私ですと書類仕事が多い為、指輪を使用しています。必要な際に付けたり外したりせず、流れで使えますので」
「俺には指輪は不向きだ。握り拳の時に付けてると戦闘に邪魔だからな」
「俺も剣を扱うから指輪は向いていない」
三者三様、理に適った選び方をしている。だが、私にとっての使い易さが分からない。
「まぁ、悩むなら取り敢えずジルと同じにしておけ!師従って、ひと目で分かるからな!」
師従関係を表す方法、そう言う選び方もあるのかと、感心する。
「あっ・・・いえ!そうでした。そうしましょうか?」
エリスさんは一瞬何かの思案した後、グランさんに同意する。
「はい!じゃあ、これでお願いします」
ヴィクターさんと同じ腕輪型を指差す。
「では続いて、ごく普通の身分証の種類についての説明を致します。まず、ひと目で分かるように、身分で金属が異なります。一般的な平民ですと、銅や鉄が主流になります。位が上になる程稀少な物になって行きます」
なるほど、現代日本では身分制なんてなので見分けたりする必要は無いので、いまいちピンと来ていないがこの世界においては重要な事なんだろう。
「加えて、魔法石の色でも判断できます。この指輪のように真ん中に魔法石が填められていまして、ここに情報が記憶されます。ギルド所属冒険者ですと《青》になります。したがって、メグミ様の身分証は銅製に青の魔法石の組み合わせになってまいります」
「えっと、身分的には一般冒険者と言う事ですね!」
「はい、そうなります。ただ、ギルド内ではランクがございまして、端的に申し上げると、強さのランクです。実力を正しく評価し指針となるように制定しております。つまり、一般的な身分証と違い、冒険者となった時点でギルド発行の身分証となりますので、ランクに沿った金属になります」
冒険者になると身分証の種類が変わると言う事だろうか・・・例えば、産まれた時に発行された普通の身分証は冒険者になった時点で、冒険者用の身分証に切り替わる。
「まぁ、冒険者のランクが分かるように、金属の種類がランク毎に変わるって事だな!正直、嬢ちゃんは強さとしてはA級をあげてぇ所なんだがな」
「ギルマス、それは止めるべきだ」
「はい、私も同意見です。新人はE級からスタートして徐々にランクを上げて行くのが一般的。他の冒険者と余計な軋轢が生まれるかと・・・」
「そうだよなぁ・・・悪いが、下積みを経験して、徐々にランクを上げて行こうな」
「はい!新人下積み、ドンと来いです!!」
危ない危ない、転職後に新人が即優良ポスト着任は、実力があってこそ!!私みたいな右も左も分からない上、圧倒的経験不足が就いて良い立ち位置では無い。当然だがギルド内からの反発は避けられないだろう。
前世では忙しすぎて友人とも疎遠になってしまった事もあり、この世界ではそう言った人間関係の構築も頑張って行きたい所なので、波風起こさず自然にギルドに馴染んで行きたい。
「よっしゃ、よく言った!E級から地道にやっていこうな!」
「はい!よろしくお願いします!」
「では、続けさせて頂きますね。冒険者はSS級からE級までランクがありまして、ランクによって受けられる依頼・難易度が変わってきます。メグミ様のE級の主な依頼は『薬草集め』『装飾品染め用の昆虫集め』といった、簡単なお手伝いの様な物になります。依頼はいつ受けられても構いませんが、E級の依頼は報酬が僅かしか無く、生活する上ではかなり数をこなす事が予想されますのでご注意を」
E級は冒険者見習いのような扱いになるようで、危険な物は含まれていない代わりに報酬が少ないのだと、ヴィクターさんが横で補足をしてくれた。
「ある程度こなせば、D級に上がる。当然受けられる依頼の幅も広がり、報酬も増えるが戦闘が絡む依頼が混ざり始める」
「なるほど・・・」
グランさんに促されるまま冒険者になる流れだが、私に務まるのだろうか・・・しがない社畜の私に。
「そんな不安がる事はない!ジルもついてるし、何も心配いらねぇさ!」
満面の笑みで、グランさんはヴィクターさんの背中を叩く。
「では、情報を魔法石に移行します。メグミ様血を一滴程失礼しても?」
「血ですか?」
「はい、偽装や複製を防ぐ為の物で、血を魔法石に垂らす事で、貴女だけの身分証となります」
血を用いた登録なんて、とんでもセキュリティだ。顔認証や指紋認証以上に強そうである。
差し出された手に私の手を乗せると、エリスさんは針の様な物でプツリと人差し指に刺し傷を入れる。
「っ・・・」
空色の魔法石に赤い血が滴り落ちると、光と共に鮮血は始めから無かったかの様に消えた。
「はい、こちら記憶が完了しました。続いてお2人の後見人登録を行います。身分証の情報上書きと、こちらにも其々血を一滴頂きます」
流れを見るに、どうやら私の身分証と2人の身分証の紐付けを行う様だ。
まずグランさんが私の身分証に血を一滴、続いて同じ様にヴィクターさんも一滴。
魔法石が2度光った後、また跡形も無く消えた。
「はい、宜しいですよ。これでメグミ様はお2人によって身分を保証されましたので、住民としての権利登録を今を持って完了致しました」
これで、私は晴れてこの世界での身分を手に入れて、この国の住民としての権利を得た。
根無草の身元不明出自不明のバケモノから、大幅な躍進だ。
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本編とは別に、この土日辺りで、現段階で出ている設定や情報をまとめた物を間に挟もうと思います。
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