No.16 魔法適正
No.16 魔法適正
「さて、それじゃ・・・おーい、そろそろ入って来て良いぞ」
テーブルを挟んでソファーに腰掛けると、グランさんは私達の後の方に向かって誰かを呼ぶ。
確認しようと首を捻ったと同時に「失礼します」の声と共に、綺麗な女性が入って来た。
カチリとした制服に聡明そうな顔立ち、眼鏡の向こうに見える双眸は穏やかな眦を携えて見える。
「この嬢ちゃんを新くギルドに迎え入れようと思ってな!」
「はい、お声がこちらにも届いておりましたので、僭越ながら手続きが早急に進められる様手配しておりました、こちらどうぞ」
「なんだ、手際が良いな?」
「マスターが勝負を挑まれた様でしたので、必要になるかと思い、地下に降りられるタイミングで揃えて置きました」
し、しごでき(仕事がめちゃくちゃに出来る)の人だ・・・!!
上司の動きを察知先読みして、必要な物を手配して置く手際の良さと、忖度出来る立ち回り・・・見習いたい。
2人の会話を、目をギラギラさせて見ていたのだが、私の刺さる様な目線に気付いたのだろう「よろしくお願いします」と微笑を向けられた。
「さてと、まず何から必要だったけな?ギルド登録の前に、あれか?住人登録・・・いや、それより身分証の発行が先になるか?」
「この世界に来て間も無いなら、身分証も何も無いだろうな・・・」
そう・・・私は現状、身元不明・種族不明(多分人間)の何一つ持たない存在なのだ。
「そうだよなー、となると、アレだ!後見人が必要になって来るぞ・・・エリス、説明頼む」
「はい、我がレオニア王国は身分制を用いており、身分を持たない者及び、国外からの流入の際、身分証の発行を義務付けております」
「義務・・・」
「はい、ですので身分証が無い者に関しましては、当然不法滞在となりますので、即時拘束され自警団に引き渡されます。当然ながら、滞在・移住・住民登録と言った全ての権利は無いものとなります。ギルドは身分が明らかになっている事が最低条件ですので、今の段階では────」
「・・・拘束される」
「おっしゃる通りです」
一難去ってまた一難・・・命の次は人権が危ぶまれている・・・安寧の地は得られないのだろうか?
「ですので目下、身分証発行の為の後見人が最低でも2人以上必要となって来ます」
「お?2人で良かったか?」
「はい、昨年改正が行われまして、身分証即日発行の条件として、国益を齎らす者かつ、位持ちからの推薦2人以上に緩和されました」
「そうだったか、通常だと後見人が5人必要で、受理から発行まで半月・・・下手したら半年掛かっちまうんだが・・・」
私は、異世界人でこの世界では何の経験も無いので、国が制定する厳しそうな条件には掠りもしない。これは大人しく、申請だけして国外で受理を待つ事がベターだろう。
そう言えば、捕縛対象に該当する私が今まだ無事なのは何故だろう・・・と考えた時に、やはり、国境でのやり取りと、ヴィクターさんの機転の賜物なんだと思う。
「えっと・・・取り敢えず、私は一度国から出れば問題無いですか?」
「いや!その必要は無くなった!俺達が後見人になれば良い!」
「え?!」
「嬢ちゃんは俺が見るに、国益を齎らすに値する!なぁに、仮に俺の目算が外れても、ギルド所属後にバシバシ依頼をこなして貰えりゃ無問題よ!なぁ!ジル!」
グランさんは、横で無言のまま話を聞いていたヴィクターさんに同意を求めた。その問いかけに眉を顰め、やや置いてからゆっくりと口を開く。
「"俺達"とは、もしかして俺も含まれるのか?報告が終わり次第、手が切れるものかと」
「はぁ?!当たりめぇだろ、お前が連れて帰って来たんだ、拾ったなら最後まで面倒見てやれ!」
私、拾われた動物的な感じですかね?
至極嫌そうな顔を隠さないヴィクターさんとグランさんの押し問答が続く中、静かにそう思った。
「では、後見人の件は後回しと言う事で、手続き進めさせて頂きますね。こちらに手を乗せられて下さい」
「これは?」
「魔導具の1つでして、この球体に触れる事で貴女の情報を測り表示します」
「なるほど?」
理屈がよく分からないが、百聞は一見にしかず、エリスさんに促されるまま左手を乗せる。
透明な大きな球体は、しばらく光った後表面に何かを浮かび上がらせた。
「今出ているのが、貴女に関する情報です。他人に見えてはいけない情報は自分以外には見えないのでご安心を!なお、この魔導具は小規模の物でして、王都にあります大元の魔導具であれば全ての情報が我々にも見えるようになりますが、そういう事態は有事の際や犯罪者として指名手配された段階でなければ基本ありませんので、そちらもご安心を」
「へぇーー」
万全のプライバシー保護を施した、情報端末システム・・・この世界のパソコンみたいな物だろうか。
「我々で確認できる情報は白で表示され、秘匿情報は紫または赤で出ていると思います。特に赤に関しましては、重要部分となりますので口に出されない方が良いかと・・・」
「なるほど・・・【種族】人間・・・。っ人間!!私人間です!!」
「はい、そのようですね。先ほどから魔物か人間かで不安がられていた様でしたので、一安心ですね」
「はい!!!」
良かった!自称人間から、自他共に人間と肯定された事に歓喜したと同時に、エリスさんに優しく微笑みかけられて、不安だった気持ちが解ける。
「ヴィクターさん!グランさん!聞いて下さい、私ちゃんと人間でした!!魔物でも得体の知れない存在でもありませんでした!!」
「おぉ!そうか!!それはなによりだ!ちょうど今、後見人の話が纏まった所だ!」
「・・・・・・」
私の報告を聞き、嬉しそうなグランさんとは対照的に、表情が芳しく無いヴィクターさん。天と地ほどの温度差が伝わって来るが、それは本当に纏まったのだろうか。
「あら?あ、これは・・・マスターこちら見て頂けますか?」
「おう、どうした」
「?」
エリスさんの言い淀むような呼び掛けに、全員が球体の側に寄る。
何か新たな問題が発生したのだろうか?
「こちらなのですが・・・」
指さす場所には【魔力・魔法適正】の文字。続いて並ぶ、火・水・風・地・癒・光・闇の文字。これは何だろう?と、エリスさんの発言を待つ。
「こりゃ、また・・・珍しいな」
「えぇ、マスター・・・ギルド始まって以来の事態になりますね」
「本当にギルドに入れるのか?」
口々に繰り出す言葉から、困惑や動揺が伝わって来る。魔物疑惑の次の懸念は何なのだろう。
「あの・・・皆さん一体どうしたのですか?」
意を決して、恐る恐る尋ねると全員が私の方を向き、同時に返事をする。
「「「魔法適正が0だ(です)」」」
.
今週は、後1話分アップ出来そうです!




