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No. 11 誤解の冷めやらぬまま


No. 11 誤解の冷めやらぬまま





「はぁ・・・お前、分からないって」


「でも、前も人間だったので・・・」



・・・・・・人間である事をどうやって証明すれば良いのだ・・・


「大体、その全身赤黒い姿はどう説明するんだ?正直そこも引っ掛かっている要因の1つだぞ」


「え?あ、これですか?!違いますよ!!これはっ・・・例の熊の返り血と言いますか・・・!」



あ、嘘くさいなの顔してる・・・私を見る目は依然として懐疑的だ。


慌てて服の袖で顔を拭おうとしたが、袖はスライムによって早々に溶かされて破れているので、そこには無い。

赤黒い手首で、赤黒い顔を擦っただけに終わった。


「・・・・・・・・・」


「・・・・・・・・・」


沈黙が辛いってこう言う事なんだろうと思う。

誤解を解きたい私と、必死に弁明する怪しい自称人間と対峙させられている相手。



「あーー・・・すまない、俺は浄化魔法や水流魔法は不得手で、洗ってやる事は出来ない」


「・・・それが何かは分かりませんが、誤解を解く手立てが無くなった事は分かりました」


声色が若干憐れみを含んでいる気がしてならない。



「・・・・・・取り敢えず、お前が魔物の類いかどうかは、一旦置いておこう・・・荷車の積荷は無事な様だから、回収して商人に引き渡す」


「はい、どうぞ・・・」


「ワールウィンド(旋風)」


彼が一言告げると、荷車がフワリと浮き上がる。


「わぁ!この世界は魔法が使えるんですか?!」


「あぁ、魔法自体は生まれながらにして大体皆使えるな。属性毎に得手不得手はあるが・・・」


「私も使えますかね?」



魔法が使えるなんて、子供の頃に読んだ絵本みたいで、年甲斐も無く心が躍る。


「使えるんじゃないか?何が使えるかは先天的な物で、選べはしないが、まぁ・・・その辺りは街に着いてギルドで調べれば良いだろう」


「え?」


「お前が何者かは不透明だが、ギルドにお前の事を報告するにあたり、口頭で説明をするより連れて行った方が早い。俺に付いて来て貰おう」





・・・・・・こうして、私はこの世界で初めて意思疎通を交わした相手に"ぎるど"とやらに連行される事となった。



「ギルド会館は街の中に建っている関係で、冒険者以外の一般市民の中を歩く訳だが・・・その返り血はかなり不気味さを煽る。俺の上着で外見を隠させて貰うぞ」




大きな上着を着せられ、フードを目深く被せられた。

「逃げようとするなよ」そう言われて、馬の背に乗せられる。後ろに退路を断つように彼が座り、ゆっくりと街道を進む。

旋風で浮かぶ荷車は馬の後をピタリと付いて来る。


街に着けば、私が人間だと証明が出来て、この返り血も落とせる。そこ迄の辛抱だ・・・




「あの・・・聞いても良いですか?」


「何だ」


「"ぎるど"って何ですか?」



私が今から連れて行かれる場所が何なのか、せめて先に知って置きたい。


「お前の世界には無かったのか、そうだな・・・ギルドは、国とは別に私的に運営されていて、俺のような冒険者を束ねている組織だ。国内の様々な依頼の仲介が主で、俺たち冒険者に仕事の斡旋をしてくれる」


「へー、ハロワみたいな感じですか?」


「ハロワ?その言葉は分からないが、お前はそう呼ぶのか?」


「1番近いイメージの名前がそうですね・・・冒険者?さんは皆んな登録してるんですか?」



仕事の斡旋所と言えば、これが最初に出て来る。登録して、やりたい仕事を見つけて受ける。成る程・・・この世界でもその辺の流れは一緒という事だろうか。



「ギルドに所属せずとも冒険者は個人でもなる事は出来るが、より良い依頼や、資金ぶりに困った時に直ぐ依頼にあり付ける・・・まぁ、所属して置くと、何かと便利だな」


「そうなんですねー、えっと・・・・・・あなたは所属して長いんですか?」


「まだ5年くらいだ、そんなには長く無い。16歳でギルド登録出来るようになるから、若いうちに登録したベテラン冒険者も多い。そう言う意味では、新人より少し長い程度だな」



"ぎるど"と言う物が何となく分かった気がする・・・取り敢えずハロワに連れて行かれると言う事で概ね理解した。



「私・・・ぎるどに着いたら、どうなるんですかね?」


「ギルマス――・・・ギルドの長の判断になると思うが、魔物なら状況次第ではその場で殺処分されるだろうな」


「えっ・・・私このまま大人しく連れて行かれてても良いんですかね?抵抗したりとかすべきですかね?」


急な死刑宣告に、青褪める。

そもそも、この人も出会い頭に首を刎ねようとして来た訳で・・・そんな人の上司もまた、容赦の無い人の可能性は十二分にある。


この人1人なら何とかして逃げられるだろうか?

幸い拘束具の類はされていない。私が人間である事を主張した上で抵抗しない様を鑑みての事だろうが、このまま行くとハロワが実質私の墓場になる。



「・・・・・・お前が言う通り人間なら、事情を話せば終わりだ」


「うっ・・・でも魔物なら生命としての終わりですよね?」


「対話の余地がありそうな魔物と判断されれば、その限りでは無いだろう。精々、心象良くするんだな」



命を賭けた面接ですか?と言いかけたが止めた。


「ちなみに、このまま逃げたらどうなりますか?」


「"正体不明の魔物を取り逃した、野放しにしておくのは危険。即時討伐部隊の編成を進言する"と報告するだろうな」


「そうなりますか・・・」



逃げても追われる。つまり、この人と出会ってしまったが運の尽き。

────腹を括れ。ハロワに着いたら心象良く・・・私が就職面接受けたの、どのくらい前だっけ?もう覚えてないくらいずっと昔だ。


街に着くまで受け答えの練習でもしておこうか…?





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