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No.10.5 おかしな存在と出会ってしまった


No.10.5 おかしな存在と出会ってしまった




ギルド館に転がり込んで来た商人は、真っ青な顔をして「助けてくれ」と叫んだ。

ヨロヨロと入口付近の受付カウンターに縋り付き、助けてくれ・・・助けてくれ・・・と繰り返す。



「ひっ・・・!ガンドルフさん、ですよね・・・?今朝早くにこの街を発たれて、隣国まで行かれたと引き継ぎ要項に入っていましたが・・・どうされましたか?!」



冒険者ギルドと商人ギルドは組織図は別にはなっていて、それぞれにギルドマスターが存在しているが、どちらも同じギルド館に入って居る為、互いの情報共有はされているらしく、誰がどの依頼を受けて出発したのか、どの商人が行商に出たのか。

特に、レオニア王国西方であり国境最後の街でもあるフォートレスは、往来への管理が行き届いている。



「あぁ!あぁそうだ!今朝暗いうちに出立したさ・・・!だか、朝日が登る頃に突然バケモノに襲われてっ・・・!!」





積荷の荷崩れや馬車が崖から落ち掛かっていると言った、良くある救援要請かと耳を傾ける程度で居たのだが、“バケモノ”と言う不穏な単語に食事を一旦止め、受付の方に向かう。


「えっと、入出国記録には、護衛無し・・・お一人で出られていますね…暗いうちは危険が伴います。商人ギルドを通して、護衛任務依頼は出されなかったのですか?」


「それはっ・・・・・・と、とにかく殺されかけたんだ!!死にたく無い一心で馬を走らせて戻って来た!!そのせいで、積荷も置いて来てしまって・・・・・・あぁ、どうしよう・・・大切な商談が・・・」


「────つまり、依頼代が惜しかった・・・と。その小さな出費で大切な商談を滞り無く行えたと思えば、ケチる所では無いと思いますけど・・・」


バッサリである。


冒険者ギルドはそれなりに荒くれ者も多い為、受付であるハンドラーもまた語気が強かったりする。

ハンドラー歴20年の大ベテランである、カレン・ワグナーはまさにその一端を担っていると言えよう。


さすがに、誰彼構わずと言う訳でも無く、態度が悪かったり義務や責務を怠る相手には特に厳しい。


この騒ぎと受付でのやり取りに野次馬が増えて行く。

いや、俺もその1人なのだが。



「それで、何なんですかバケモノって」


「分からないっ!人の姿をして、人の言葉を話して来る。突然空から降って来て・・・・・・目の前に!!真っ赤なバケモノが・・・」


「人型のバケモノ・・・聞いた事ないが、魔物か何かか?」


「!!!!アンタ・・・その黒い腕輪・・・S級か!!」


会話に割り込むように問うと、商人の目線は俺の左手首を捉えた。

どうやら、手首に嵌めた腕輪でランクを確認したのだろう。


「頼む!!私の荷車を取り返してくれ!!S級と言えば、どんな依頼も請け負ってくれるそうじゃないか!!」


「ガンドルフさん、依頼でしたらギルドを通してからにして下さい!連盟規約違反ですよ?」



ハンドラーに叱責されて、商人はうぐっ・・・と押し黙る。

冒険者ギルドと商人ギルドの連盟規約に基づくと、ギルド所属の冒険者に直接の依頼取り付けは原則認められていない。


ギルドを通さなかった依頼は"ゲリラ"扱いとなり、不慮の事故や最悪依頼者又は、ギルド所属の冒険者が死亡した場合、後始末に冒険者ギルドが手を差し伸べる事は無い。


まぁ、酒の席での約束事や、不意に受ける事になった依頼については、多少のお目溢しはあるだろうが、その際の尻拭いは全て自己責任だ。


だがしかし、此処は天下のギルド会館。

水面化でのコソコソとしたやり取りは、御法度。



「わっ・・・分かった・・・!ギルドを通して正式に依頼する!」


「ご理解頂けてなによりです。私の目の前で堂々となんて・・・今後、規約違反は見つけ次第即、上に報告しますからね。お忘れなきよう」



5分後、ギルドに受理された商人の依頼が貼り出された。



【緊急】 『荷車の奪取』 報酬=金貨10枚

▲期限 即日

砦を出て西へおよそ30㎞地点にて、見た事の無いバケモノと遭遇。

人の言葉を話し、人の様な見た目をしている。全身の皮膚は赤く、魔人の類いの可能性あり。


予備事項:目的は荷物の奪取になる為、荷物が回収不可であった場合、任務完了不可となり報酬は発生しない。



この騒ぎだ、依頼書を見てやろうと言わんばかりに、掲示板の前に人集りが出来た。


だが、内容が内容な上、荷物が無事が条件だ。

このバケモノがどのような敵かも、荷物が現時点で無事かも分からない中、繰り出すのはリスクでしか無い。

ある程度の場数を踏んでいる冒険者ならこれは"ハズレ案件"と判断する。


現に人集りはあっという間に離散した。



「なら、俺が行こう。他に受けたいやつもいないだろう、期限が今日中だしな」


早速舞い込んできた、S級案件(面倒ごと)。商人の言う通り、本当に見た事の無いバケモノが存在しているとすれば、早々に排除しておく必要がある。

仮に、どの冒険者が興味本位で受注したとしても、同行を申し出るつもりだった。



受注を済ませると、手持ちの地図を取り出し、商人におおよその位置を書き込ませ、早々に出発した。



馬を走らせ、街道を道なりに1時間半。そろそろ、地図に記載された地点だ。

荷車が見えて来ても良い筈と、辺りを見渡した。


と、前方から何かがこちらに向かって走って来るのが見えた。


それは、グングンと速度を上げ距離を詰めて来る。反射的に嫌な予感がした。

その速度は並大抵の物では無い。乗っている馬よりも断然早い。


「魔物とも違う・・・」


その何かが、進路を変えずに真っ直ぐ向かって来たとして、そのまま攻撃され馬を失う訳にはいかない。


その場で馬から飛び降りると、向かって来る存在にこちらも駆ける。


「赤黒い・・・人型の・・・コイツか!」


商人の証言通りの風体から確信した俺は剣を抜き、首を刎ね飛ばす勢いで剣を揮った。




この後、剣のメンテナンスを先延ばしにした事を後々悔やむ事になる。




.


ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・


週1〜2話更新出来たらな、と思います。

目標です。

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