No.1 終わりの日
No.1 終わりの日
カタカタカタ・・・
無機質な四角い箱、沢山のモニターと、絡まり合った配線。照明の落ちた暗いオフィス。
1つだけ明かりを灯す画面に向かって私、柊芽弥-ヒイラギメグミ-は「はははー・・・」と乾いた笑いを漏らす。
「これ、明日中に終わるのかな・・・?」
他の社員も誰も残っていない空間に、独り言が響く。
「あーダメだ頭回んない・・・」
それもそのはず・・・ここ1週間、担当の仕事の追い込みで徹夜続きだ。
正確には自分の担当の仕事に加え、間に合わないと悟った同期に、助けてくれと泣きつかれ、余分な仕事を抱える羽目になった。
終電で帰った同僚と違い、会社から徒歩10分の所に住んでいる私は、終電という名の仕事の区切りが無い。
その為、タイムカードを早々に切ると言う、およそ労基待った無しの荒技の果てに作業の続きをしていると言う訳だ。
当然、タイムカードを切らずに残業したとしても賃金は貰えない上、残業をした記録が残り後々上司から詰められる。その時間すら無駄なので、タイムカードは定時で退社したと言う事になっている。
「さすがに、コレを毎日飲んで徹夜続けるのも限界かなー・・・」
机に綺麗に並べられたエナジードリンクの缶。
何本飲んだか自分で確認する為に、あえてそうしている。
追い込みが酷い時は1日1缶の注意書きを見なかった事にして、2〜3缶空けた日もあった。
社会人5年目。用法用量を守ってお飲み下さい。の文字に罪悪感を覚えなくなったのは、いつだったか・・・。
はてさて「次の日の自分の体を前借りする」なんて言い訳は、いつまで使えるのだろう。
「あぁー、せめて・・・あと2日・・・いや丸1日余裕が有れば、今日は寝られるのに・・・」
明日中に終わるのか?と言ったけれど、時計の針が指す時間は0時45分。
「もう、今日中になっちゃったんですけどねー・・・」
相変わらず静まりかえるオフィス。
パソコンのカリカリカリ・・・と言う駆動音と、私の誰に聞いてもらうでも無い、独り言がまた反響する。独り言は最早、残業中の十八番。
「あー・・・ダメだ、集中力完全に切れた・・・眠い・・・」
いやダメだ・・・ここで寝たら、終わる。
私も終わるし、プロジェクトも終わる。
明後日のプレゼン、正確には明日のプレゼンに資料を間に合わせると言う、成し遂げなければならない、仕事────・・・
同期のメンツもかかっているし、私とて引き受けたからには完成してドヤ顔を同期にお見舞いしてやりたい。
この仕事に就いて6年、仕事に追われ追われ追われ続けた。
「次こそは、良い反応貰えると良いなぁ・・・」
デスクからから、少し離れた位置にある上司の机に目線を滑らせる。
「まぁ、それは無いか・・・」
そう呟いた瞬間、気持ちの糸が切れたのだろうか・・・私の体はデスクの上に吸い寄せられる。瞼は連日の睡眠不足による眠気に抗う術が無くて、ゆっくり、しっかりと綴じて行く・・・
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