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第一章 其の四 初めての異世界

俺、藤原鐵明(ふじわらてつあき)は、出張先の海外で戦争に巻き込まれて、乗っていた飛行機がミサイルで撃ち落とされた。んで、異世界に転生したらいきなり生贄にされてて殺されそうになった美少年のライルだ。


今は偶然知り合った兵士の皆さんとアラーナ騎士団長に連れられてレアル王国にやってきた。


王都に入るには厳重で大きな扉が二つあり、それぞれに兵士が門番をしている。

アラーナが門番に開ける様に指示すると兵士は顔を知っているのだろう、当たり前の様に大きな扉をあけて中に通す。

俺もあの頃に顔パスとかあったらカッコよかったけどね。武術のやりすぎで顔を怖がられて避けられる方の顔パスはよくあったな。


「今戻った。門を開けよ。」

「おかえりなさいませ。アラーナ団長!」


ギギギギギッ!


大きな扉が開き、中に入っていく。

さすがは騎士団長。堂々としてるね。

剣の腕も相当なのだろうか?女性とはいえ一度は手合わせしたいものだ。あ、でも刀なんてないよな…。


馬を預けて徒歩で移動する。俺は見たこともない美しく建っている建物に見惚れながらも、辺りを見渡し、きっとあるであろう武器屋を探す。

くそっ。見つからないな。まぁ、あったとしても金がなければ買えないか…。


アラーナが立ち止まり声をかけてくる。

「さて、ライル君、先ずはここで診療を受けてもらう。なぁに、心配するな。私がついているさ。」


右手には診療所だろうか。見たことのない文字だがなぜか字は読める様だ。言葉もわかるし、きっとライル君の名残なのだろう。


「団長!私が見ておきます。こんな子供1人に団長が構うことなどありませんよ。」


オレはお前より年上だっつーの!

心の中で叫びながらも少しの諦めと若い体でどこまでやれるか少しだけワクワクしている自分に気がつく。


「いいや、ライル君を見てみろ。こんなにも不安そうな表情じゃないか。むさいお前たちよりも私の方が適任だろう。ライル君もそう思うだろう?」


「そ、そうですね。できればそうしてもらえると嬉しいです。」

そりゃ、どちらがいいかといえば美しい女性の方がいいに決まってる。別に男でも構わないんだが、どちらか選べと言われると、ギリギリってとかくらいで女性に軍配が上がるのは仕方のないことだよね。うん。

強引に自分を納得させようと頭の中で自己肯定する。


「決まりだな。ではお前たちはここで解散。明日以降の稽古に備えて今日はゆっくり休め。報告は私からしておく。」

「そうですか、わかりました。」

自分がやると言っていた兵士は渋々引き上げていく。他の兵士たちも散り散りに各々去っていく。


「け!稽古!?」

はっ!しまった!

思わず声が出て口を押さえる。

「ん?稽古がどうした?」

「あ、いや、なんでもないです。うん。」

アラーナはこちらの動揺を見透かしている様だったが、それ以上追求はしなかった。

「そうか、では診てもらおう。」


「本当は入りたくないのだがな…」

少し暗い表情で何か気になることを言った様だが嫌な予感しかしないのでスルーしておこう。


俺は頷き一緒に診療所に入る。中に入ると変ったブルーの丈の長い服を着て、白鬚を三つ編みにしてメガネをかけている怪しい年配の男性と、黒いメイド?服を着た目つきの鋭い女性がこちらを見ていた。

爺さんは禿頭で横側だけ少し白髪が生えているが、対照的に女性は真っ黒でどストレートの髪の毛が肩にかからないくらいに切り揃えられている。


2人ともかなり怪しい雰囲気だが、大丈夫だろうか…。


「フォフォフォ、コレは珍しいこともあるもんじゃ。まさかアラーナが、ここにくるとはな?明日は大雪じゃろうかのぅ。」

アラーナは一気に爺さんに間合いを詰めて小声で話す。

「爺さん、あの世に行きたくなかったら余計なことは言わない様に…」


爺さんは冷や汗をかきながら軽くうなづく。

なぜか小声なのに聞こえたが、一体どんな関係なのやら。


「オホン!」

アラーナが咳払いをして説明し始める。

「この子はライル。3年前に邪教徒に連れ去られたと思われていたラングリッシャ族の生き残りだ。理由はわからないが我々がパトロールしていた所を発見し。保護した。」


「ふむ。それで?お主の趣味でよかったのう?」


ゴチン!


手甲のまま爺さんの禿頭を小突くと頭はおおきく腫れ上がった。


「そ、それで…何か問題でもあるのかのう?」

声を振り絞ってなんとか話し始める。


「オホン!この子は記憶喪失だ。」

「記憶喪失?」

突然真顔になり、これまでのふざけた態度とは打って変わり、ただならぬオーラを纏う。


「おい。準備だ。」

隣の目つきの鋭い女性に指示すると、なぜか女性はこちらを睨んだ気がした。

「かしこまりました。」


何が始まる?なんだか嫌な予感がするが…。

俺は空手の全日本大会でも緊張しなかったのだがなぜか緊張してしまう。


「そう硬くなるなぃ?」

お前が信用ならねーんだよ!

別室に案内されて、指示されたまま施術台に寝そべり何が起こるのかを待っている。

注射か?いや、放射能治療?いや、そんなものはないはず。移動は馬だし、鎧とか着てるし。


何やら爺さんが施術台の下に魔法陣の様なものを描き始める。


そうか!魔法か!さすがは異世界!いや、待てよ、もしかしたら既往喪失って嘘がバレるのでは?仮にもラングリッシャ王家の生き残り、面倒な立場にされるのはごめんだ。くぅー。万事急須か。

「では始める。入れ!」


突然辺りが暗くなり、1人の女性が扉から入ってくる。

さっきの目つきの悪いメイド服?の女性だ!

さっきの服とは違い、スケスケの衣装に身を包み、金の髪飾りやブレスレットを身につけて、何やら舞な様な踊りをしている。


ぇぇええ!なに?なんでスケスケ?

ちょっ!くびれも乳首も見えてますよ!

必死で見ない様にするが、しばらくご無沙汰な俺はチラチラと見てしまう。いや、おっさんなもで…。


「チッ!」


メイド?の女性の舌打ちが聞こえて睨まれた気がしたが、咄嗟に目を閉じてやり過ごす。さっきの睨みはこれかぁ。

爺さんが何やら呪文の様な言葉を発しているが意味はわからない。

呪文?が終わると爺さんが叫ぶ。


「冥界の住人ランパスよ!この者の記憶を呼び戻せ!!」


一瞬、辺りが一気に明るく光ったかと思えばしんと静まり返り。何も起こらない。

「ふむ。どうじゃな?何か思い出したじゃろう?」


「いえ、特に何も?」

俺は何も思い出せないと伝える。


「なに?本当か?何も思い出せないと?」


爺さんは強気でそんな事はないと、言わんばかりに俺に迫る。


「はい…特には。」


「ふむ」

しばらく考えた後、アラーナを呼ぶ。


「アラーナ!終わったぞ!」

アラーナが部屋に勢いよく入ってくる。


「どうだった?」

「いや、それが…」

爺さんはこちらをチラリと見ながら何か考えている様だ。いつのまにかメイド?はいなくなっている。

明るくなったのに残念だ。


「こやつは記憶喪失ではない!」


ガーン!

ば、バレた!やばい。このままだと一族の面倒な事に巻き込まれたりする!いやだ!もう二度とそれはごめんだ!

現代に生きていた頃、藤原家は一族問題で揉めに揉めていた。俺は長男だったがそのいざこざが嫌で家を出て一人で暮らしていたのだった。


なのに!またあんな面倒な…。

婆さんからは早く嫁をもらって孫を作れと言われ、父には剣術が甘いと打ちのめされ、母には食事の作法がどうだの、跡取りとしてどうだの言われて、挙句にはウチが直系だの。いや、そうでなくとも東大出て会社を起こしているから分家が正義がだの、もう嫌だ!と、家柄とか学歴とかそんなものから逃げ出した俺なのに、また異世界にまできてそんなことを…。


「ふむ、やはりか。」


俺がそんなことを考えて考えまくっていた時、発言したのはアラーナだった。


「やはり?」

爺さんがギロリとこちらを睨む。同時にいつのまにかメイド服?らに着替えた目つきの悪い女性も便乗する様にこちらを睨みつけている。


俺はどうすることもできずに目を合わせない様に爺さんを見る。武術でよく使う戦法で、目を合わせずに相手全体を捉えるための目線の手法だ。こんなところで役に立つとは思わなかったけど。


「まぁ、待て。彼には何か思うことがあっての事だろう。話も聞かずに一方的なのはよくない。」


「ライル君。本当のことを話してもらえるかな?なに、悪いようにはしないさ。私は君の味方だ。」

ニコリと微笑むアラーナはまるで天使の様に輝いて見えた。

俺は彼女を信じて決意して本当のことを話すことにした。


「俺は…この世界の人間ではない。と、思う。上司に出張を命じられて戦争に巻き込まれて飛行機が撃ち落とされて気がついたら変な黒装束の男たちに囲まれてなんとか逃げ出したらアラーナにあってここまできたっていうことです。」


俺は早口で簡単に説明した。

息が切れるほど緊張している。こういうのは苦手だ。

空手の試合でもこんなことはなかったが。


目をぱちくりさせてアラーナと、爺さんがこちらを見る。

「なんじゃ、転生者か。初めからそう言えば良かったものを。」「そうだぞ!ライル君?嘘など吐かずに転生者だといえば良かったのだ。」

「チッ!」

爺さん、アラーナ。最後はメイド?の舌打ちで俺は目を逸らす。


「え?もしかして転生者って珍しくないとか?」


爺さんが髭を触らながら答首を横に振る。

「いいや。転生者は珍しい。だが、今年だけは転生者が現れるお告げの日なのじゃよ。」


まさか、自分がそのお告げの人物?

いやいや、にしても誰のお告げだよ!

心の中でツッコむ。


「転生者の予言は2000年前の書物に記載があるのだ。それが今年というわけだ。だが。これは早速王に報告しなければ!」


立ち上がりどこかへ行こうとするアラーナに咄嗟に足払いを合わせてしまう。


「なっ!何をする!?」

咄嗟に受け身を取り、体制をすぐに整えるアラーナに見惚れながらハッとして、つい謝る。

「あ、すみません!つい。」


アラーナは、驚いた表情で質問をぶつけてくる。

「つい?つい、で、この私に受け身を取らせたのか?」


どう答えていいかわからないまま、爺さんやメイド?を、見やり、アラーナの疑問に答える。爺さんは鋭くこちらを見ている。メイド?は相変わらず鋭くこちらを睨んでいる。やめてくれないかなぁ。悪い事してるみたいだよ。


「あ。はい。つい、です。わざとじゃないです!すみません!」


俺は素直に謝罪する。ゆっくりとアラーナは、こちらに近づいてくる。

あぁ。終わった。まるで取引先にこれからの契約は無しだと言われるあの瞬間の様な重苦しく辛い感じだ。

ドン!と。両肩にアラーナの手甲の硬さと重さが伝わる。


「キミ!ウチの騎士団に入らないか?なに、王には転生者という事は黙っておこう!3食宿付きだ!キミは稽古という言葉に反応していたが、これで合点がいった。キミはきっと前世では強者(つわもの)だったのだろう?」


俺は呆気に取られ一瞬何をいっているのかわからなかった。

爺さんはあくびをしながらメイド?の女性と奥に消えていく。

「俺が?あ、でもライル君?は?どうしますか?」


「何をいう!キミはライル君だ!ラングリッシャはもう滅んで滅亡している。騎士団は邪教徒を追う中でついでにキミを探していたにすぎない。あ、いや、本当のライル君には申し訳ないのだが。」


少し申し訳なさそうに俯くアラーナの手に自分の手を重ねて話す。

「アラーナさん。大丈夫だと思う。邪教徒たちは魂は消滅したはずだといっていた。そこにたまたま俺の魂が入り込んだんだろう。なんでも邪神の器にするとかいってたから、そんなものになるくらいなら俺に憑依されたほうがマシだろうから。まぁ、こんな美少年におっさんの魂だと似合わないかも知らないけど。」


アラーナは俯いた顔をあげて感激した様子でこちらを見つめる。ちょっとだずかしいんですけど?


「何をいう!キミはライル君を救ったのだ!邪神になどなれば世界から人間を支配し、邪教徒の国をたてて、奴隷にするだろう。そんな屈辱から彼を救ったんだ!」

半分泣きながら説得する様に強く訴えかける。


「そうか…そうだな。アラーナさんのいう通りだ。わかった。騎士団に入ろう。でも転生者ってのは内緒にしといてね?」


アラーナの表情に耐えられずに、軽く冗談ぽく伝える。


「ありがとう。承知した。しかしキミには聞きたいことが山ほどあるな。酒でも飲みながらってのはどうだ?あ。まだ未成年か?」

「あー。前世では45歳だったけど、この体では何歳なんだ?17.8くらいかな?」


アラーナは目を見開き驚愕した様にこちらを見る。


「よ、45歳!?本当なのか?この世界では45歳はさっきのジジイとさほど変わらぬが…。ライル君の年齢は、報告書によると確か18だったと思うぞ?」


「え?あの人80歳くらいじゃないの?」

「彼は今年で50歳だといっていた。キミは若いな。」「あ、いや、この体はライルのだからね。」


「ふふ。確かに、違いない。まぁ、そんなことよりも先ずは酒だ。18ならば飲める年齢だ。問題ない。すぐに断らないところを見ると前世では飲めたのだろう?」ニヤリと挑戦的な表情でこちらを品定めする様に見てくる。

「少しはね。」

こちらもニヤリと返して二人は診療所を出て酒場へ向かう。












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