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第一章 其の三 おっさんが美少年に?

「いや、俺、45だぞ…流石にコレは恥ずかしいやらなんやら…」


 気を取り直して川で返り血を洗い流すとそこには、まるで神話の世界に語られるアポロンやアドニスの様な美男が立っていた。見たことないけどね。

「いやいや、コレ、俺じゃないだろ!どーすれば!」


 頭を抱えて辺りを転げ回る様に悶える。

 ふと。遠くから何かの足跡が聞こえる。


 何かが近づいてくる?

 耳を済まして音を聞き分ける。


 どうやら馬の足跡の様だ。

 ガシャガシャと金属の当たる音もする。


 とりあえず身を隠そう。

 大きな木の裏に隠れて様子を伺う。


「全体!とまれー!」

 号令に従ってほぼ同時に何体もの馬が停止する。

 馬にはそれぞれ鎧に身を包んだ騎士の様な人物がのっている。


 号令をかけたのは女性の声だ。鐵明の目に止まったのは凛々しくも美しく、精巧な金の細工が施された西洋風の銀色の鎧を身に纏った女性だった。女性は兜を脱ぐと、プラチナブロンドの美しいロングヘアをなびかせながら馬を降りる。


「しばらく休憩だ!馬には水を飲ませろ。」

 女性が指示すると皆は馬を川辺に寄せて水を飲ませる。

 女性も袋から水を飲み、川の水を補充している。


 思わず見惚れる様な美しさにうっかり小枝を踏んでしまう。

 パキッ!

「やべ!」


 女性は警戒しながらこちらを伺う。

「誰だ!?誰がいるのか?」

「隊長。私が見てきましょう。」

 1人の男が女性に進言する。


「ダメだ。3人で行け。まだ奴らの残党は、まだいるはずだ。連れ去られた少年は見つかってはおらんのだ。」

「もう殺されてると思いますけどね。まぁ、隊長がそういうなら。おーい、いくぞ。」

 3人の兵士が剣を構えたまま近づいてくる。


 どうする?見た目はちゃんとしてるが、味方かどうかわからん。話せばなんとかなる気がするが、なんとかならなかったら流石に武装したあの人数を素手では勝てる気がしないな…。


 最悪は1番近いあの馬を奪って逃げるしかないか…。

 付近にあった手頃な枝を2本ほど腰ミノの背中側に忍ばせる。大きく息を吸い込み、ゆっくりとかの影から両手を軽くあげて姿を現す。


「待ってくれ。俺は何もしていない。むしろ助けてほしいくらいなんだが?」

 少し緊張した表情で3人の前に姿を見せる。距離はおおよそ10m。


「お、お前は…まさか!」

「ウソだろ!本当か?」

 兵士は驚いた表情で何かの紙とこちらの顔を交互にみている。


 なんだ?もしかして指名手配とかだったらどうしよう。俺、何もしてないんですけど…。少し引き攣った様な表情で動揺する。


 すると1人の男が話しかけてくる。

「君はライル君だね?」


 誰かの知らない名前にしばらく固まる。

 ライル?は?だれそれ?俺じゃねーだろ!

 待てよ?もしかしてこの体の持ち主はライルという少年なのか?

 そうだ!ここはあの手がつかえる!

 ピン、と何やら閃いた様だ。


「すみません。自分でもよくわからないんです…。どこで何をしていたか、自分が誰かも…」

 我ながら完璧!記憶喪失のフリをすればきっとこの世界のこともわかるはず。


「自分でも分からない?どういうことだ?」

「隊長に報告した方がいいんじゃないか?まってろ。俺が報告してくる。」

 1人の兵士が女性の元へ向かい、女性自らがこちらにやってきて問いかけてくる。

「ふむ。確かにブロンドヘアで美男だな。君はライル君ではないのかな?名前はわかるか?」

「オレ…いや、僕は何も覚えていないんです。」

「ふむ。そうか。ここで何をしていた?」

疑いの眼差しでこちらを伺う。


「喉が渇いたので水を飲んで、ついでに汚れた体を流してました。そこにあなたたちがきたのでびっくりしてつい、隠れちゃったんです。」


 全身が濡れているのを確認すると安心した様に一息吐き、再度口を開く。

「ふむ。そうか。もしかしたら記憶喪失かもしれんな。王都の医者に見せてみよう。」


 1人の兵士が進言する。

「し、しかし隊長。似顔絵に似ているからといって安易に連れて行っては危険ではないでしょうか?」

「なに、問題ないさ。そもそも腰ミノ一つでこんな美少年がそこらを歩いている方がよほど問題が起こる。この辺には野党も連中もいるからな。」

 なんとかなりそうだ。ホッと息を抜き、気づかれない様に枝を捨てる。


「キミはどうしたい?何も覚えていないのだろう?このままウロウロしていては危険だ。私たちと一緒に来ないか?」

女性は優しい笑みでこちらに手を差し伸べてくる。


「本当ですか?いいんですか?」

内心ドキドキが止まらないまま安堵し、返事をする。


「よし、話は纏まったな。それならまずは何か着せてやろう。おい、着替えをもってこい。」素早く兵士に指示を飛ばす。


「キミ、お腹は空いてないか?よければ食べるか?干し肉だから硬いけどね。」

「ありがとうございます。」

 頭を下げて礼をすると全員がざわつく。

「なっ!君はどこの出身なんだ?あ、いや、記憶がないのだったな。」

 なぜざわついたか全く理由は見当が付かないが、勝手に収まってくれたので良しとしよう。


 服を着て干し肉を齧りながら彼女の馬に同乗させてもらう途中、この世界のことを聞いた。


 この世界はどうやらやはり異世界の様だ。

 太陽はいつも二つあり、海で隔てられた大陸が四つと島が、たくさんあるが、人口のほとんどは二つの大陸に集約されている。

 1番大きな大陸がここ、レイニール大陸だ。レイニール大陸は美しい山と緑、川があり、農業が盛んだそうだ。大陸唯一の国はレアル王国。王都レアルは商業が盛んで冒険者という職業があるらしい。なんだかゲームみたいだな。

 それから自分?についても聞いた。ライルとは何者か。

 彼はこの大陸に10年ほど前まで存在したラングリッシャ国の直系ではないが、一応王家の一族の末っ子で、美少年だが体が弱く寝床から出られないこともしばしばあったらしい。

 王もまた病気で亡くなり、その後跡取り問題の最中に宰相が横領したせいで予算はなくなり、家臣は逃げて国民もレアル王国に移り住み、国は実質壊滅。その後、両親と馬車で移動中に邪教団に襲われて連れ去られたとのことで、大体3年は立っているそうだ。

 なぜ3年もの間生かされていたかはわかっていないが、兎に角、飛行機事故から生還?いや、転生したのは事実の様で、この先俺はこの異世界の美少年、ライルとして生きることになるのだろうか。

いや、こんな美少年の状態でどう生きていくか不安だ…。







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