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第一章 其のニ 異世界で生贄にされてた

 なんだ?あいつら。

 いや、そんなことより俺は死んだはず…。

 頭の中で脳ミソをフル回転させるが何一つわからない。


 奇跡的に助かってコイツらに拾われたのか?

 いや、あんな高さから落ちて生きてるはずはない。


 今分かるのは、腰ミノ一つの体は大の字に大きな石の上に寝かされて両手は胸の前で指を絡めている。そして怪しげな連中に囲まれているということだけだ。


 幸い連中はまだ目覚めたことに気がついていない様だ。


 さて、どうしたものか…。どう見ても気さくないい奴らには見えないな。

 話しかけた後殺されるシーンを思い描く。


 くそ。何がどうなっている?せっかく生きてるのに…。


「今動かなかったか?」

 集団の中の1人がこちらを伺う。


「そんなはずないだろう?魂はとっくに消滅してるはずだ。いまは単なる生きる人形だ。邪神バルドル様復活の器なんだからな。それより儀式を進めるぞ?」


 くそ。気づくなよ?てか、邪神?魂?なんかの信仰宗教か?でもそういえば海外のはず。なんで言葉が普通に理解できてるんだ?って、今はそれどころじゃないな。落ち着け。まずは状況把握だ。


 相手は1.2.3.4.5、5人か。体格はよくわからんがそんなに大柄じゃない。なんとか倒せるか?


「いや、儀式が上手く行かなかった可能性もある。俺が確認する。」


 マジかー!やべぇな。こりゃ。

 殺されるぞ。

 必死で死んだふりをする。


 黒装束の男がこちらをジロジロと覗き込む様に見てくる。


 だが、今ならチャンスかもしれないな。


「気のせいか…」


 ゴキっ!

 黒装束の男が後ろを向いて元の位置に戻ろうとした瞬間、素早く後ろから顎と頭頂部を掴み、一気に首を捻りへし折る。


「おい!くそ!なんで目が覚める?魂は消滅したたはずだろ?」

 怪しい集団が慌てた様子で、あたりの武器を取り構え出す。


「遅い!」

 すかさず1番武器を取るのが遅れた男に渾身の肘打ちを顎に打ち込む。


「がっ!」

 男は糸の切れた人形の様に倒れ込み動かなくなる。


「儀式は終わりだ!殺せ!器はまた見つければいい!」

 リーダーと思われる黒装束の男は叫び、他のメンバーに指示する。


「このやろう!」

 1人がナイフで腹を刺そうと突き込んでくる。

 明らかに使い方が素人だ。


 真っ直ぐについてくる柄を待った右手の拳部分を、左手の手のひらで受け流しながら間合いを詰め、空いた胴体に膝蹴りを叩き込む。

 同時に持っていたナイフが手からこぼれ落ちると空中でキャッチして構える。


「ぶっうぇ!」

 交差する様に互いの勢いが乗って綺麗に鳩尾に入った膝蹴りの威力は声にならない悲鳴が物語っている様だった。


「後3人。」


「コイツ昨日より格段に強いじゃねーか。何がどうなってる!」


「昨日?昨日は俺は飛行機の中だったはずだが?多分。」自分がどれだけ意識を失っていたかわからない。恐らくは二日、いや。三日か?


「ヒコウキ?なんだそりゃ訳のわからんことを言いやがって!死ね!」

 片手で剣を振りかぶり。切り掛かってくるのを避けた瞬間に潜った右脇腹をナイフで抉ると鮮血がしたたり落ちる。


「ぐあっ!」

 男は剣を落として傷口を押さえて蹲る。


 ドスッ!

 間髪入れずにナイフを手裏剣にして投げつけて、棍棒を持った男の額に突き刺す。


「このやろう!」最後の1人が両手で剣を振り下ろすのに合わせて一気に間合いを詰め、左側に避けてサイドに回り込むと同時に右腕部分で相手の両手を切り下ろす下方向に送る。


 男が体制を崩して前のめりになったところに回し蹴りを後頭部に叩き込む。

 無言で男は倒れて動かなくなる。


「ふぅ。こんなもんか。稽古でしかやったことなかったから大丈夫か不安はあったが。まさかこんなところで俺の技が役に立つとは。さて?」


 膝蹴りを喰らわせた男を睨みつけて問いただす。

「お前ら何者だ?今は何月何日だ?ここはどこだ?」


「貴様に教えることなどない。」


 首を傾げながら

「ならとりあえずは縛っとくか。」

 何に使ったのか想像したくはないが、血が付着し、置いてあった縄で黒装束の男を縛る。

「離せ!」


「何を言う?お前らが殺しに来たんだろう?」

 他の気絶している男たちを縛り上げながら話を進める。

「さて、出口に案内してもらおうか?」

 剣を首に突きつけて脅す。男は顎をあげて震えている。


「こっちだ。」

 両手を後ろ手なら縛られたまま歩いていく。首には後ろから鐵明が、剣を突きつけている。


 しかしこの剣。普通に西洋の剣に見えるな。銃とかでなくてよかったが、こんなものがそこらに出回ってるとは物騒な国だな。


 洞窟を抜けると眩い光が目に入ってくる。思わず一瞬目を閉じるがその瞬間に脳がおかしいと叫ぶ様に反応する。

「ん?まさか…嘘だろ!?」


 その空には輝く太陽が二つ並んでおり、島の様なものが宙に浮いている。辺りは美しい緑で覆われ、見知らぬ鳥が空をかけていた。


「は?どう言うことだ?ここはどこだ?おい、ここはどこだ?」

 黒装束の男に問いただす。


「どこだとぅ?なんだぁ?魂が一回抜けてボケたか?エレクシア大陸だろうがよ。」


「エレクシア大陸?聞いたことないが……いや、それよりも太陽が何故二個もある?」


「はっはっはっ!こりゃ傑作だな!本当にボケたらしいな?太陽なんざ昔から二つだろうがよ!」


「ま、まさか…ここは違う世界なのか…?まぁ、いい。とりあえずは飯…よりは着るものだな。おい、街はどっちだ?」

 剣を喉に突きつけて脅す。

「誰か連れていくかよ。その辺でのたれ死んどけ!」


 ガリッと、何かを噛み砕く様な音がした後、男は泡を吹いて息絶える。


「自殺した?くそっ。どうするかな。これから…」


 しばらく考えながら自分の体を確認する。

「あれだけの飛行機事故で無傷な訳ないが…」


 しかしどこを見ても怪我はなく、なぜかいつもと違う手足の形、毛量、ホクロの位置などが違うことに気がつく。

「まるで別人の体の様だな。腕も足も前よりも細いしムダ毛も少ない。皮膚のシワもない?ん?毛の色も違う?まさか…」


 髪の毛を触り前髪を確認するとかなり伸びていることに気がつく。一本毛を抜くと、美しいゴールドの髪の毛だった。


「ウソ、だろ?まさか本当に別人なんじゃ…?」

 辺りを走り、微かに聞こえる川が流れる音を頼りに川を探す。

「あった!」

 川の流れが比較的穏やかなところをドキドキしながら覗き込む。

 そこにはとてつもなく整った顔立ちの美少年がいた。歳はおそらく16~18歳付近だろう。


「ダレですかこの美少年は…」

 硬直してしばらく動けないまま水に映る自分を見つめる。

 輪廻転生。どうやら一度死に、元の世界ではない別な世界に転生。他人になった様だった。















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