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第9話 本能的、癒し体質のベルメリ

 

 《校医バルン、やはりあいつはヴァンパイアだったのかっ》の噂話は、セーンのその噂のもみ消しよりも早く伝わって行った。校内は元より町内に広まり出し、セーンはあきらめて、本人バルンにユーリーン婆のお得意の台詞でもある、『これは、夜逃げしかないよね』の決め台詞を言ってニールに戻り、後は野となれ山となれ等と無責任な事を思っていると、ほどなくして・・・

 ニキ爺さんの家、自慢のセピア公国風の設備には、セーン達コンタクトが出来る者には無用の長物的設備、電話がある。それは居間に鎮座していた。

 新居完成後、別に使われることが無かった代物であるが、ある日、聞いた事もない電子音をひっきりなしに慣らしだした。

「壊れたのかしら」

 丁度その場にいたユーリーン婆が首を傾げる。

 チーラはそんなユーリーンを見て、

「お母様、何を悩んでいるんですか。これ電話が鳴っているって事は、どなたかが電話をかけて来たんじゃありませんか」

 ユーリーンはチーラにそう言われて、

「そうよねぇ、じゃ、取らないと」

 そう言って慌てて電話を取ってみるユーリーンだ。

「はぁい、あたしユーリーン。あなたは?」

 チーラは側で聞いて、随分軽いノリのユーリーン婆と思って、可笑しかった。

 [はい、私は、ガーレン・バルンですけれど、覚えていらっしゃいますか]

「ええ、もちろん覚えていますとも。レンが勝手気ままで、ご迷惑をかけてしまいまして、あの頃はとても申し訳なかったですわ」

「え、とんでもない。というか、何の事おっしゃっているか、僕は一寸返答しづらいのですが」

「え、お忘れだったかしら、皆で海に行って、ガーレンちゃんがレンにしごかれた挙句、おぼれて海に沈んだ件ですけど」

「そ、そんな事ありましたかね。僕はさっぱり・・・」

「あ、学校に行く前だったから、お忘れね。それにしてもお久しぶりね。お母様はお元気?そう、良かったわ。最近疎遠になっていたみたい、でも忘れていた訳じゃないのよ、どうされているか気になってはいたの、ホントよ。でもお元気なら安心したわ。伝えてくれてありがとう。では・・・あ、何か御用だったのかしら」

 横で聞いていたチーラは吹き出しそうになって、口を押さえていると、ユーリーンはチーラを見て、『良かったチーラさん、笑えるようになったのね』としみじみ思いながら、

「で。ガーレンちゃんは何の御用?」

「実は僕、チーセン君やラーセン君の居るハイスクールで校医になっているんですけど」

「ま、そうだったの。知らなかった。偶然ねえ。あの子達大人しくしていたかしら。迷惑なこと、しでかしてないかしら」

「いえ、彼らは良い子達です、彼らは良いんですが、他の生徒が、僕の事を何だか怪しんでいて、校長に話したようで、どうも誤解があって、いや、誤解じゃないけど、察してしまわれて、僕居づらくなったんです。そうしたら、そちらのご様子をあの子達から聞きまして。僕、自分を売り込もうかなと思い付いて、えーと、結論を言いますと、家庭教師が必要なのではないですか?募集はされていないようですが、こちらの皆の話で、きっと募集するだろうと思い、他の誰かに決まってしまう前に、僕が立候補した次第です」

「まあっ、家庭教師になってくれるの。ニーセンユーセンのっ。聞いたのね、ヤッヤモの事も・・・。どうぞどうぞ、来てちょうだい。・・・でもその代わりと言っちゃあなんだけど、(来たからには帰えしゃしないわ)。え、何でもないわ。えーと子供たちのパパに変わりたい?あ、最近会っているわよね。いえ、今のは聞かなかったことにして、とにかくそこはさっさと辞めてすぐ来て。しのごの言わず来るのよ。え、いえこっちの事。どうぞ、歓迎しますわよぅ、おっほっほ。来てね、きっとよ。あ、何だったらセーンに迎えに行かせるわ。この際だから瞬間移動で来てもらえるかしら。今から辞表出してね、辞表出したら、迎えに行くわ。きっとね。すぐ辞表出して、荷物は後から送ったらいいでしょ。あ、手荷物ぐらいは持ってきて大丈夫。辞表出したらすぐ迎えに行くから、あら、セーン聞いてたの・・。ガーレンちゃん、あのね。セーン、荷物まとめるお手伝いがしたいんだって。だからセーン、今から行くってよ瞬間移動で、大丈夫ガーレンちゃんの荷物ぐらい一緒に持って行くって」


 セーンはガーレンがニーセンユーセンの家庭教師に立候補して来て、つくづく自分のあほさが身に染みた。

「なんで思いつかなかったのかな。あいつ校医だから。違う気がしたとか。いや、そもそも考えていなかったな。ま、俺は利口じゃ無いのは分かっていたが、あほらしくなってきた。セピアに行っていたんだから、さっさと連れて来れば二度手間にならなかったのに」

 ぶつぶつ言いながら、ガーレンの借りている部屋に瞬間移動してみると、そこにはいつものベネルさんに預かってもらっているメンバー4人以外にも女の子が居て荷物を積めるのを手伝っていた。

「おや、ガーレン。以外にも慕われていたんだな、ちょっと感動した」

「ふん、お前とは違うんだ。人徳とはこういうものさ」

 二人で軽く言い合っていると、女の子がぽかんとセーンを見つめている。ココモが、

「クー、二人並ぶとやっぱ見ものだな。セーンも下手するとヴァンパイアと間違えられるかもしれない。知らないよう、あの辺り田舎だから、噂好きが多いんじゃないかー。やっぱりあいつ等とか言われそうだ」

 セーンは一応注意しておく。

「変な冗談言うなよ。ココモ。お嬢さんが誤解するよ。今回の騒動はヴァンパイアの敵方の奴がガーレンに本能の出る魔法を仕掛けたんだ。本来こいつはそういう性分は無いんだ。ルバルママが消滅させていたはずだ。こいつはいままで普通に学校は通えて卒業したんだし。だけど、DNAにある素質まではルバルママには消せなくてね。それを表に出す魔術だった。魔術の影響が消えた後で、ぐびぐび飲んでしまった血はゲロしたんだったよね、ガーレン。普段に食堂で皆と普通の物食っていただろ。見た事あるだろ。お前ら。嘘でもあると言ってね。この際、立ち去る者に配慮お願いします」

 セーンが言うと、クスクス笑いだしたベルメリ。

「あたしは見た事あります。噂は間違いだと言っておきます。でも、本人、出て行くので説得力無いけど」

 そんなベルメリに、ガーレンは、

「それじゃあ、ベルメリ、ニーセンユーセンが安定したら知らせるから、ニールに遊びに来るといいよ。セーン、この子はヤッヤモよりもっと小さい子に会いたいんだそうだ。楽しみにしているから、俺も頑張らないと」

「そういう理由なのか。お前も、教師としての自覚が今一じゃないのか。大丈夫かな。それからニーとユーは最近は安定している。ヤッヤモが居なくなったからだろう。頼むのは勉学だけだからな」

 セーンが何気なく言った言葉に、今まで大人しく皆の会話を聞いているようだったベルっメリちゃん。ついにホラー映画のワンシーンの様に叫ぶ。

「ええっ、キャァー。安定だって、安定だってよ。良い子にしてるって事よね。聞いたヤッヤモ、あんた確かに言ったわよねー。ニー、ユー安定したら行けばいいって。セーンさんお墨付きの安定よ。あたし今から家に帰って、お泊りの荷物まとめようかと・・・あっお館様のニキ様にまだ来ていいって言われてないっ。ううぇぇーん。ベルメリったら、ばかっ」

 おずおずとヤッヤモが、

「でも、僕はまだ戻れないんじゃないかなー。僕一応ベルメリさんの使い魔候補だし」

「あら、ニキ様に招待されたアカツキには、あんたはパパのポケットにでも入っていて」

「ううっ、そう来たか」

 ヤッヤモががっくり頭を垂れている側で、ヤコとチーセンラーセンは笑い転げていた。

 最近大人びて来ているココモちゃんは、きりっと言うべきことを言う。

「ニキ爺さんじゃなくても、セーンの代理の回答で良いんじゃないかと思うけど、このベルメリちゃん、ヘキジョウさんっ子達見に行きたいって言っているんだけど、ニキ爺さんとユーリーン婆さんはきっと誰でも歓迎だろうから構わないよね、セーン。ただ、今回は家庭教師としての対面が大事だろうし、バルンさんとのニー、ユー対面が終わってからの方が良いよね。きっと」

 セーンは機嫌よく、

「ぷはっ、何だー。大騒ぎし出したから驚いたな。俺は構わないけど。ベルメリちゃんのパパに、ヤッヤモをポケットに入れておいてくれるのか、聞いてみないと不味いんじゃないか。それよりベルメリちゃんのポケットに入って居れば、ヤッヤモが戻って来ても大丈夫だと思うよ。あいつら落ち着いているから。ガーレンは二人の勉強の家庭教師をしてくれれば良いんだけど。この間の騒動を見ると、ガーレンもママの所に戻って躾けしなおした方が良いかもしれないけど、ニーとユーの勉強の家庭教師の方が優先だからな」

 ガーレンは、

「妙な言い草だが、ま、良いか。ベルメリちゃんは早い所家に戻って、パパに報告しておいで。きっとパパはこの件を諦めさせることは不可能だろうし」

「そうなのよ、あたしんち直ぐ近くなの急いで準備して来るから、置いてかないでねー。連休の間だけよ、今回は。もうすぐ春の休暇が始まるから、そっちが本番なの。今回は顔見せだけよ。行くわよヤッヤモ」

 ポケットから出て人型で寛いでいたヤッヤモを乱暴にひっつかんで、人化しているのにポケットにねじ込もうとするので、慌ててヤモリ状態になったヤッヤモ、外に出ようとしているベルメリのポケットの中に何とか収まったようだ。これには子供達に混じって、セーンも大笑いだった。

「あは、これは見ものだったな。」

 久しぶりに心から笑えたセーンだった。

 ベルメリが慌てて出た後、セーンはガーレンをつれてベルメリの家に行くことにした。

 後に残った4人は、べネルさんちに戻りながら、ぽつぽつと思った事を話し出す。

「良かったな。ニー、ユーは狂った獣人の噂は返上だな」

「うん、やっと館も正常になった」

 チーセンとラーセンはしみじみ思った。ヤコは、

「僕はどうしてもヤッヤモを預かれない気がして、ヤーモに断るしかなかったけれど。ベルメリが預かってくれて本当にうれしかった。ベルメリちゃんみたいな良い人、女の子では初めて見たな」

「うん、ヤコにもいい友達になりそうだよな」

 ココモも相槌を打つ。そして、

「ニーとユーはセーンに構ってほしがるけど、あいつ病んでいたから、構えなかったからな。二人は誤解してしまったけど。リューンさんが二人に説明するとしても、セーンも察してしまうから無理だって言っていたしな。不味い展開だったけど。ヤーモの機転で何とか乗り越えられた」

「どういう事」

 ヤコが聞くと、

「セーンのコンタクトはリューンさん並に最近は優れ者だろ。リューンさんにはセーンに聞かす訳にはいかない一言があるんだ。皆ブロックが得意になっているから、この際ぶっちゃけて言うけど、セーンにマイナス思考は言えないんだ、リューンさんによるとな。あのドラゴンが襲って来た時、リューンさんはセーンを必死で止めた。セーンのマイナス思考になる話題を避けてな。セーンがあの時みんなを助けに行ったら、おそらくココモドラゴンにやられていただろうって言っていた。だいたい泣きながら戦って勝つ奴はいないってさ。すでに気持ちで負けてしまっていた。だから使い魔に任せるしかなかったってさ。勝てる可能性が無かったわけじゃないから、それは悟らせなかったけど。瞬間移動で体力使ってすぐさま戦うって言う難しい技、セーンがやる気になっていればやれたと思うってリューンさんは分かっていたけど。すでに親しいヘキジョウさん達が殺された後で、もう泣きに入っているのにそんなヤル気は出ないだろ。舘に戻った瞬間、ドラゴンに殺されてしまう可能性が高かったんだ。そうなったらヘキジョウさん達どころか、館の住人全滅だ。だけどセーンにはそういう予想をさせる訳にはいかないって、リューンさんが言ってる。セーンに負ける想像をさせたら、戦えなくなるって言うんだ。だから、あの時は、使い魔を助けに行く主人なんか主人とは言えないって、言い続けるしかなかった。事実そうなんだけどな。現実を予想させるわけにはいかなくて、ケジメって言うか、道理に合わないってところで説得し通したけどね。人の気持ちってのがあるからね。セーンは間違えてしまった気がして、ずっと悩んでいた。これが負けるから助けに行かなかったんじゃあ、立ち直れないな。負ける想像が癖になるって問題より、こっちの理由の方がきついなと、俺は思ったな」

 ヤコは思った事を言う。

「ココモは使い魔じゃないからそう感じただろうけど、俺らはセーンが死んでしまっては、何のために俺らが居るのかって話になるな。リューンさんのけじめと道理の問題で正解だよ。セーンが助けに来た挙句、ドラゴンにやられたんじゃ、使い魔は死ぬに死にきれないや。皆ショックと言うか無念と言うかで、のたうち回るなきっと。来るのが遅かったとか考えたりしたら、頭が腐りそうだ。俺の事だけどな。最初の頃そう感じたんだけど、ココモ、俺、頭の方から腐りだしていないかな」

「まだ、腐っていない。考えすぎたら、腐るから気を付けろよ。頭に浮かびそうになったら、走るんだ。思いっ切りな」

「そうする。考えた記憶を消したい」

 チーセンとラーセンがそんな二人に、

「あんまり冗談みたいな本気みたいな、小難しい事考えるの止めようヨ。ベルメリちゃんのヘキジョウっ子を見た時の事を想像するんだ。きっと幸せな気分にしてくれそうだよ」

「うん、それが良い」

「早く三学期終わらないかなー」

  ココモのしゃべりに、

 ・・・時は変わらない速さで流れますよ・・・そう誰かに言われた気がした、ヤコだが。一体誰が聞いていたのだろうか。ココモのしゃべりに、

 ・・・時は変わらない速さで流れますよ・・・そう誰かに言われた気がした、ヤコだが。一体誰が聞いていたのだろうか。あたりを思わず見回すが、誰かが居る訳ではなかったのだ。






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