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第5話 ベルメリ、使い魔を預かる

今日は2話投稿します。

前回第4話は内容が少しこのストーリーから外れてしまったので、元に戻した風になっております。

 

 2時間目、嫌いな事をしていると時間が長く感じられるものだが、やっと終わったと思ったベルメリ。更衣室で着替えながら、ベルメリにしては今日の走りの練習は頑張ったと思う。何せ双子らに抜かれる事は3回で止めておいた。ヤコと隣の転校生には4回抜かれたが。5回ではなかった事だし、良しとしたい。更衣室から、ヘロヘロと教室に戻るベルメリ。他の子は余裕がありそうで、『練習だもんね』と思う。必死で走ったのはベルメリ位の様だ。

 ふらふら教室に入ると、双子の所に隣の転校生が来ていて、

「そういう事なんだ。ココモ、どう思う」

 とチーセンが、聞いている。どうやら転校生はココモ・オーカーさんと言う姓名だと初めて分かったベルメリだ。『ココモじゃ、そのものの名じゃないの』と思っていると、ココモ君、こっちを見て、『セーンの名付けがいい加減なんだ。ま、別に良いけど』と言った。またコンタクト垂れ流していた。疲れた所為だと思っていると。ヤコも教室に戻って来て、

「ベルメリちゃん、今日は随分頑張ったねー」

 と言ってにっこりした。

「うん、チーセンとラーセンにあたしを何回追い抜くか賭けられて、ちょっと癪に障ったし」

「あはは」

 ヤコに笑われて、ちょっと他の子の手前恥ずかしくなる。他の子の様子を見ると、リリが睨んでいる。不味いと思ったが、どうしようもない。席についてぼうっとしていると、何かの意見を求められたココモ君は、

「僕はセーンの責任は無いと思うな。獣人の子の初期の教育とかどうすれば良いかなんて、セーンに分かりっこないし。奥さんが獣人国から家庭教師を連れて来るべきだったんだと思う」

「あー、ココモは何時もセーンの方を持つんだったな。忘れていたよ」

 ラーセンが諦めたように言っているが、ココモ君もう一言、

「ふん、僕は適切な意見を言ったと思っている」

 そう言いながらココモ君は自分の教室へと戻って行った。

 そんな周囲の様子を聞きながら、ベルメリは疲れて眠くてたまらなくなる。このままでは教室で寝てしまいそうで、決心して校内の医務室に行ってさぼることにしようと思う。

 ふらふらと立ち上がると、隣にいたヤコが、

「ベルメリちゃん、どうしたの、具合が悪いとか?」

 ヤコはベルメリが眠くなったのは察して居そうだが、きっと眠くてさぼりに行くと知られないようにしてくれていると思うベルメリ。

「そうなの」

 と言った後、医務室のベッドを目的地にして、自動で移動する。これはベルメリ唯一の技だ。体力がもたなかった時に、この自動操縦的技で移動して学校では過ごしている。

「送って行こうか、ベルメリちゃん」

 ヤコが声をかけるが、

「大丈夫、きっと行きつくし」

 と言って立ち去った。うとうとしながら医務室のドアを開けると、

「おやおや、面白い子が来たね。さぼりの片棒は普段は担がないんだが、こんな技みせてもらって光栄だから、どうぞベッドで眠ってくれ」

 聞きなれない声に驚いて、目が覚めてしまったベルメリ。普段は看護師のパートのおばさんしかいないはずなのだが。

「ひゃっ、知らない先生がいる」

「そうなんだよ。三学期からここの校医になった、ガーレン・バルンだよ。よろしくね。このハイスクールは元気な子ばかりで、先生少し暇だったんだけど、今日は良いもの見せてもらった。どうぞ、どうぞ。眠いんだろう。早く眠らないと、後30分ぐらいしかないよ」

「まっ、やけに移動に時間かかったわね。そうだ、体力もあまりなかったし」

 もごもご呟きながらベッドに横になると同時に熟睡してしまった、ベルメリ。先生に正体を勘付かれたかもしれないのだが、呑気なベルメリである。

 爆睡していたが、3時間目が終わったチャイムが鳴っている。チャイムで目覚める設定にして眠る事を忘れてはいなかった。『今日は褒めておく事が多いわね』と思いながら起き上がったベルメリに、忘れていた存在のバルン先生が、

「ちゃんと目が覚めたね。この学校の子は随分と前向きな子が多いね。良い雰囲気は広がるようだね。皆、良い子で先生の仕事が少なくて楽だな。あは」

 ベルメリは、又コンタクト垂れ流していたことに気付いたし、この先生もベルメリの垂れ流しコンタクトを聞く能力が有る事が分かった。『この人正体は何かしら』と思いながら、先生をじっと見てしまったベルメリ。少し寝ぼけていたせいだけれど、こんな事はしてはならない事だった。はっとするが、実際、彼の正体はかなりの量の魔力持ちで、出身はおそらくベルメリと同じ魔の国と思えるし、魔法使いの様で居て、何だかヴァンパイアの気配さえしている。ヴァンパイアはあまり会った事は無いが、パパに一度すれ違った人をヴァンパイアだと言った事があったのを覚えていて、様子が似ていた。それに物凄いハンサムなので、これはヴァンパイアにあてはまる特徴だ。

 先生はにっこりして、

「おやおや、こんな利口な娘初めて会うな。私の正体まで察したのか。お互い内緒って事で良いかな。君も正体は隠しているようだし」

 ギョッとしたベルメリだが、話の内容を反芻して、そうするしかないと思い、

「それじゃ、そういう事で・・・、でもパパには報告しますから」

「そうだね。それは仕方ないかな」

 と言われた。

 ベルメリはとぼとぼ教室に戻りながら、内心『そうは言ってもヤコやチーセンラーセンに隠しておけるかな』と少し不安になった。『ばらしたら先生どうするかしら』と思った。

 『まだ少し眠い』と思いながら、『あの先生正体がヴァンパイアなら、学校卒業したばかりに見えても、割と年食っているかもね』等と、思いながら教室に戻った。もうすっかりブロックして考えているつもりだったけれど、席に着くとヤコから、

「誰が年食っているって?」

 と聞かれた。がっくりして、『ブロックしているつもりだったのにー。聞かないでよ-』と言って机に突っ伏した。

『ごめん。言って無かったけど、僕には普通のブロックは通用しないんだ。魔力の強い奴はそういう奴多いから、ベルメリちゃんは気を付けた方が良いね。聞いていると面白いんだけど。ベルメリちゃんが正体隠したいらしいから、忠告しておこうかな』

『うわー。あ、でも何も考えなけりゃ良いんだっ』

 気を取り直して、次の授業の教科書を取り出すベルメリ。ヤコは、

『医務室の先生の正体は知っているよ。チーセンリーセンのパパのセーンさんのママの妹さんがあの先生のママで、つまりセーンの従兄弟って事。先生が転任してきた日に、僕らにそう自己紹介したんだ』

 また突っ伏し、ベルメリは、『なーんだ。悩んで損した』と言っておいた。


 昼休みとなり、元気の良い子は好みの昼食争奪戦に向けて、食堂に走って行く。

『皆、食欲が有って、結構です事。おっほっほ』ベルメリは何時もの台詞を思いながら、今日は元気なく、『きっと残っているのは、何か分からない魚のフライだろう』と思いながら食堂に一人遅ればせながら出向く。魚のフライもおいしいけど、当たりはずれがある。時々名前が知れない魚の時も有り、少し臭みがあるので生徒達には評判が悪い。食堂のおばさんに、『薬味工夫して』とか。とてもじゃないけれど言う勇気のないベルメリ。良い人だけれど、はきはきしすぎて、話しかけるのに気後れしてしまうのだ。

 ふらりと食堂入り口まで行くと、入り口に、ヤコに似ている風貌、つまり全体的にグレー一色の大人っぽい人と、少し小さめのハイスクールに行くのはまだ早い、若い子の二人連れが、食堂を覗いている。

「こんにちは、ヤコに御用なの?」

 思わず声をかけたベルメリ。彼らは振り返りながら、

「あ、ヤコをご存じですか。そうですけど。ヤコは奥の方で、ココモと夢中で話していて、気付かなくて」

「呼んできますよ、待っていてください。えーと御兄弟とかですか」

「そうです。ヤーモが来ていると言っていただけるとありがたいです」

 年上の人が言うけれど、少し若い子はご機嫌斜めの様で、少し泣いた後の様だし、それに、きっと怪我していると思うベルメリ。急いでヤコにコンタクトした。『入り口にヤーモさんが来ていて、怪我してるみたいな子連れているよ』

『え、ありがとう』

 ヤコが急いでやって来る。そのベルメリ達の様子を見ていたヤーモさん、

「あなた達って、コンタクトしているの?スゴ、俺ら仲間同士でも、使い魔の主人が変わると、出来なくなるのに」

 ベルメリは不思議な話題を聞いて、へーと思ったが、ヘラリと愛想笑いして立ち去る事にした。きっと身内だけで話が有ると思ったので。

 例によって魚のフライ定食を食べながら、気になってヤコ達の様子を窺うベルメリ。こういう場合、ヤコがコンタクトはブロックしていても、彼の見聞きしている事はベルメリには分かる。自分でも何故できるのか分からないが、魔人の能力と思える。

 ヤーモさんがヤコに訴えるように話している。

「セーンときたら全くニーセンユーセンを躾けないんだ。あれは獣だよ。可哀そうなこの子はあいつ等の標的になってしまって、尻尾をちぎられるのは毎度の事、最近はセーンがしからないから、手やら足やら引きちぎろうとして、こいつだけじゃないよ、他の子も暴力は振るわれるけど、だけど特にこいつは標的にされて、最近はうかうか寝ても居られないんだ。今朝は根元から足をっ引きちぎられた。どんなに痛かっただろうか、ユーリーン様が治してくれたけれど、こいつはじきにあの獣たちに殺されちまう。だから、ヤコ、しばらくこいつを預かってくれないか、本当はセーンのポケットに入れば良いんだけれど、傷もすぐ治るだろうし、だけど、ヤモが入らせない。『俺の代わりに入れたらいいじゃないか。ヤモにどけと言っている訳じゃないから』って言っても、『死んだ他の奴だって入れさせなかったのに、こいつを入れる訳にはいかない』って言って。ヤモ、少し病んでいないかな。どう思う?とにかく、お前のポケットに入れておいてくれ。ニールに居たら本当に、こいつはじきにあの獣たちに殺される。きっとね。言っておくけど、チーセンリーセンにも扱わせるなよ。きっと兄弟だから繋がっているから、何だよ。嫌なのか。あ、お前あの獣とも使い魔のつもりなのか」

「ヤーモ、獣とか言って、セーンの子じゃないか。お前こそセーンの使い魔じゃなくなったのか。なんだかなー。ひょっとして、セーンとは縁を切って、あのリアンの所に行きたいんじゃないか。もう子供たちは世話しなくても大丈夫なんだろう。あいつの所に行きたいんじゃないのか。だから気がかりなヤッヤモを連れて来たんじゃないのか」

「そんなわけないだろう、何寝ぼけていやがる。ヴァンパイアなんか俺ら魔物とは相容れない存在だぞ。お前、兄弟なのに俺の頼みが聞けないって?おまけに変な言いがかりつけやがって。そうか、嫌なら嫌と言えよ。他を当ってみるから。薄情者。もう頼まないし、お前とは縁切りだ」

「そうは言っていないじゃないか」

「いや、言ったも同然だ。どいつもこいつも薄情な奴ばかりになって、どういう事?何が狂ったんだろう」

 ベルメリは、詳しい事情はさっぱり分からないのだが、あの小さい方の子の、さっきまで泣いていたらしい様子が思い出され、たまらなくなった。あたしにできる事ないだろうか。少し残して食べ終わる事にして、急いで外に出ると、そこには居なかったが、どうやら倉庫の向こう側に居るのが分かった。三人の居る所に駆け寄ると、三人はギョッとしたようで、三人とも同じ顔で固まっていた。

「あのう、あたしでよかったら、その子、預かりますよ。なんだか訳ありでヤコは面倒は見れないんじゃないの。チーセンリーセンだけじゃなくてその獣風の子の使い魔になっているんじゃ、預かれないでしょ。あたしが面倒見る。きっとできると思うの。えーとポケットに入れておくのよね。それとー、夜は壁で寝るんでしょ。ご飯はきっとあたし達と同じよね。きっとできる。あたしが預かる。君、あたしのポケットここよ入って見ない?制服だからたくさんあるの。家ではちゃんとポケットのある服着るよ。どう、あたしンち来る?」

 獣化したような双子の被害者と言えるヤッヤモ君、グレー一色のはずだが心なしか頬を染めた感じで、

「僕・・・このお姉ちゃんちに行こうかな」

 この一言で、ヤーモ及びヤコは思わずのけぞった感じだが、気を取り直したヤーモ、

「本当に預かってくれますか。良かったな、ヤッヤモ。優しいお姉さんは良いよな。それじゃあ、お言葉に甘えてー、お願いしますっ」

 そう言うが早いか、何時の間にか男の子は消えて、ヤーモの手のひらに小さな・・・(ベルメリにはどう見てもヤモリにしか見えない代物がおり)ヤッヤモを捧げ持ってベルメリに渡す気の様だ。

 ベルメリは、爬虫類なども可愛く見えたりする質で、へぇと思いながら小さなヤッヤモ君をそっと受け取り、ポケットに入れた。入れた方のポケットは少し重くなって、何故か少し暖かい。爬虫類ではない様だ。内心『そりゃそうだろう、さっきまで男の子だったし』と思うベルメリ。何だか心も温かくなった気がする。思わずにっこりしてしまったが、そんな時、ヤーモさんは少し涙目になり、

「有難うございます」

 と言って消えた。

『ええっ、消えた』

 とベルメリが驚くと、ヤコは、

「瞬間移動でヤーモは帰ったよ。ベルメリは、こういうのは見た事なかったのかな。ヤッヤモを預かってくれて、本当にありがたいよ。良かったな、ヤッヤモ」

 と言うと、ポケットの中のヤッヤモは首を出してヤコを少し見つめると、また中に潜った。ヤモリ風のヤッヤモを見ていると本当にかわいいと思えるベルメリだ。


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