第2話 ベルメリの右往左往
ベルメリは急いで家に帰ると、今日はパパが既に帰って来ており報告した。ママはセピアの人だから、パパにだけ内緒話をすることがある。ママはパパの正体は気付いているかもしれないけれど、知らん顔でベルメリがパパに内緒話をしていても、気にしていないようで助かる。
『パパ、久しぶりに早いお帰りだったわね。パパに言っておきたいことが沢山あるのよ』
『おや、どんな事かな。聞くのが楽しみだな。詳しく話しておくれ』
『あのね、最近転校生が沢山来たのよ。獣人の双子と、ドラゴンの子よ。オーカーさんって有名なあの人でしょ。その孫だって。それでね、その子達って、コンタクト出来るの。あたし知らなくって、スイッチ切って居なかったのよ。だから思った事ずっと駄々洩れだったの。スイッチ切り方忘れていたのよ。教えてパパ』
『呑気だねぇ、ベルメリは。気を付けないと、魔の国の奴らに感付かれたら、大変な事になるぞ。それに浮かれているようだが、ドラゴンとは付き合ってはならないよ。結婚などは出来ない相手だからな。昔から魔の国の者はドラゴンとの結婚は御法度なんだよ。敵対していた時代が長いからな』
『やだ、そんなんじゃないわ。ただのクラスメイトよ。コンタクトは誰にも勘付かれていないはずよ。多分教室以外では、あまり考え事とかしていないから。きっと大丈夫よ』
パパにしっかりスイッチの切り方を習い、次の日は自信を持って教室に入ってみたベルメリ。すると、双子及びヤコはギョッとする感じで、ベルメリを見た。きっとベルメリの気配が分からなかったのだと思った。コンタクトで気持ち駄々洩れを止める事が出来て、すっきりした気分で席に着く。
ヤコはベルメリの顔を覗き込んだ。ちょっと気になって、スイッチを入れてみるベルメリ、
『スイッチの切り方を覚えたんだね。一晩で』
『前は覚えていたけれど、最近誰もこの教室ではコンタクトできる子がいなかったから、忘れていたの。だから思い出しただけよ』
『そうなんだ、君、魔物だよね。魔の国出身だろ』
『それは内緒よ。内戦で負けてあたしのパパ一家は逃げて来たの。だから、魔の国の奴らは敵なの。正体は明かせないの』
『でも、コンタクト無しの方が、魔力が分かるんだけど・・・良いの?魔力消さないとバレバレだよ』
『げっ。ホント、それ。魔力、あたしにあったのね。それは不味いわね。じゃ、スイッチ切ったら魔力使った事になるんだ』
『そう言う事。またパパに魔力の消し方教えてもらわないとね。君も忙しそうだね、でも、きっとまだ誰も勘付いていないから、大丈夫だよ』
『そうよね、でも、・・・と言う事はここに来るまで、魔力をずっと出していたって事よね。どうしよ、さっき校門に魔の国の奴らが居たっけ。どうしよ』
『そいつらは君より弱いから、多分気付いていないよ。あいつらは隣町の奴の子分だって、シュー達が言っていた。今日の喧嘩相手の様子見に来たんだ』
『まっ、今日は喧嘩の日だったの。休まなきゃいけなかったのに。すっかり調子狂っちゃっていた。あたし、早引け出来るかな。あ、今朝見はって居たって事は目立つ行動は出来ないかも』
『へぇ、ベルメリって喧嘩の日は何時も休んでいたのか。なるほど、隣のハイスクールは魔の国出身者が多いからね。でも小物の見張りだから、皆が帰るときに大勢で帰れば多分分からないよ、きっと』
『そう思う、ヤコ君。じゃ、今日は一日居ようかしら。でも、あっ。今日は単語のテストだったんだ。準備していなかった』
『僕の見せよか』
『ううん、いいの。あたしは早く帰りたいし』
『?』
『ウフフ』
ベルメリはショウカとリリが、ヤコを喧嘩させまいと企んでいる事を察していた。彼女たちはヤコが怪我をしそうで心配しているようだが、ベルメリは考えを覗かれないようにスイッチを消してから思った。『でも、ヤコはチーセンやラーセンの使い魔のつもりで、家の人はみんなそれを認めているみたい。使い魔って、御主人の喧嘩の加勢なんて、して良いのかな。子供の喧嘩なのに、ドラゴンが加わっちゃ、勝ちは決まっているじゃない。こう言うのきっと大人の魔物は許さないはず。ドラゴンだって仲間内じゃ評判を落とす行動よね。使い魔ってドラゴンの国には居ないはずだから変だけど、喧嘩しちゃいけないって言われそうね。ショウカとリリがうまく邪魔できるといいけど』
放課後、セピア語の担当の隣のクラス担任が、ヤコやショウカやリリを呼んでいる。気になったが、ベルメリは大勢の子に混じって帰らねばならず、どうなるのかなと思いながら、スイッチを切ったのか切らなかったのか訳が分からなくなりながら、慌てて家に帰ったのだった。
その日のパパとの練習は、少し難しかった。ベルメリはどうやら魔力がパパ並、もしくはそれ以上あって、隠す事はベルメリには難しい事なのだった。夜中までパパに教えてもらっていたので、翌日は寝過ごしてっしまっていた。
休んだついでと言っては何だが、また魔力を隠す訓練を続け、とうとう仕上がらずに、週に二日ある休日になるまで学校へ行けなかった。
しかし、どうやら行かなくてかえって良かったらしい。ハイスクールでは大騒ぎになっていた。どう大騒ぎかと言うと、これはママが近所から仕入れてきた噂でしかないが、隣町のハイスクールの留学生、魔人の子たちがチーセンとリーセンに大けがを負わせ、おまけにヤコが仕返しに行って、やりすぎたらしく、ベルメリのクラスの留学生は翌日のベルメリが休みだした日と同じく、ずっと彼らも学校に来ていないそうだ。一般の学生には情報が洩れては来なくて、皆首を傾げるばかりらしい。ベルメリは、『じゃあ、休んでいても大丈夫だったんだ』と安心した。
ママには、『ベルメリったら、クラスの子の不幸を興味本位に調べるのは、よした方が良いのに』と思われている。ベルメリには直接言いはしないのだが。
『忠告とか、してくれても良いんじゃないかしら』とベルメリは思った。なんだかパパとママには溝が出来ているらしいのだが、ベルメリとだって、ママとは溝が出来つつあるようで、少しショックを感じているのだった。
この小説のジャンルを訂正しました。
今までもよく間違えていて訂正することが多かったです。
1話目ではハイファンタジーにしていましたが、2話目からローファンタジーにしています。




