第15話 チーセンとラーセン
一方こちらはニールのニキ爺さん宅に一日滞在し、おいしいと評判の夕食をいただくベルメリ、何だかすっかりなじんでいて、家族の一員風にしていると、ポケットから顔を出すヤッヤモは、
「ベルメリちゃん、ご飯食べたら帰らないとね。きっとパパは待っているよ」
「夜までって約束したの」
「そうだよね。外は真っ暗だし、今は夜で間違いないね」
「夜って、真っ暗なのを夜だって、今ヤッヤモは言ったでしょ」
「言ったけど、何?」(ヤッヤモは嫌な予感がする。この雰囲気、またベルメリの言い訳的、屁理屈的話をし出すはず。ヤッヤモはこの展開、身に染みている)
「だーかーらー、夜までって約束したのよ、つまり真っ暗な間は夜ってヤッヤモだって言ったでしょ。明るくなけりゃ夜なのっ。この理屈、理解できるでしょ」
『ベルメリちゃん、きっと屁理屈言い出しているのは自覚してるな』そう思ったヤッヤモ、
「確かに、そうだね。でも、夜の11時の次の12時は午前零時とも言うよね。午前って言うのは次の日の朝って事じゃないかな」
「あら、ヤッヤモちゃんさすがね。仕方ない、午前零時までには帰れば良いんでしょ」
二人の言い合いを聞いていたセーン。
「ベルメリちゃんの言い分は理解できるけど、僕ら大人の常識として、女の子を夜連れまわすのは、せいぜい9時頃までだね。セピアに戻るのは9時にしたいな。そうでなけりゃベルメリちゃんのパパに非常識と思われちまう」
そう言ってセーンは、意識的に時計を見ると8時半である。帰り支度をすべき時間と言える。
ベルメリは舌打ちしたくなる気分だが、仕方なくデザートを急いで食べ終え、
「ヘキジョウさんっ子にサヨナラしに行くわ。ヤッヤモもでしょ」
「うん、そうだね」
ヤッヤモは少しホッとする。(ホントにほっとするのはセピアの家に到着しての事だ。苦労人ヤッヤモ)
電話が鳴りだす。
「パパね、きっと。どなたか、今出ましたって言って置いて下さらない」
そう言ってヘキジョウさんっ子の部屋へ急いだ。
ニキ爺さん、
「何の配達頼んで言われたセリフか知らんが、ベルメリは実に面白い子だ。ユーリーン、あんな孫娘が居たら楽しいだろうな」
「はいはい、そうねぇ。どうせあたしが出なきゃならなさそうね。セーン、さっさと瞬間移動して連れて行ってよ」
「はいはい、了解」
「はーい、グルードでございますー。いえいえ、とんでもございませんわ。はい、その通り、今出ましたって事で。どういたしましてっ」
ユーリーン婆、皆に振り返ると、
「今出ましたか、だって。親子で何時もああ言い合っているんでしょうね。ふふん」
今回は無事ベルメリをパパの所へ送り届ける事が出来たセーン、セピアまで来たことだし、べネルさんちに預けているチー、ラー及びヤコ、ココモの様子を見に行くべきだろうと思う。と、言うのも、何故かチー、ラーとコンタクトできない。様子見どころか、非常事態ではと思える。
そこで、ノスさん宅を出ると、直ぐ瞬間移動でべネルさんちへ行こうとすると、
『セーン』
『セーン』
とコンタクトしているのに、実際にも大声で叫びながら、ドラゴンに変化した、ヤコとココモが飛んでくるのが見えた。かなり遠くだが鳴き叫ぶので、辺りの住人は、何事かと窓を開けて様子を窺いだした。不味いと思うセーンは、
『おーい騒ぐな、セピアの人たちが見ているぞ』
注意するとやっと自覚した2ドラゴン、黙って飛んで、セーンの前で居りてくると、また叫び出す。
『セーン、チーとラーが大変だ。魔の国に連れて行かれたー』
『セーン、チーとラーがダブルデートの後帰ってこなくて-、俺らで探したらー。さらわれてー』
二人の大騒ぎで大体の事はつかめたセーン、セーンのハイスクール時代には縁の無かった『デート』と言う文言が含まれているのもわかった。息子たちにちょっと思う所があるが、そこは脇に置いておき、
『お前ら、魔の国まで飛んだのか』
『行こかと思ったけど無理と思った』
『行きかけたからその格好なのか、やれやれ。どうして俺にすぐ言わなかった?』
『セーンはベルメリちゃんを送り届けるという重要な任務があったし』
『なるほど、お前らも重要と感じたのか。だが、もう少し経緯が言えないのか。一旦人型に戻らないか』
「あれっ、お前ら服は何処にやった」
セーンは疑問を感じる。ココモは説明する。
「魔法使いに捕まって、はぎ取られて、服は置いたまま逃げて来た」
「捕まったって、どうして捕まったのか」
ヤコは、
「最近魔法使いの手下らしいのが周りをうろついてたし、そいつらだろうと思って行ったら、捕まったけど逃げた。チー、ラーはそいつらじゃない魔法使いに捕まったって、奴らが言っていた。俺らは無理と思って逃げて来た」
「そうか、最初から無理だったろうがな。ベルメリパパの件は気にせず、次は直ぐ俺に連絡しろよ」
「そーだね」
ココモ、最近態度大きくなったと思うセーン。とは言え緊急事態で間違いない。
「もう一度俺が魔法使いに聞くしかないな」
セーンが呟くと、ヤコが訊く。
「何処の?」
「お前らが捕まったところのだ」
ヤコは小声で、
「僕、やっつけちまったけど・・・」
「死んだか?」
「多分」
「お前らべネルさんちに戻って、服でも着ていろ。俺一人で行こう。ついて来なくて良い。お前らの着替えを待つ気にならないし」
「ふうん」
ココモが思うところありそうだが、聞いてやる必要があるだろうか。
「どうしたココモ」
「セーンはデートした事ないんだ。どうして」
「今、聞く話かな。モテなかったという事にしておく」
二人は置いてセーンだけで魔の国へ瞬間移動した。実際彼らを連れて行っても、それほど役には立たない。
ヤーモがポケットから顔を出し、
「ハンサムすぎて、敬遠されていたな、セーン。哀れ」
チー、ラーの気配を探しながら、ヤーモのからかいを黙らせるセーン。二人を見つけると、急いで魔法使いの住処の近くに移動した。
「何だ、ベルメリちゃんがさらわれた所じゃないか。始末したはずだが。あ、まだほかに居たんだな」
ヤモが、
「あのヴァンパイア、まだ魔法使いの手下止めていない。レンに言っておこうかな。レンが始末しろって言ってやる」
「ヤモ、どうして殺さなかったんだ。レンが始末するべきだと思った」
「ヤーモも不思議だろ。俺も良く知らない事情だな」
そう言いながら、魔法使いの家の中を伺うと、あのヴァンパイアと別口の魔法使いが顔を突き合わせて何やら相談しているようだ。何の話か気になったセーンは、
「あのー、俺もその話参加しようかな」
言いながら中に入ると、二人は飛び上がって驚き、例のヴァンパイアの女は、
「何言ってんのよ、あんたは承知じゃない訳?それでも親?あたし達この坊やの細胞を調べたいんだけど、どうやらこのままじゃ人のまんまの細胞でしょ。あたしらは狼さんの時の細胞が欲しいの、セーンパパはこの子達を狼さんに変身させられるわけ?」
「ちょっと、意味分からないですけど、チーセン、ラーセンは獣化能力が有るとか?」
「知らないのかね、君。それで親と言えるのかね」
「はー、そう言う事で、では返してもらいましょうかね俺の子ですから、こっちで調べるので、悪しからず」
セーンはまたさっきの奴と同じように焼き殺していた。
「俺って最近、前お館さまやり口に似たことし出したな。歳食って来たらこんな感じになるんだ」
何だかしみじみして来る。ヤモとヤーモがそれぞれ、チーとラーを抱えて、家路についたセーン達だった。
「あいつ等よくチーとラーが獣化するようになったことを知っていたな。俺だって気付かなかったのに。まぁおれは、あれだ・・・父親失格って所だからな。仕方ないか」




