第14話 ベルメリのパパ、娘のお友達のヤコやココモと話し合う
ここはべネルさんの家、やって来たベルメリのパパ(ヴァンク・ノス)さんから衝撃の事実を聞かされたヤコが驚いて、ココモ顔負けの感想を言う。
「げっ」
しかし、ふとココモは思った。疑問の点は直ぐ訊かないと気が済まない性格の為。
「そう言われましても。ノスさん、ヤコの仲間はココモドラゴンなんかにほとんどやられましたヨ。全滅に近いです。ヤコがドラゴン化してやっつけたんですけど。ピンチになっても古のドラゴンにはならなかったんですけど」
「そうだろうな。恐らく退化していたんだろう。何事も無ければドラゴン化の必要も無く、それが何代も続けば古のドラゴンには変化できなくなっていたんじゃないかな。ヤコは見た所生まれた時から、古のドラゴン状態だったようだから、親が必要になると思って、古のドラゴン状態にして生んだのだろう。俺の考えだが、根拠は無い。文献には、魔物と思われていても、必要な場合は古のドラゴンになる事が出来る。と記述してあった。生まれた時からとは書いてはいなかったな。これ以上は俺には答えられんな」
「へぇ、ありがとうございました。それで、その文献は何時頃発表されてんですか」
「ココモ君、君は見かけによらず、と言うかドラゴンにしては勉強熱心なようだね。俺が見た資料は俺がまだ成人前だった。その頃見ても古い資料に思えたな。発表時期は俺としてはそう言う事、つまり研究の年代などに関心が無かったから見てはいないな。残念でしたね」
ノスさん、ココモの食い下がりの質問に、明らかに好意的に返事をした。機嫌もどうやら良い感じに変わっているようだ。
ヤコはノスさんはきっと若い頃は勉強熱心な言わば文系だったろうと思う。こういう人はきっと争いごとは嫌っていて、それで魔の国から亡命したのだろうと思えた。亡命はノスさんの父親からだったと聞いているから、そう言う性格の一族と思う。それでベルメリちゃんは魔人とは思えないし、セピア人の中に居ても、天然的人柄と言えたと思う。
ココモとノスさんが話しているので、横で何となく考えを巡らせていると、ノスさんは急にヤコに話の向きをかえて、
「君もベルメリは天然と思うか。そうだよな。俺の育て方でああなったんだからな。君らはベルメリのホントのお友達の様だな。君らの事は安心だな。グルード家の獣人のハーフはここだけの話、ちょっと注意が必要な感じだが、君らが友人として側に居るし、学校を止めさせるほどではなさそうだな。邪魔したな」
そう言ってノスさんは帰った。ヤコとココモは自分らの態度によっては、ベルメリちゃんがハイスクールを辞めるような事態になりそうだったと分かり、胸を撫で下ろした。
ココモ、
「それにしても、獣人のハーフって何か問題でもあるのか?」
ヤコは、
「分からないけれど、ニー、ユーがパパと拗れ気味だったからじゃないか。チー、ラーは普通だし。」
と言う事で決着がついた気がしていた、ココモとヤコだった。
だが、そもそも、他校とのケンカと言うが、チーセンラーセンが大怪我をした件、誰一人、何故それほどの大ケガになったのかを考える者は居なかった。誰もが弾みだと解釈した。
連れて行った兄貴的なシューとジェイは3月月初めにハイスクールを卒業し警官になるための研修に行っている。卒業式後すぐの事である。だから現在まで事情は分からないままである。事情を分かりたいと思う者は居ないので、別に構わないと言えるだろう。
二人は、セーンがいくら警察関係には行くなと言った所で他に就職口が無いのだから行かざるを得ない。それに地元警察の人と顔なじみで(喧嘩の後始末で世話になっていた二人)推薦状も頂くし、警察の研修に行く事以外の他の選択肢は無かった。
もしかしたら、シューとジェイにもう少し詳しい説明を聞いていれば、セーンも思う所があったかもしれないが。
チーセンとラーセン、今朝からべネルさんちを出て、ダブルデートに行っていた。お年頃である。相手はショウカとリリだ。彼女たちはヤコやココモはそもそも人ではないので、付き合うのに相応しい相手とは言えないと分かっていた。付き合いだす前に、お友達以上にはなれないと悟るとは、利口な娘達である。
チーセンラーセンは言い訳としては『だーれも聞かないし』となるだろうけど、親に報告すべき事についてを把握していなかった。
あの日、2人は興奮していて、シューやジェイと一緒に行くと、状況をすぐに察して、初めての事なので一応弱そうに見える奴を相手に、喧嘩していたのだが、魔人は見かけとは違うこともある。魔人と名がつく故、持っている魔力の量での強弱となる。
そしてチーセンが弱いと勘違いしたのは、ひょろりとした体格の若そうに見える男だったが、生憎最終学年の、相手校のほぼ大将的存在だった。次々に魔力を込めて打ち込んでくるので、身の危険を感じたチーセン、すると不思議なと言うかとんでもないというか、チーセン自身も信じられない状態になった。獣に変化したのである。獣人であるチーラ達の元の獣は狼的な魔獣だった。だが近時代には元の獣に変わる者は居なくなっていた。退化とも言えるのだが、戦う必要が無かったのだ。平和な時代が続き、獣人と呼ばれはするが、その実態は獣の因子は有っても人と同じ状態だった。ところが、良かったのか不味かったのかチーラと言う獣人の娘は、セーンと言う魔力を相当な量を持つ相手と結婚していた。そしてその長男的双子がチーセンとラーセンである。
そして喧嘩と言う初めての戦いの場で本能で獣化したのだ。双子の片割れが獣化すれば、もう一方の双子も獣化する定めだった。喧嘩相手大将的最上級生は魔人としても才能が有り既に戦い慣れていた。
逃げると見せかけて、あらかじめ作っておいた結界へ、誘い込んだのだった。その場所は彼の魔力だけは消えないが、他の者の魔力は消滅する、彼の一族の戦いの技である。彼は親に教えられて、喧嘩であっても、それを作って喧嘩に臨んだ。もし彼より強い魔人の相手をしなければならない場合の事を慮って父親が命じていたのだった。
自分の相手との喧嘩に集中していた他の者は、チーセンやラーセンの獣化をその場での変化をずっと見て居てはいないので、大きめの犬がいるとしか思ってはいなかっただろう。そう言う事で彼らは結界に入ってしまい、喧嘩相手にコテンパンにやられていた。そして初めて獣化したために、本人達にも自覚は無い。夢中で喧嘩している内に負けたと思っていた。
気が付けば人に戻っているのだから、本人達が分かっていないのだから、仕方が無いと言える。
だが親のセーンやチーラでさえ人型の子の状態しか見た事はないのに、何故ベルメリのパパ、ヴァンク・ノスは知っているのか。それは彼の父が彼の幼い頃、言って聞かせていたのだ。敵の戦い方を知っていれば、勝機は有ると思えた。だが自分たちがなぜ負けたかも教えた。魔力が少ないのだ。そして息子ヴァンク・ノスは魔力量がかなりあると思っていた。その魔力量は、戦わない日々には超能力と名を変える。そしてコンタクト能力、透視能力、高じれば未来を見る事ができた。また、争いの場に行けば、その顛末を察することも出来た。そう言う事で、彼はハイスクールの喧嘩の場所を通りかかって、そこでのチーセン、ラーセンの戦いの顛末を見たのだった。




