第1話 魔少女ベルメリ
気が付かない内に運命急上昇中のシリーズを思いついたので書き始めています。いつものメンバーに新しいメンバーが登場です。彼女が主人公のつもりで始めましたが、書きだめたエピソードを見て思った事は、何時ものようにそうとも言えない感じになりそうです。何時ものように、読んで下さる方はきっと作者の懲りない癖を見る事になるでしょう。お楽しみいただけたら幸いです!
ベルメリはセピア公国のゼム郡ゼム町のハイスクール1年生のごくありふれた女学生だ。そう言う事になっている。誰も違う意見は持ってはいないはずだ。授業が終わればみんな一斉に家路を急ぐ。暗くなるとこの辺りは物騒なので、特に女の子は急いで家に帰る子が多い。その集団の中に居ると、ベルメリは学校の外の誰の目にもかからず、家に帰る事が出来る。何せ、ごくありふれた女学生でしかないのだから。
先ほどからごくありふれたを強調するのは、お察しの通り、実はありふれては居ないのだ。ベルメリは祖父の代にこのセピア公国に密航して来ておいて、ずっとこの国に居る者達のようにふるまっている、魔の国から来た魔物だ。つまり魔少女である。
祖父の代に祖国、魔の国の内戦で負け戦となり、早々と一家でセピアに逃げのびてきている。ベルメリの祖父は、先見の明があったという事である。他の仲間は、負けを認めたくなかったのか、祖父の様に早々と逃げずに、最後まで戦い祖父一家以外の一族は滅びている。古の祖父の一族の事であり、彼らは北の果ての魔物と呼ばれていたそうだが、祖父はその一族を捨てて、祖母と息子を連れてセピアに瞬間移動でやって来た。息子とはベルメリの父でありヴァンク・ノスと名乗った。当時祖父と祖母は瞬間移動で無理をして、セピアに到着後、早々と亡くなっている。孤児となった父はゼムの海岸を当てもなく歩いていると、とある商人に拾われた。孤児かと聞かれ、ヴァンクはそうだと答えると、店番に雇われたとベルメリに昔話をしたことがある。その商人は魔道具の商売をしていて、店番の出来そうな者を探しており、ヴァンクに魔力がある事が分かっての誘いだった。
雇われて店番をしていると、ヴァンクはこの仕事は自分にとっては都合が悪い事に気付いた。客層がヴァンクには都合が悪かった。時々魔の国からも客がやって来た。セピア人を装っていたが、ヴァンクより魔力のある者には正体がばれてしまう。その時までは、何とか無事に勤めてはいたのだが、もしも、魔力の強い客が表れる可能性を考えたヴァンクは、商人に辞めるというと、彼は親切にもセピアの普通の商店を紹介してくれた。
そして、次にその店の店番が決まる前に、気の毒にも親切な商人は亡くなり、次にやって来た店主は魔人だった。店の持ち主が亡くなって居るので、引き継ぎをする人が居ないのが気になっていたヴァンク。新しく店主になったのは、北ニール出身と噂を聞いた。魔の国出身ではないのを知り、それならばと、ヴァンクは律儀にその人を訪ねて行って、ヴァンクが店番でやっていたことを説明している。
気さくな魔人は良い人で、ヴァンクは初めてセピアで友人の様な付き合いをしていた。その後に、生まれたベルメリも、時々父について行く事があった。
店の店主になった人は、べネルさんと言う。店に行くと、べネルさんや奥さんのルーナさんは、ベルメリを可愛がってくれた。べネルさんは当時にしては珍しい、魔力で動くおもちゃを、ベルメリにくれる事があった。恐らく売れ残ったものだろう。ルーナさんは行けば必ず、手作りのお菓子をくれた。幼い頃はそんな風にべネルさんのお店について行ったベルメリだが、高学年になるにつれて、父と行動することは少なくなった。父親が、魔の国の魔人に遭遇する可能性を考えて、ベルメリと行動すること自体を避けるようになったのだった。ベルメリはセピア人のふりをする事を教えられていた。父親には似ず魔力は無く、パッと目には普通のセピア人に見えるベルメリ。ヴァンクは安心してセピアの学校に通わせた。
ベルメリはハイスクールに通うようになった。そんなある日、ニールからの留学生、獣人の双子、チーセンとラーセンが同じクラスになった。
ベルメリは彼らが通いだしてしばらくして知ったのは、そのチーセン、ラーセンがべネルさんちから通っているという事だった。彼らの伯父さんという事だ。
この件、チーセン、ラーセンと会話した訳ではない。他のクラスメイトとの会話を、横でベルメリが聞いていただけの事だ。彼らは気にすることなく、大声で個人情報を垂れ流している。ベルメリには考えられないような振る舞いだが、魔力が多い彼らだから、怖いものなど無いらしいと思えた。
そして、しばらくすると、また転校生が来て、ベルメリのクラスに入った。というよりは、最近転校してきたチーセンとラーセンと同じクラスに入ったと言える。その子の祖父のオーカーさんは土ドラゴンの権力者だ。王だったけれど隠居して、何者でもなくなっているが、権力だけは有ったので、その子の知っている双子と同じクラスにしてくれとごり押ししたそうだ。この情報も、ベルメリがその子から聞いたわけではない。噂である。
転校してきた当日、ヤコ・オーカーはベルメリの隣に座った。その席が空いていたからだ。ベルメリは誰とも友達ではないので、時々隣が空く。ついていると思ったベルメリ。その子が横に居ると、何となく気分が良い。不思議だ。
それにしても、彼は容姿が珍しいグレー一色で、顔の造りは整っていると思える、ベルメリだが。そう思ったのはクラスの女の子全員の様で、特にリリと、ショウカがその子をめぐって喧嘩しそうで、ハラハラしてしまうベルメリ。
先生が怒って「教室を出ろ」とか言うと、その原因と言えるヤコ・オーカーは、
「先生僕も外に出ましょうか」
などと言い出した。『ちょっと考えられない』ベルメリはあきれたが、先生が出なくて良いと判断したのでほっとしたベルメリ。と言うのも、その時ヤコはにっこり笑って言ったので、リリとショウカは見とれて喧嘩を忘れてしまったらしい。
授業が始まったので、先生の話に集中していたベルメリだが、視線を感じて横を見ると、ヤコがベルメリを見ていた。顔が赤くなっていないかと思っていると、ヤコがベルメリににっこりした。下を向いてやり過ごすしかないベルメリだ。
1時間目が終わると、ヤコは急いで教室を出た。ベルメリはどうしたのかなとは思うが、思った後それ以上の事は出来るはずも無し。
リリとショウカは不機嫌そうに、ヤコを待つ気だ。ベルメリは二人は放っておくしかないし、ひとり音楽室に行く。
授業が始まるが、三人は来る気配もない。音楽の授業は何時も数人居ないことも有るので、先生は気にしない。さぼる子はさぼるし。音楽はさぼるのにちょうどいい授業だ。優しい先生では、ハイスクールではこんな感じだ。ところがヤコは急いできたらしく、ふうふう言いながらやって来た。ベルメリは、可愛いと思う。
またベルメリの横が空いているので、ヤコが座り、ベルメリににっこりする。ベルメリも思わず、にっこりしたような気がした。すこし、自分でもなれなれしかった気がする。
少ししたら、リリとショウカも来たが、何だかご機嫌斜めだ。しかし、『彼女らがご機嫌な時があっただろうか』と思いを巡らすベルメリだ。
横からヤコが、『そうなの』と言った気がする。ヤコって、コンタクトできるのかなと思うベルメリ。『ヤコ、出来る』返事が来た。『ベルメリがコンタクトするし』
『えっ、したかな?』と思うと、『してる』と言う。
ベルメリは悟った。このクラスにコンタクトできる子は居ないと思って、スイッチを切って居ないのだと今更ながら分かった。
所が、スイッチを切ろうと思っても切れないベルメリ。『スイッチの切り方忘れた・・』と思っていると、『切らなくても良いんじゃない。誰も聞いていないよ。僕は聞こえるけど』と言い出すヤコ。
ちょっとドキリとしたベルメリだが、そんな時、『俺らもコンタクトできるけど、パパが目立つなって言うから、ベルメリに知らん顔していたんだけどー』
『べルメリの独り言可愛かったなー』なんと、チーセンとラーセンに今まで、駄々洩れの考えを聞かれていたと知ったベルメリ。『帰ったら、パパにスイッチの切り方教えてもらわないと』と思った。
『えーっ、そのままで良いのにー』
三人が一斉に言うが、そうはいかない。
何と言われてもスイッチは切るべきだろう。ベルメリは今まで聞かれて不味い事考えていなかったか、思い出そうとしたが、気が付いてスイッチ切ってから思い出す事だと思った。
その日は何とかあまり考え事をしないように気を付けて、急いで家に帰ったベルメリだ。




