浅川
暗財はソファにすわり、なんとなく、前にある横開きの窓の外を眺めていた。空は青く広がっていた。雲は一つもない。そんな空を何も考えることなく、ただ眺めていた。
犯人が捕まる様子は無かった。特に犯人のことを見た者も出てこない。ついに、暗財たちが疑われ始めた。金もあることはあるし、強力な弁護士をやとうことも考えていた。といっても、暗財が犯人ではないという証拠はどこにもない。そんな状況で、弁護士がどのような対策をとるのかも謎だ。
携帯電話が鳴った。事件から、携帯電話が鳴る回数が増えたような気がする。
「もしもし」
「あの・・・、浅川というものですが・・・」女性の声だ。
「浅川?ああ。伊野達の彼女かい?」暗財は一瞬戸惑う。
「はい。そうです」伊野達の違って静かな雰囲気だ。
「なんのようだ」
「少しお話したくて」
「あの事件についてか」
「はい」
「だろうな」
「あの、暗財さんがよく行っているカフェで話しましょう」
「ああ、分かった。何時だ?」なぜよりによって、あのカフェなのだろうか。
「今から5時間後の、7時に」
「7時だな。了解」
「では、また後で」
「ああ」と電話をきった。