警察
マスコミがうるさいことに苛立ってはいたが、警察署にも何回も呼ばれた。行っては、同じ質問を聞かれ、同じ答えを出す。何のためなのかが分からなかった。
だいたい、空き巣を本職としている暗財の最大の敵は、警察だ。
それが落ち着き始めたある日、携帯電話が鳴る。
「もしもし」警察の小笠原のようだ。
「何のようだ」
「死体の胴体が見つかったんだ、一度警察署に来い」
「またか」暗財は重いため息をつく。
「しょうがないだろ事件にかかわったことには変わりはないんだから」
「ああ、分かった。行かせてもらうよ」
「やっと行く気になったな」小笠原は笑う。
「行きたくはない」
「今回の捜査ではある物も見つかった」
「なんだそれは」暗財は「ある物」に興味を持つ。
「知りたければ来い」
「だから行くって」
「じゃ絶対来い」
「で、いつ行くんだ?」
「今来い」
「分かったよ」とこちらから切った。
警察署の取調室に入ると、変な空気がただよっていた。初めてここに来たときは、それに戸惑った。
小笠原から、座れと指示を出されたので、イスに座る。目の前には、イスに座る小笠原と、灰色の机が見えた。特に周りには何もなく。部屋の隅では、もう一人の警察が、勉強するように、なにかノートのようなものに、いろいろ書いていた。相変わらず、ここは殺風景だ。
「胴体が見つかったのは分かるな?」小笠原が訪ねる。
「ああ」暗財は頷く。
「ゴミ処理場で見つかったみたいだ」
「それは本当か?」
「あいにく、嘘はつかない」
「そうか・・・」
「では、ある物についてだ」
「ある物」暗財は、言葉を反復する。
すると、小笠原は、暗財に手紙のようなものが入っている、ジッパー付きのプラスチックの袋を暗財に見せた。
「これはなんだ」
「手紙?」
「恐らく手紙だろうな」
「こいつが、胴体に貼り付けられてたみたいだ」
「内容は呼んだのか?」
「そりゃ、読むさ」
「何て書いてあるんだ?」
小笠原は、白い手袋をつけて、手紙を取り出した。手紙には血がついており、字は綺麗とは言えない。汚いと言った方が、当たりかもしれない。
『光は僕に殺され、闇も僕に殺されるんだ。今、闇は僕を探しているのかもしれない。でも僕は見つからない。じゃあ、かくれんぼスタート。僕を見つけたら、闇が勝ち。』と小笠原は読み上げる。
暗財は文章の意味が分からなかった。
「どうだ」
「実に興味深い手紙じゃないか」
「ああ。そうだな」
「だが、意味が分からない」
「光は、恐らく殺された伊野達だ。闇は分からないが」
「闇は警察か?」暗財は考える。
「かもな」