Imagine
暗財は車を降りて、伊野達との待ち合わせ場所に決めた、とあるカフェに入った。店内に客の様子は見当たらない。静かだ。だが、音楽が静かに流れている。暗財は耳を澄ました。おそらく、流れているのはジョンレノンの「Imagine」だろう。ジョンレノンの優しい声が、店内に響く。
オーナーの姿も見当たらない。と疑問に思ったその時、奥のほうから40代くらいの男がフライパンを持って、歩いてきた。そしてこちらに向かって、笑顔であいさつをした。
「おお、今日も来てくれたか」男は、こちらに近づく。
「来てやったよ。相原」
相原は、暗財と大学の友人であった。たしか心理学をやっていたはずだ。とくに、成績が優秀というわけではないが、暗財よりは心が読めた。
「どうせ、伊野達に無理やり誘われたんだろ」
「よく分かったな。心理学者」
「学者じゃない。それに、こんなこと誰でも分かる」
「なぜだ」
「いつものことだからだ」相原はにやけた。「なんか頼むか?」
「いや。頼まないよ。まだ伊野達が来てない」
「分かった。伊野達が来たら呼べよ。俺は奥のほうで、新人にいろいろと教えてるから」
それから数分後、伊野達の車が窓の外で止まったのが見えた。やっと来たのかと思い、軽くため息をついた。
「おーい。暗財」と奥のほうから、相原の声が聞こえたので、奥のほうを見た。後からは車のドアが閉まる音がした。「伊野達はまだ来ないのか」
「いや。今来たみたいだ」暗財は少し声を大きくする。
それから、数分たっても伊野達は店内に姿を現さなかった。もう一度窓の外を確認する。伊野達の車はあった。
暗財は、伊野達が来るのが遅いことに疑問を持ち、外に出た。そして、車に近づいた。
そこで暗財は、あることに気づく。車のドアに少し血液がついていた。暗財は、おかしいと思い、運転席のドアを開けた。鍵はかかっていない。運転席には誰もいなかった。
そして、暗財は後部座席のドアも開けた。そこには、伊野達の頭部があった。暗財は驚きのあまり、その場でしゃがみこんだ。