問題
それから二日後、暗財は数ヶ月ぶりに相原を家に招き入れていた。相原はなぜか、暗い顔をしている。伊野達が、死んだことにまだショックを受けているのだろう、と暗財は考えた。
相原が「浅川が犯人かもしれない」と静かに喋りだしたのは、イスに座ってからのことだった。
「は?」暗財は、相原が何を根拠に言っているのかが分からないため、不思議に思った。
「あのマンションの」
「あのマンション?」
相原は重いため息をついた後に「葛木のマンションだ」と小さな声で言った。
「それがどうかしたのか?」
「そのマンションの管理人は俺の友達でさ」
「ああ」
「言ってくれたよ」
「何を」
「事件当日、女が葛木の部屋に行っていたんだ」
「女?」
「浅川かもしれない」
「なに?」暗財は驚きのあまり、大きな声を出してしまった。
「それに、管理人が言うには、女は巨大なボストンバッグを持っていたらしい」
「じゃ、そのバッグの中に伊野達の死体が?」
「いや、違う。そのとき、伊野達は女といっしょに歩いていたんだ」
「じゃあ、その後どうしたんだ」
「女と伊野達は葛木の部屋へ行き、女はそこで伊野達、葛木という順番で殺したんだ。」
「そして?」暗財はこの後の話が聞きたそうに言った。
「女は、死んだ葛木の指紋を伊野達の体につけて、伊野達をバラバラにして、それをボストンバッグにつめこんだ。そしてボストンバッグを車に運び、その車を俺の店の前に置いたんだ」相原は、長い話を一定の速さでスムーズに喋った。
「だが、どうやって葛木を殺したんだ? 葛木は首をつってた。葛木が自分で死んだようにしか思えない」
相原は深く頷いたあとに「そこが問題なんだ」と言った。