エストラゴン
両者とも既に引くに引けなくなっていて
魔族側は元々全てを滅ぼすつもりは無いつまでもエードラントが絡んでくるから辟易し
このままだとエードラントを更地しない限り終わらないと感じ、どうしたものかと構い続けていたところ、
少しづつ情報を集めて様子を見ていたエストラゴンがとうとう痺れを切らせて動いた。
「お前らいつまでチマチマやっている?
目障りだし、煩わしいし、俺はそろそろ子供達とゆっくり遊びたいから、今すぐ終わらせないならどちらも全勢力を総動員してチリひとつなく滅ぼすが良いか?」
と、それぞれの王に戦場から使いを送った。
勿論、全員無力化された後だ。
その後、二国の王が何故かエストラゴンの立ち合いの元お互い不干渉とし、戦争の利益は双方無しにした。お互い様と言う奴だ。
戦後処理も各々の国でやる様言ったらしい
こちらに迷惑をかけるなと。
余計な事したら、速攻潰すと言い置いて。
魔王は納得したが、エードラントは渋った。
バカな王はエストラゴン相手にゴネ出した。
あのままやれば勝てた筈だと言い張った。
それを聞いた魔王がウンザリして
「今、こいつの国一瞬で焼け野原にしてもよいか?」
とエストラゴンに尋ね、
エストラゴンが
「人の命は辞めてやってくれ。人のいなくなった村なら更地にしても大丈夫か?」
と、エードラントの王に尋ねたので、漸く力の差を理解したのと、相手が譲歩してくれている事を知る。
今、目の前に居るのは、一瞬で数多の命を刈る事ができる化け物で、連れている兵士だけでなく自分の命も、吹けば飛ぶ位軽い事も理解した。
真っ青になりながら
「条件を飲みます。失礼した」
と納得して、この醜い争いは終わった。
既に産まれた息子は5歳になっていた。
エストラゴンはちょくちょくどころか暇さえ有れば息子を構って構って構い倒していた。
3日開くと皆が心配する位には会いに来ていた。
仮にもハーレムだ。美女揃いだ。
そんな美女には目もくれず、息子とわんぱくな従僕見習い達を振り回して投げ飛ばしていた。物理的に。
「エストラゴン、嫁はとらないのか?」
若い時に聞いた事はあった。その時は、
「こんな熊に来る嫁は居ないよ。剣があればいいんだ!」と当時は言っていた。
「昔とは違うだろう?子供もかなり好きなな様だし?自分の子を持たないのか?」
私は無知だったのだ。
「俺は基本的にあちこちに派遣される部隊なんだ。長期滞在が当たり前だろ?今までもあちこちに行っていたぞ?
まあ、自分の子が欲しいかと言われたらまあ、欲しいかな?とは思うが、俺の仕事はいつ死んでもおかしく無いだろ?家庭なんて、まして子供なんていたら死にたくなくなっちまう。捨て身で戦えなくなるだろうな。
よく、守る者がいる方が強くなるとか言うけどな?俺は守るなら側で守りたくなっちまうんだ。だからよ、弱い嫁と子供なんて側から離れられないだろう?俺には向いてないな」
泣きたくなった。
自分の甘さに、今回、国を丸ごと守って貰った事に。エストラゴンの大魔神と呼ばれる強さは、彼の優しさや願いを踏み台にした上にある事に。自分の子は持てずとも友人の子を心底我が子の様に可愛がる優しさに。
思わず感極まって抱きついてしまった。
「何だよ、いくら顔か凄く綺麗でもヤローに抱かれるのは遠慮したいんだが?」
エストラゴンはケラケラ笑いながら涙目な俺の背中をバシバシ叩いている
「煩い、黙って国1番の色男に抱かれろ
あと、叩くな!死ぬ!」
背中はきっとあざだらけだ。