大魔神
魔族は基本的にこちらから排除したり攻撃しなければ何もしてこない。稀に膨大な力を持ち、物騒な考えの魔王が台頭すると争いになるが、その時は何故か必ず[勇者]が現れ魔王は討伐される。
魔族的には、ダメな王でも一応王だし従うしかないのでその時だけは敵になるが、基本人と一緒だ。
愚王は民衆の命を軽んじて飢えさせ苦しめる
人族も魔族もそれに差異はない。
むしろ強大な力を持ちなから愚王の時以外は自分達の土地から出ず暮らしているあたり
下手な欲に塗れた人族より常識的だ。
意識が逸れたが、
魔族に手を出して返り討ちにあった時、魔族とエードラントの戦いにナトゥーア王国の北部が巻き込まれそうになり、守る為にヴァルド国から騎士団を借り受けた。
騎士団長は、エストラゴンといい身の丈230のクマの様な大男だ。
エストラゴンは私がゴルドファブレン王国にある学園に留学していた時護衛兼親友として共に過ごした存在だった。
彼は途轍もなく強く、防衛の戦いの際
ナトゥーアの民をエードラントの民と見誤り、怒り狂った魔族の一団をたった1人で殺さず撃破し無力化した後、傷ついた魔族兵を治療し一団の頭にナトゥーアは関係無いから巻き込むなと魔王に伝えろと伝令に使った。
その後こっそり魔王から謝罪の手紙がきた。
その手紙に[大魔神]の怒りに触れたと書いてあったらしく、それ以来、エストラゴンは大魔神と呼ばれている。
エードラントは魔族に手を出し、勝てる算段をしていただけあってそれなりに強く
戦いはその後もかなり長引いた。
魔族はナトゥーアに攻めては来ないが、
何があるか分からないからと、騎士団が帰った後もエストラゴンと小隊が長らく残っていてくれた。
私とて、親友が居てくれるなら心強かったが
暇を持て余すのも何だなと、ハーレムの従者達に護身術や守る為の剣を教えて貰った。
教えて貰った剣を芸術的な剣舞に昇華した者達も居た。
強さに惹かれて騎士を目指したくなった従者も子供もいた。
エストラゴンが来て直ぐの頃に5人目の息子が産まれた。産まれたら伝えろと北に行って
大魔神と呼ばれた彼は疾風の如く産まれた我が子を見に来た。
今までも産まれていたけど遠くにいたから直ぐに祝えなかったからと、クマの様な大男が小さな我が子を宝物の様に愛でていたので
「男の子だし、鍛えてやってくれないか?」
と、迂闊にもお願いしてしまったんだ。
「良いのか?俺は厳しいぞ?」
ニコニコしながら嬉しそうにしているから
「よろしく頼む。ただ、まだ無理だ」
と伝えたら、
「とりあえず、北の戦いが収束しないと不安が残るな・・・」と言い
「3歳ごろからなら何とかなるかもな」
ちょくちょく顔見に来るわ!
と、颯爽と立ち去って行った。
長引いていた二国の争いはその後
一年半程で終わりを見せた。