第2話 勝てるか、勝てないかは関係ない
はぁー、興奮した。太陽はルンルンとリズムを刻みながら歩く。
結局太陽は本屋で1時間ほどヒーロー雑誌を漁り、結局ヒーロー雑誌を3冊買って店を後にした。
いやーそれにしても雑誌に載ってた新人ヒーローは凄かったなぁー。18歳、19歳という若さで雑誌に載るほどの活躍をするなんて憧れるなぁ。
俺も超人に生まれて、ヒーローになっていたら今頃雑誌に載れていたのだろうか。いや、それは努力次第だ。雑誌に載っていた新人ヒーローも、日々自分の能力を鍛えていたのであろう。
超人に生まれたからってみんながヒーローになる訳ではない。別の道に進む人もいるし、敵という道を外れる人もいる。
「はぁぁー、帰ったらまた雑誌読……」
後方で、(ドッッゴーン)とものすごい音が鳴り響く。それと同時に女性や男性の悲鳴が聞こえる。
「キャャーー!!敵が暴れてるわ!!」
「みんな逃げろーーー!!!」
悲鳴が鳴り響き、太陽は後ろを振り向くと1人の男が暴れていた。
「敵!?」
敵の方をよく見ると、敵は手のひらから爆発するエネルギー弾を周辺に放っている。男の周辺の建物が激しい音と共に壊れていく。
すると、太陽の方へエネルギー弾が飛んでくる!
やばい、避けきれない!太陽は目を瞑り、両腕を前に出し防ごうとした瞬間、薄い透明な青色のバリアのような物に守られる。すると目の前には肩まで伸びた綺麗な黒髪の女性がいた。
「大丈夫?怪我はない?」
「ありがとう、お陰で助かった」
「それは良かったわ、あなた常人でしょ?早く逃げなさい」
「あなたも逃げないと……」
「私は逃げないわ、奴の狙いはこのケースに入ってる物だから」
女性は自分が持っているシルバーのアタッシュケースを指さす。
なお、前方からエネルギー弾が無数に飛んでくるが、それをシールドで防いでる。
「……でもあなたはサポート系の能力だから、奴に攻撃する手段がなくないか?」
「あなた……よく分かるわね?けど一般人に怪我をさせるわけにいかない。私はここで仲間の応援が来るまで耐えるわ」
「俺……俺に何かできる事はないか?」
「無いわ、早く逃げなさい!」
そう冷たく返される。すると彼女は奴の方へ走り出す。
クソ…クソ……やっぱり、常人じゃ何も出来ないのかよ!……分かっていたけど俺は無力だ。悔しさで拳に力が入る。
周りの一般人は悲鳴をあげながら続々と逃げ出していく。
俺も逃げなくちゃ……俺が加わったところで役には立たないし、なんの力にもなれない!俺は常人で敵は超人。ただそれだけだ。
俺は無力なただの常人......
違う、違うだろ!!!俺!!、勝てる、勝てないは関係ない!俺は……俺はヒーローになってただ、目の前の困ってる人を助けたい!ただ、それだけだ.......
もう、あんな思いはしたくない……大切な人を失いたくない。
太陽は過去の辛い記憶を思い出し、走り出す。
悲鳴をあげながら逃げ出す一般人とは逆の、敵のいる方へ。
◇
くそ、奴のエネルギー弾はかなりの攻撃力ね。私のシールドがいつまで持つか。
「おい、嬢ちゃんよ……さっさとそのケース渡しな!」
そう男は言い、さっきとはレベルが違う大きさのエネルギー弾を彼女に向かって放つ!
やっぱりあいつの狙いはこのケースか。何故ケースの中身がバレた?いやそれよりやばい……流石にあの大きさは防ぎきれない。考えれば考えるほど、エネルギー弾が近づいてくる。
やばい、死んじゃ........
エネルギー弾は大きく爆発し、周囲に爆風が放たれる。
彼女はゆっくり目を開ける、しかし自身の身体を確認すると傷はついていない。
あれ、なんで私死んでない?っっっぁ
横を振り向くと頭から血を流して血が目にかかっている、さっき助けた男がいた。
まさかこの人、私を助けてこんな状態に!?常人なのに?なんで?バカなの?正気じゃない!
「何してるの!?あなた!馬鹿なの!!?常人なんでしょ!?死ぬわよ?」
彼女は驚きのあまり、怒った口調で話す。
「関係ねーよ、俺が常人だろうと、超人だろうと………目の前に困ってる人が居たら助けるのがヒーローだろ」
何を言っているの?この男は。馬鹿なのかしら。何故逃げないの。絶対に勝てないって分かってるのに。常人が超人に勝てるわけない。
「あんた!死ぬわよ!!!今すぐ逃げなさい!」
彼女は太陽にものすごい勢いで訴える。
「嫌だね、俺が今ここで逃げたら、あんた死ぬだろ……俺がもし、今ここで逃げたら、もうヒーローになる資格を失っちまう。」
太陽はケロッと笑いながら言う。
彼女は太陽の首元を掴み、真剣に問う。
「常人じゃ、ヒーローになれないの!!あなた、そんなぐらい理解してるでしょ!!常人は超人に勝てない!」
「知るか、そんなの!俺は勝てる、勝てないで人を助けるかは決めない!!」
俺が憧れたヒーロー像はそんなんじゃない。勝てるから助けるとか、勝てないから助けないとか、そんなんで助ける助けないの選択をしたくない!
俺が憧れたヒーローはそんなことをしない!俺はもう...もうあんな思いはしたくない...
伊藤太陽は走り出す、敵に向かって。
拳を強く握り。




