【離反】2 27/39
今日はロック○ンゼロ4のOSTを聴きながら投稿準備をするなど。
もちろん泣いている……っ、シエルサーン……っ、
(モガ本編は泣いてる場合じゃない。本編へGO!)
アイスコープ越しのアーチが何かを叫んだのがわかった。
次の瞬間、アーチのカラダが赤紫のプラズマに包まれる。
「やはり戦い合うつもりか」
モガは完全に理解した。叫んで見えたのは、アルガのA⇒B関数を呼び出していたから。
それだけ確認できれば、事態の把握は充分。
アイスコープ現象に背を向け、モガは駆け出した。
「オマエたちはここにいろ! まだ吹雪は晴れん。だがオレは必ず戻ってくる。下山の決行はそのときだ!」
「って、あ! おい、あんちゃ――――行っちまった」
ローの声を背中に受けながら、モガは走った。進行方向にはクレバス内部を取り巻く氷壁がそそり立っている。
貴族屋敷からオウカキャッスルに変遷した後も、氷壁の一部分は相変わらずただのカモフラージュになっていて、偽物の氷壁の向こうに自動ドアはあった。
モガが駆け抜けると自動ドアは閉まり、機械的な金属扉が元のカモフラージュに戻る。
そんな風に去っていくモガを、ローは目で追っていた。だが、視線はやがてステンドグラスのアイスコープ現象へと戻る。
「ロー、おいらたちはどうするべきなんだ!? モガ、帰って来たと思ったらまたすぐ出てっちゃったぞ!」
ローの足下からマルの狼狽が聞こえる。
その声の調子から。
固く握られた幼い手から。マルの必死さが伝わってくる。
「どうするったってなぁ……なんもしねぇのよ、コレが」
「おい! なんもしないのかよ!」
「だぁーってもよ、あんちゃんからはココにいろとの指示だしさ……なぁ?」
モガたち三人がクレバスを出発した少し後、バクサが「皆さんにおかれましては一旦、休廷です」なんていうから、おれたちゃあ待ってたんだぜ?
それが今は、こんな緊張状態だ。どいつもソワソワしてやがる……銀雪民の中でただ一人、おれっちだけを除いて、な。
「ああ、まったく。一体なにが起こってやがんだよ……――――な~んて、な……」
「なんだ? ロー、もっと大きい声で――」
「んあ……あぁ、おしっこしてぇって言ったんだ。おトイレすっから、良い子は覗いちゃダメだぜ……クククク」
銀雪民全員の視線が、変身を終えたアーチ・ブレンドアルガに集まる中。
ひっそりと。
人目を忍んで。
ローは誰の声も届かない物陰へと移動した。
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赤紫のプラズマが晴れたとき、そこにアーチはいなかった。
紅き紫電を纏いて現れたギアニックの名はアーチ・ブレンドアルガ。
モガ+アルガのA⇒Bと違い、紫炎ではなくプラズマを発生させるのは、アルガが変身者の潜在能力を増幅させる機能ゆえか。
(ということは、もしワタシがアルガ……くんと、A⇒Bしたら)
アーチが変身するさまを、オウカは肩を並べて眺めていた。
アーチ・ブレンドアルガの姿をためつすがめつ確認すると、うーんカッコイイね!
感嘆のあまりおとがいに指をあてる。満足げに何度か頷きもした。
(おおっ、マーベラスだねアーチ嬢! 逆三角のバイザーに、これまた逆三角を基調としたアーマー。どれも赤紫、そして何より……!)
「こ、コレが……アタシだっての!?」
『驚くのも無理ハないだろう。だが、これでも貴様ノすぺっくヲある程度引き出したニ過ぎん』
(何より目を引くのは鋭さだ。しなやかなカラダに備わる鋭角な装備……キミがいつも放っている矢じりのように鋭い、頼もしい……!)
『すぺっくヲ引き上げられる気分はどうだ? などと、訊くまでモないか。変身前との性能差デ、さぞかし高揚している事ダろう』
「頭ん中で声がすんのって、ムズムズするわね……コーヨーとかはわからん」
(ホワッツ!? アーチ嬢たちは今、脳内で会話を……文字通りの一心同体、ワクワクするじゃないかっ!)
『それにしても、変身者としてこれほど素質ニ富む者モ珍しい――彼奴が、モガが目ヲ掛けるだけハある』
「わわっ、髪が金っ々になっちゃってる!? ……モガとおそろいじゃんっ、ミョーなカンジっ!」
『……女。そろそろいいか。我ト共ニ戦え……、戦え』
「アンタもそればっかりね……りょーかい、頼むわよっ!」
(聞きたい、ワタシもアルガくんの言葉を聞きた……おっと危ない、お隣からプラズマが弾けてきた)
戦う前だというのに存外冷静。あるいは吞気かな? 我ながら自分の好奇心に呆れるよ――部下であり友であるバクサから、完全に敵意表明されたばかりだというのに。
(アルガくん、ぜひワタシともA⇒Bしてほしいところだが、この状況なら……うん、アーチ嬢のサポートだ――――A→B)
そうとも、我が同志バクサは本気でワタシたちに立ちふさがるつもりらしい。
冗談の一つもろくに発さない彼の事だ。あるまじき事態だが、本当に裏切りなんだろうな。
冷たい風雪のせいか、冷えた頭でヘラジカ形態を形成し、臨戦態勢に入る。
積雪に捕らわれない細長の四つ足。
大盾の如く幅広な雄角。
オウカのタキシードアーマーと同じ純白の毛に、金のまだら模様。
や、まてよ……ひょっとするとアレかい。バクサはただ単にジョークが下手なだけで――はっ。
「私の鎖とこの雪深さならば、あなたたちのために拘置所を用意する必要もなさそうですね」
「? 拘置って、アンタ何言って……」
アーチたちを捕えようと、バクサの鎖が鎧の隙間から溢れ出る。
肩から、肘から。
膝、股関節。鎧のありとあらゆる関節部が不思議な力で浮き上がり、そこから這い出る黒い鎖が、触手さながらに間合いを詰める。
「貴方方に執行猶予はありません――――С《コンスト》!」
硬い鎖によって、アーチの細い体躯が捕縛されるより先、オウカ・ヘラジカが疾駆する。
「アーチ嬢、ライドミー!」
「! 助かるっ」
右手でオウカ・ヘラジカの角を掴み、アーチ・ブレンドアルガが騎乗。彼女の背中スレスレに迫る鎖を、オウカ・ヘラジカの瞬発力で振り切った。
「バクサの奴マジでやる気なの!? ……だったら!」
角を掴んだ右手とは逆、アーチ・ブレンドアルガは左手を構えた。
「いつもアニマ狩りで使ってるのとは違う、慣れない得物だけど……けど!」
普段ならクロスボウを形成するはずの左手だが、今は太くゴツイ赤紫のロボットアームが備わっている。
巨大なバッテリーでも縫い付けられたように、腕が重い。
「モガがやってたみたいに……!」
でもその重さと大きさが、これから放つ電圧の威力を裏付けているようで頼もしい。
「Ѧ《プラズマフィスト》ッ! いっけぇぇぇええッ!」
気合いに呼応して引き金が弾けた刹那、開いた掌底から紫電の奔流。
「! やばっ、強くやりすぎたかも……っ」
巨大な電光の塊が全ての鎖を焼き切り、比べれば豆粒程度しかないバクサを容易く飲み込んだ。
「うお!? っと……なかなか反動がキツいね……!」
砲台となったオウカ・ヘラジカは四つ足で踏ん張る。凄絶な反動をやり過ごしながら、はるか遠くで炸裂するѦ《プラズマフィスト》の電光と向かい合った。
(! 吹雪が消えて、辺りに雷雲が充満している。今のアーチ嬢は、まさかペガサス・アニマの権能と同等のチカラを有しているのかい……?)
Ѧ《プラズマフィスト》は軌跡に雷雲を残し、どこまでもバクサを貫き吹き飛ばした。
そして最後に、彼方で落雷を思わせる閃光が走る。
キンと光り、衝撃と爆発音が一拍遅れて返ってきた。
(……………………さすがに、バクサとは一緒に下山できないね)
炭と焦げ跡、抉り取られた山の峰。
雷が残り香すら赦さず雪を消し去り、一瞬にして場を覆す。
そんな凄惨な光景に反して、オウカの頭はかえって冴えていた。
(ならば、次に取るべき行動は一つさ。ジャマが入らない今こそ、ペガサス・アニマを倒すとき!)
バクサの息の根を止めてから、アーチ・ブレンドアルガは一言も声を発さない。
かわりに息が荒かった。
苦しそうというより、気が動転しているようだ。
(ひょっとしたらアーチ嬢は、ギアニックに対して手を汚すのが初めてだったのかもしれない……もっとも、それが普通なんだけどね)
声をかけるべきではないと判断して、オウカ・ヘラジカは何も言わずに駆けだした。背中に放心のアーチを乗せたまま。
爆心地にいたバクサがどうなったのか、今は考えるべきではない。
進行方向にはペガサス・アニマの住処があるはず。まずはそちらに専念すべきだ。
バクサの裏切りが判明したか今となっては、その情報すら正しいとは言い切れないが。
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