【童話】6 16/39
ロックマンシリーズがすこなんや!!!!!!!!!!!!!!!(ロクゼロのサントラを聞きながら投稿作業をするなど)
「モガくん、アーチ嬢を入れて九十二人……これでよし」
「避難完了ですね」
総勢九十余人の銀雪民、それにモガとアーチが資料室に集結する。
オウカとバクサの避難誘導により現在、貴族屋敷には人っ子ひとりいないもぬけの殻状態らしい。
無人となった上階で、一体何が起こっているのか。
「コホン、ここに集まってもらったからには、地表で何が起こってるか。言わなくても皆もう想像ついてるよね?」
「おう! すっごいおっきいアニマがお引っ越ししてるんだぞ! だよな!?」
マルの言うおっきいアニマとは、言わずもがなペガサス・アニマだと想像がつく。傘下のイエティ・アニマと、その下位種のユキザル・アニマも追従して移動しているに違いない。
よもやこんなタイミングで予定外の動きに遭遇するとは思わなかった。まさにこれから作戦準備に入る、という時期だったのだ。
「皆にはしばらく地下階で過ごしてもらう。窮屈な思いが募るだろうけど、どうか協力してほしい」
銀雪民を見渡して話すオウカに反発する者もいない。むしろ銀雪民は慣れっこな雰囲気すら漂わせている。
「『夫婦』アニマの移動、といったか。マルが事情をわかってるところを見るに、以前にも同じことがあったみたいだが……」
傍らで控えるバクサに、モガは囁きで訊いた。
「ええ、そうです。『夫婦』アニマは定期的に生息地を移します。山脈の稜線に沿って歩み、件の天候を操る権能で周囲の環境を整えながら」
避難の警報が鳴る間中、避難の遅れた銀雪民を捜索していたため、バクサは疲労の色が濃い。
バクサは遠隔操作した鎖を屋敷のより隅々まで広げて、なおかつ感知レベルを高めていた。
有り体に言えば、自身の目耳を屋敷中に生やしていたのだ。
尋常ならざる集中状態だったことは、バクサから滲み出る疲労から見て取れる――――たしかに、下山ルート検索だけでこうなってしまうのであれば、ユキザル・アニマの対処まで同時にやらせるのは酷だな。
「環境を整えながら移動、か。つまり自身の都合に合わせて、ミドリの山々を雪のモビルゲレンデへと力づくで変え、住処にしているのか」
「ウッソ、じゃあ吹雪を運びながら移動してるワケ? それも山から山へ。どんだけ……ありえないわ……」
今後の過ごし方を全体に周知し終えたオウカが、モガたちのところへ歩み寄る。オウカはオウカで緊張から解放された安堵を表情に刻んでいた。
「モガくんたちも聞いていたね。ちょっと予定外だけど、作戦自体が頓挫するほどじゃあない。安心してくれたまえ」
「一週間後に決行、というのも変わりないか?」
「や、それはお上の引っ越し作業次第かな。一週間より長く続くようなら、さらに次の満月まで待たないとね」
「一ヶ月も延期して、出産のスキを逃しはしないのか」
「おそらく平気さ。生き物は基本、大型になるほど長寿にもなる。ペガサス・アニマからすれば、一週間でも一ヶ月でも大して変わらないだろう」
ペガサス・アニマを放っておくのは仕方ないとして、オウカには別の懸念がある。
「にしても……討伐決行のタイミングを掴めない以上、銀雪民への作戦周知は待った方が良さそうだ。不明瞭な政策を伝えたところで、民を混乱させかねないし……う~む」
考え込む素振りはほんの一瞬で、オウカはささっと最適解を告げた。
「今は何もしない。するべきではない。様子見だ」
キミたちも色々戸惑っているだろうし、作戦の事は置いといて一息つくといい。当のオウカにそう諭されては、モガたちも従うしかあるまい。
「ペガサス・アニマがスキを見せない以上、オレたちがジタバタしても仕方ない、か。アーチ」
「んー?」
「この期間中に、オレに文字を教えてくれ」
差し当たって教わる単語は『タイトル』、『著者』、『ジエ』の三つにした。
アーチにオウカからのテキストチップを見せてもらいながら、探している童話それぞれの題名も覚えていく。
覚えるといっても全て見知らぬ文字なので、一文字一文字の形を頭に入れるところから始まる。
「よし、もういいぞ」
「はっや。うそくさ」
「ラーニングした。途中で忘れるシンパイもない」
探している題名は『片角の鮮血』、『センガ、メタルエイジの影』、『イカズチのめがみさま』……他多数。
検索パネルを手に取ってから気付く。オウカたちの話によると、題名で検索してもなぜか見つからないんだったか。
「ふむ、検索とな。こうか?」
試しに文字を打ち込むと、検索にヒットした抽斗が近未来的な軌跡を残してモガの目の前まで飛来してくる。
抽斗の目録通りなら、中に『片角の鮮血』などモガシリーズを題材としたの童話が格納されているはずだが、果たして。
「シロップがぶ飲みにいちゃん」
宙に制止した抽斗を手に取ろうとした時だった。足元から雪ん子ギアニックに呼ばれる。
「その抽斗はおいらたちが何度も探したやつだぞ」
おいおいしっかりしろよなとでも言いたげな、呆れ顔をマルが立っていた。
「ああ……いや、試しに動かしていただけだ、気にするな」
「ホントかよぅ? ホントはよくわかってないんだろ? にいちゃんは怖っぽく見えて実は世話が焼ける。ってアーチから聞いてるんだぞ!」
「まぁまぁマル坊よ、イジワルはその辺にしとけって。その抽斗引いて空振りするなんて、検索初心者にゃお馴染みじゃねぇか?」
モガの背後から声。
バクサほどは低くない、男の声だった。口調にはモガを見かねた親切心と、隠し切れない野性味がある。
「うっす。どーも」
「オマエは?」
「んー、と……ローだ。無法者のロー、狼の狼だ」
ジエの手がかりを探してくれていた銀雪民の中に、発作と見紛う苦悶の顔で慣れない活字と向き合うホッキョクオオカミ型のギアニックがいたのを思い出した。
目の前にいるコワモテの男がそうだ。彫りの深いオオカミのフェイスに、派手な赤のスカーフを巻いた右肩。
「ああ、コレ? この腕はぶっちゃけ義手なんだな、コレが。あんましジロジ見んなって、照れっから」
白ベースのホッキョクオオカミ型。右肩のスカーフは義手の接合部を隠しているのだろう。
粗野な印象があり、自分の事を無法者と称していたのも頷ける。
「お宅の弟のセンガから貰ったんだ、この義手。有り合わせだーっつって、サイズだけピッタリでロクに動かねぇけど勘弁してなー、なんつって。押し売られたんだわ、コレが」
「有り合わせの義手? なぜそんなモノを有り合わせられるんだ、アイツは……」
平原でセンガと別れる間際、仲間に鍛冶屋がいると言っていた。ローの義手はその鍛冶屋由来だったりするのだろうか。
「動きゃしねぇけど気に入ってんだ。おかげさまでボディが傾かなくなった」
「フッ、なによりだな」
「おい、世間話じゃなくて検索しろよぉ! もしくはおいらにもわかる話にしてくれよなっ!」
「うひーマル坊怖ぇ。しゃーねぇから仕事に戻るわ。検索の仕方なんだけどよぉ」
役割分担があんだ、役割分担。そう言ってローは自分のメモ書きを寄越してきた。
「ここの資料室にゃ二兆の蔵書、四〇億の抽斗があってだな……えー、名前」
「モガだ」
「そう、モガの捜索範囲は、こう」
ローの思念に反応して、テキストチップの数字が書き換わっていく。
「抽斗番号・三六億から抽斗番号・三六億四五〇〇万まで。おれっちの持ち場半分譲ってやるよ」
言われた通りの番号で検索し、中身を検閲する。単純な確認作業だが、モガはこの工程をあと四五〇〇万回繰り返さなければならないわけだ。
「コレは……、骨が折れるな」
「一応断っておくが、騙してないからな。ここにいるみんなお前さんのため、必死でガールフレンドの残り香、探してるぜ」
「ああ……カンシャする」
しばらく地下での生活を余儀なくされるだろう。
猶予があとどれほどあるのかわからないが、時が満ちるまでに見つけ出してやる。
ここにいる全員が協力してしてくれるなら、きっとジエにも届くはずだ。
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