【≠《ディファインブレイク》】3 24/32
予約投稿の時点では、(読者様はここまでついて来てくれてるだろうか)と内心ドッキドキです。
だから作品について来てくれてるそこのYou!にはとても感謝しているのです。
Thank you!
「見せてやれ――――アーチ!」
「ビリビリ矢……ふッ!!」
「無駄無駄無駄むだ……んや?」
「どこを見ている!」
センガの正面にモガ、遥か背後にはアーチ。
アーチのビリビリ矢に奇襲され、センガが挟撃の図に嵌まる。
その、刹那!
「お願い……モガを助けて、アタシの矢! はぁぁあぁああっ!!」
「チカラを合わせろ――――※《クロスオーバー》ァアッ!!」
アーチの・と渾身の✕が炸裂する!
(予感はあった。アーチの電撃矢を初めて目にしたあの時から)
イノシシ・アニマが事切れた時点ではまだ点と点だった、モガの胸中の未知の回路。
回路と心は時を経て繋がり、二人で編み出した新しい関数、※《クロスオーバー》。
「ぐぎぃやぁあぁああがガガGA、俺っ様はぁ……イタいのは好きじゃねェえぇェエエンだァぁぁあ!!!!」
集中砲火の絶大な威力を前にして、センガの手からバリアブルスピアが落ちる。
「ぐぉォォオおおおグォぐぉぐグォォオおおお!!!!」
「もっとだアーチ、撃って撃って撃ちまくれ!」
「アンタこそっ。疲れて手ぇ止めたりしたら承知しないから!」
二人が止まらない限り。
センガが息の根を止めない限り。
✕と・は止まらない。
「うおぉおおおおッ!」
「ふッ! やぁあああっ!」
「あががが、がぁっ。つ、ツイ……!」
永遠に続くかと思われたモガたちの必殺技を振り切り、蛇の如きしぶとさでセンガは反撃に出る。
「○《ツイスト》ぉ……!」
「! 気を付けろアーチ!」
「、うんっ」
センガは関数呼び出しによって強制的にボディを駆動。ボディのダメージに構わない力いっぱいの○で※《クロスオーバー》を振り切った。
「クロスオーバーだぁ? イテェじゃねェかヴォイ!! 俺様にも癒し系炎ツケてくれよアニキぃ!!!! ケチケチしないでサァ、お願いおネガいおねが~い♡」
「しぶといヤツめ。まだ来るか」
晴天の空にあったはずの月も星も、重たい黒雲がひた隠す。
両者が向かい合う平原に小雨が降り出した。
裏の森でモガと斬り合い、平原で再度まみえ、天候が変わるほどの長期戦でも、センガはただの一度も地に膝を付けていない。
(※《クロスオーバー》の乱撃の中、決定的なダメージを避け続けていたが……まだ立っていられるのか、アイツは!?)
ホノオがいつ使えなくなるか知れないモガにとって、戦いが長引いて良い事は一つもない。
周到なセンガの事だ、どこか遠くのマキナに第二の進軍を始めさせている可能性もある。
傷を癒し、モガに力を与える炎が、この雨で消えるかもしれない。
次で仕留めよう、と胸中で呟いた。
「いいよなァそのホノオよォ。俺様のボディはボロボロだってのによォ。ママンの寵愛ってやつか?」
「チョウアイ。ジエは誰にでもビョウドウに接していたハズだが?」
「御名答! テメェだけのモンじゃァねェ。コッチにもあるんだわ、切り札……♡」
周囲の闇を吸い込むように、センガのアームブレードがより深い黒に染まっていく。
「見せてやるよ。我が救世のために遣わされた、メタルエイジを導く神の御業をなァ!!!!
影に潜みて 蛇をも手繰る
うずまく理性 喰らわせて救世
慈愛と狂気で 主人公TONARU」
センガはさらなる闇のテクノロジーをまとい、全身を禍々しく固めていく。
それに対し、背中で燃える浅紅の炎は雨を受けて煙り出していた。
「マズイな。アーチ、オマエは宿に戻れ。ホノオはジキに消える」
炎の焦熱に耐えた雨粒を、マントは次々に吸い込んでいく。
まだ火は続いているものの、モガの背を叩く雨粒は数を増していった。いずれは完全に湿り、使い物にならなくなるだろう。
雨を察してアーチが撤退する。決着は平原に残った両者に委ねられた。
「俺様ぁやってやるZEアニキぃ。あまねく愚かなメタルエイジに、お天道サンでも払えねぇ救世の闇をォ!」
「残り火でジュウブンだ……オマエ一人を照らし出すには、な」
「い救世い救世い救世ェえ!!」
モガはアームブレードを左手、人の右手に奪い返したバリアブルスピアを構える。
(ヤツの手札にない、槍によるリーチの優位性。これを活かさない手はない)
モガが槍の間合いに踏み込む。
その寸前、センガは未知の関数を呼びだした。
「×%《バイパー》ァ……YOラァ!」
「なっ!?」
まだ剣の間合いではないはず。
一秒後、その見立ては誤りだと気づかされる。
黒いアームブレードが×%のような蛇腹剣に形を変えたのだ。
モガが状況把握する一瞬の隙に、毒蛇の牙が眼前に迫った。
(このムチのようなカタチ。≒《ニアライズ》と≡《スケーライズ》の合わせ技か……オレには真似出来んゲイトウだな)
咄嗟に背を折るコンパクトな対捌きで牙を躱す。
バックステップで間合いを取るような大雑把は回避行動はしない。というよりするべきではない。
「細切れにすらァあなァぁぁあ!!」
無軌道で絶え間ない刃の嵐。その中へ一歩、踏み込む。
通り過ぎた刃の動きから次の軌道を予測し、小さくステップ。足を狙った刃をやり過ごす。
決して後退はしなかった。
消えかかった浅紅の炎を考慮すれば、モガにはもう猶予がない。
退いて長引かせる戦い方は、時間が許さなかった。
「まだるっこいZEェ~……! /《スラッシュ》ぁあっ!」
「バカな。この形態からだと……っ」
振り回す蛇腹剣を重く鋭いアームブレードに戻し、ムチ特有の遠心力をそのままに亜光速の/を繰り出した。
躱しきれず、モガの頬を掠める。
(ダメージにはならない。だが)
辛うじて燻る浅紅の炎が、頬の掠り傷を燃やし修正する。
この炎も雨に打たれていずれ鎮火するだろう。
(ともすれば、やるなら今しかない……)
蛇腹剣に阻まれていた間合いを一足で詰める。次の瞬間にはモガの刃が届く距離だ。
「/《スラッシュ》!」
「見え見えだZE」
黒いアームブレードで受け太刀されるも、剣一本のセンガに対してモガにはバリアブルスピアがある。
一つしかないセンガの武装をアームブレードで押さえつけてしまえば、丸腰も同然だった。
「・《プッシュ》!」
「それもさっき見たっての。再放送か、YO!」
「――――!」
モガの回路に、ピキと悪寒が走る。
隙を晒したセンガへ、・を放った森での戦い。詰めの甘い自分の姿が脳裏をよぎった。
センガは空いた右手で虚空を手繰る。一息あとには、糸に吊ったヨーヨーの軌道でモガの背にクナイが飛来する。
「オマエこそさっき森で見たワザだな。見切っているぞ」
アームブレード同士の鍔迫り合いに持ち込み、センガと立ち位置を入れ替える。
入れ替えたセンガのボディを盾にする事で急襲のクナイから身を守った。
「へ~、すっげ。っていやいや、アニキぃが反応デキたのって、俺様が再放送とか仄めかしたからじゃね?」
「敵の手の内をすっぱ抜き、ジョウホウの利を活かした戦局作りはオマエの得意分野。だがオマエだけの戦術ではない……ということだっ、÷《ディバイド》!」
黒いアームブレードごと÷せんと、競り合いの最中に放つ÷《ディバイド》。
「ケケケ、÷《ディバイド》」
しかし、またも同等の切断力がぶつかり、弾き合う。衝撃で吹き飛び、両者に間合いが生まれた。
センガは先ほどからずっと、こちらの動きに合わせて同じ関数を繰り出してくる。
「:《バッシュ》!」
「アッブネ、あぶね……なンつって。ヒョヒョイのヒョイ、からの~……〓>>《ヒドゥンスレッド》ォ!!」
センガの何も掴まない右手が、またもや虚空を手繰った。
不可思議な右手の動きに、重力に逆らう一〇本のクナイが応える。
クナイは円陣を成し、センガを守るようにぐるりと囲った。
「クナイそのものではなく、糸を操作する関数か。あらためて観察すれば、タネがよく見える」
「おっ、そうだな。潜入に持って来い、どんな鍵穴にもベストフィットな形状記憶マスターキーを魔改造したんだよアニキぃ。でも電子ロック化のせいでアナログな相棒は産廃になっちったァ、ほんとクソッたれ喰らえェ!!!!」
不可思議な力だと思っていたものの正体は、〓の>>。まさにヒドゥンスレッド。
十のクナイがおよそ予測不能な軌道でモガの周囲を飛び交う。
「へっへ~どうよ~。イカすだろ~。タネ暴いても攻め込めないだろ~。俺様自力で編み出したワザなんだー!!! ホメてホメてェ!!!」
「口が減らないな。だがたしかに……ジマンするに値するワザだ」
「まじ、ゑ、ホント!? うおおおおおおお神傭兵からのいいね♡きちゃあぁぁああ~~~」
「口が減らないな……!」
モガのアームブレードは黒いアームブレードに阻まれ、余った手のバリアブルスピアで隙を突こうにも遊撃のクナイが脇を固める。
(カウンターを狙う布陣か。オレの手の内をカンゼンに掌握しているからこそのゲイトウだな)
モガは森で槍を使い、平原ではアーチがアームブレードを振るっていた。その様子は、センガのカメラアイにもしっかりと収められているはず。
だからこそ、一万年前と変わらないモガの関数はことごとく読み切られ、どうしたって決め手に欠ける。
(まるで……後出しのジャンケンゲームだ。コイツは昔からズルばかりだった)
余裕の表情を浮かべ、ゆるり悠然と構えるセンガ。彼はモガの攻撃のすべてを、後出しで対応できる。
ヘラヘラと隙を見せているようでその実、センガはわざと隙を作っている。
敵を誘い殺す構え。
斬り返す機会を伺っている。
攻め込めばセンガの思う壺。
後出し出来るジャンケンならば当然、先に手を出した方が負ける。
「決める」
先に動きを見せたのは、モガ。
一歩、一歩と間合いを詰める。
「仕留める」
土を踏む度にザリ、ザリと地面の擦れる音が鳴る。
「オレならばやる」
モガは自分の力強い足音を聞いた。力強く土を踏みしめる感触を意識すると、闘志が猛っていく。
「そうだろう、ジエ。オマエに作られたヨウヘイたるオレは、何者にも挫かれはしない」
「×%《バイパー》ァアー!!」
「この一手だ!」
迎え撃つ構えのセンガに、モガは/《スラッシュ》の動作で剣戟を仕掛けた。
「また/カ、俺様の勝ちだな。なンで負けたか、明日まで考える間もなくここで死ねっ! アニキぃいいイイイ!!」
逆境を覆せ――。
「――\!」
「ほげェ!?!?」
亜光速を実現するために/にのみ振り下ろす/《スラッシュ》とは逆。
センガにとって見え透いた/《スラッシュ》の予備動作、しかし肘のスナップを左右逆に利かせて繰り出す意表を突く斬撃。
/《スラッシュ》の軌道は文字通り、右上から左下。その固定概念を切り伏せる。
「軌道を読み違えた。この俺様が???? クソがぁぁああ、〓>>《ヒドゥンスレッド》!」
「近づかれればクナイとは。オマエこそ芸がないな」
「うるせぇ~~~~~~!」
「さっきまでのオレと同じだな、センガ!」
「知らねぇ~~~~~~!!!!」
\を阻もうと、クナイがモガを襲う。ただし、一拍遅れて。
センガは堪らず後退し、槍の届かない中距離からクナイを操りモガを相手取る。
「クソがッ、分からねェ……ジョウホウに無ェから予測もできねェ!! ママンにデータキャラとして造られ、認めてもらったこの俺様に……不可能なンざあっちゃならねェのに……っ!!」
一〇本のクナイが突き刺さった! モガではなく、地面に。
同時に、モガのアームブレードがピタリと虚空に釘付けとなった。
「へっ、へへンだ。やったったZE☆ ご自慢のアームブレードさえ封じりゃあ……!」
「ふむ、やるな」
モガのカメラは糸を捉えられないが、どうやら操り糸そのものがアームブレードを絡みとっているらしい。土に深々と刺さったクナイがアームブレードをピタリと釘付けにし、決して解放してはくれない。
「だが時には、こういう一手もある」
「ンだアニキぃ? この期に及んで講釈なんZAぁ聞きたくぁ……。ヤベ」
アームブレードを左腕へと換装する。力を持たないただの左腕へと戻す事で、刃に掛かった糸の拘束を無力化する。
土に深く刺さったクナイは簡単には抜けず、使い物にならない。
これでセンガの手札は、正真正銘ダークアームブレードのみとなる。
「やってしまいました。関数以外はノーマークでした。そんな風に出し抜かれるとはユメユメ思ってもいませんでした」
狼狽えるセンガへと真っ直ぐに駆け出す。
「さぁ勝負だ、センガ!」
突っ込むモガの背後からクナイが迫る気配がする。
モガにとって、そんな場面は再放送どころか、もう三度目。
「ジエから教わらなかったか?」
「えぇっと……すいません。何がですか?」
「三度目の正直、という言葉を!」
「うるせぇ~~~~~~! 知らねぇ~~~~~~~! 俺様に分からない話はするなぁぁぁああ!!!!」
間合いを詰める勢いのまま体を捻って宙返り、クナイを避ける。
両の掌でスピアを握る。
センガの頭上へ逃げ込みながら刺突を放つ。
「∵《アクロバットラピッド》!」
「ぐ、が、っはぁあ"」
天地も逆さなうちに三度、槍を放った。
変幻自在の名に相応しい自由自在な連撃が、センガを喘がせる。
アクロバットから、センガと背中合わせに着地する。その着地の間際、左腕がアームブレードの形態を取り戻した。
「これで最後だ……センガ!」
「終わるワケねェだろがィ! 俺様たちの救世はこれからだ!!!!」
振り向き様に二人、ほぼ同時に関数を呼び出した。
「=《オーバーラップ》!」
ほぼ同時だが、一方の動き出しが僅かに遅い。
その一手の差が勝敗を決した。
(後出しのジャンケンゲームか。我ながらよく言ったものだ)
出遅れたわけではなかった。
後出しで勝負を制したのは――――モガ。
「≠《ディファインブレイク》ッ!!」
(評価・感想 いつでもWelcome!)




