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【≠《ディファインブレイク》】2 23/32

(評価・感想お待ちしております)

 いつからか空模様は変わり果て、分厚い雲が月を隠すようになる。

 月も潜むる混迷の夜にѦ《プラズマフィスト》が迸った。


 倒れ伏すアーチに、黒いアームブレードをもたげるセンガ。巨悪の背中をѦ《プラズマフィスト》が貫き崩した、かに見えた。


「うおっ、まぶしっ……くても、ダークアームブレードォ!」


 Ѧ《プラズマフィスト》の強い光が仇となり気取られた。センガは黒いアームブレード、ダークアームブレードを一振りし、奇襲のѦ《プラズマフィスト》を退ける。


「チッ。一撃で獲れるほどアマくないか」

「ヒーロー様は遅れてやって来る……ってか? 俺様とヤろうってのか、アニキぃ!?」

「アニだと? オレにオトウトはいない。キサマのような外道のオトウトはな」

「ほ~ン。小ジャレたレスするようになったじゃねェか!?」


 そういうセンガは、随分禍々しく変わったものだった。


 モガのボディをベースに、赤地と黒地は影色と闇色に染められている。


 機械然とした左半身には冷えた黒鎧(こくがい)とヘッドギア、闇を爛々(らんらん)と詰め込んだダークアームブレードが収まっている。


 人間を模した右半身は、他者を寄せ付けない雰囲気を放つ。掌は触れることを拒絶するような黒、顔パーツはモガと同じく精悍だが、顔つきがどこまでも残忍。

 ギアニックの道を外れた理想と狂気が、忠実に具現化されていた。


「宿も燃えてテメェも燃えて、な~ンか強くてコンティニューしちゃったカンジか? デモそんなの関係ェねェ! イキりたきゃ相手を選ばねェとダメだってママンに教わンなかったのかァ。オラ立て女ぁ!」

「モガ……ぐあぁっ!」


 苦しむアーチに構わず、白髪を握って彼女を雑に掴み起こす。

 センガはアーチをを人質にする構えを取った。


「助けに来たのに残念だったなアニキぃ。女は虫の息だ、あのガキもソコらへンに棄てた! ミッション失敗だな!? ゲーム☆オーバーぁあアァあ!!!!」

「撃ってモガ、センガを殺して。アタシなんかに構わないで!」


 目の前にセンガと、捕らわれのアーチ。アーチはダークアームブレードを首に突き添えられていて、自力で抜け出すのは難しいだろう。

 さらに二人から離れた場所に、ロクの小さな身体が平原にポツンと横たえられているのが見える。


 手足がだらんと垂れ下がっていた。腹の刺し傷が酷く深い。

 一目で致命傷だと分かった。


 惨すぎる……!


「道理でキサマが楽しそうにするわけだ、不愉快だ……応えよッ、我が焦熱ッ!」


 センガは「絶望を突きつけてやった」とでも思っているんだろうか。

 その手前勝手、すぐに改めさせてやる。


「好き放題出来るのもここまでだ、センガッ!」


 倒れているロクへ、浅紅に輝く一粒の火の粉を飛来させる。宿民と同じように、死をも回復させられるはずだ。


「何してんだァニキぃ?」

「モガ。アタシの腕でコイツを殺して……アタシと一緒に」

「アーチ……分かっている」

「躊躇わないで、早く。……お願いだから!」


 モガは満身創痍のアーチにも火の粉を飛ばした。

 アーチは機能停止こそしていないが損傷が多い。

 きっとボディは尋常でない高熱を帯びているはず。


 センガに死なない程度に嬲られたのか。だとしたら停止する以上に苦痛だったはずだ。


 今、修復してやる。


「おっと、あぶねー。おいアニキぃ! イマ女に変なモンぶっかけようとしたろ!? この期に及んで下手なマネすンじゃあねェ!!」

「火の粉には触れさせないか。カンがいい」


 アーチがセンガの手中にある状況では、彼女の修復は不可能か。

 ロクの方で火柱が上がる。宿民たちと同じ、暖かい浅紅の塔がロクの命を呼び戻す。


(これでもう、ロクは大丈夫だ。あとは……)


「ロク……そんなぁ、いやぁーーーっ!!!」

「ヴォイ女ぁ!! ンなアバれるようなら生足ちょんぱすっぞコラァ!! アニキも動くんじゃねェ、テメェの好きピ殺しちゃうYO~?」

「アーチ、手を伸ばせ」

「アタシはもういいからっ。アタシは無視して、センガを!」


 ロクが燃え上がるショックで半狂乱に陥るアーチ。今の彼女にはモガの言葉が届かない。


「聞けアーチ。とにかく手を伸ばしてくれ!」

「センガぁ、アンタなんか地獄に引きずり落してやる……みんなを守れなかったアタシもろとも、死ねぇ!」


 センガの拘束に抗おうともがく。もがくアーチの腕が、モガに都合が良い位置に伸ばされていた。


「アーチ……くっ。少し我慢しろ」

「女の腕ウザイ。もーちょんぱしていいっすか。唸れェ! 俺様のダークアーム……」

「遅いっ、Å《リーダブルボルト》!」


 ダークアームブレードに防がれた、ただのѦ《プラズマフィスト》とは違う。伸びたアーチの腕を避雷針代わりにした雷撃。


「きゃあっ!」

「どわぁぁああがあがあががGAGA!!」


 雷が避雷針に(必中)するようにに、Ѧ《プラズマフィスト》はアーチの腕に直撃した。アーチのボディを伝って、センガのボディに高電圧がかかる。


 好機が来た。モガのタックルが悶えるセンガを突き飛ばす。


「ホノオよ。我が意思に従い、アーチを癒せ!」


 電圧に耐性があるとはいえ、元々ダメージが深刻だったアーチはその場にくずおれる。

 モガは彼女のボディをマントで包み込んだ。


「これ、ロクと同じ火……? それに宿も、ピンクに燃えてて……モガ、これは?」


 未知の炎を前にしても、アーチは抵抗を示さなかった。燃やされる恐れよりも、ただモガを信じていた。


「安心しろ、ケガは治る。宿の皆も無事だ。ロクもジキに目を覚ますだろう」

「モガ……、ありがとう。なんていうか、とっても……あったかい、かな」

「当然だ。『ナカヨシ』だからな」

「……それだけ?」

「? 何が言いたい」


 浅紅の炎に包まれた部分が、みるみるうちに元通りになる。

 蹴られて青く腫れた人肌は均一な色味と滑らかさを取り戻し、異常な高温も次第に落ち着いていく。


「仲良いだけでこんな事が出来るようになんの、アンタって?」

「さぁな。だが出来るものなのだろう。この場面でダレも救えないようでは、ジエがオレを造った意味がない」


 集中的に炎を浴びたおかげか、アーチはあっという間に快復した。


「ジエって……?」

「いつか、オレを造った本人に訊いてみようと思う。だから――――」


 アーチに接続されている自分の左腕をそっと取り外すと、自分の左肘へ()げ替えた。

 帰ってきた左腕の動作確認をする……必要はなかった。浅紅の炎がボディのパフォーマンスを最大に引き上げている。


 この分なら、もう一度センガとも戦える。


「だから、今はまだ倒れるわけにはいかない。マキナを斬り、センガを斬る。平和とは程遠い燃え盛る覇道だが、オレは征かねばならん。ジエの元へ帰るまで止まれはしない」


 炎からアーチを解放して立ち上がる。

 見据える先に黒い自分自身、センガが悠然と佇んでいた。


「おっと、イチャコラは終わりましたか?」


 Å《リーダブルボルト》の痺れを振り切り、センガはこちらを睥睨(へいげい)している。

 惨劇の権化を断ち切らねば、宿に明日は来ない。


「ビリビリ矢、結構効いてたわよね」

「ン。Å《リーダブルボルト》だな。効果はあった」

「じゃ、アタシも戦力ってことで。もし死んだら炎のやつヨロシク」

「な……おい」


 何でもない風に言いのけ、すくっと肩を並べてくる。

 一万年以前も戦場では一人だったモガに、初めての仲間が頼もしい。


「キケン過ぎる。ロクを連れて宿に戻っていろ」

「炎を浴びせてくれればいいんじゃん?」

「そう何度も治せるとは限らん。ブラックボックスなシロモノなんだ、コレは」

「ふーん。案外ケチくさいわね」

「ホノオに言え。…………オレに言っていないだろうな?」

「イチャコラは終わりましたか!?!?!?!?!??!!」


 会話は突如として終わった。


 センガは容赦なく距離を詰めて来る。もはや話せる猶予はない、次の瞬間には刃が踊り迫る。


「行けアーチ、ロクを宿へ運べ!」


 受け太刀する緑の刃から、黒い刃の途方もない破壊力を伝わってくる。

 モガをコピーしただけあって、ダークアームブレードVSアームブレードは互角だった。


「りょーかいっ。すぐに戻るからっ!」

「あくまで手伝うつもりか……まったく、仕方ない。オマエのハンダンに任せる」

「ふふ。アタシの事、だんだんわかってきたじゃない?」


 センガと鍔迫り合いながら、モガは横目でアーチを見送る。

 センガに邪魔立てされることなく、彼女はロクを抱えて宿の中へ消えていった。


「そんなに女が心配かYO。熱っぽい視線だねェ、俺様までトキメいチャいそ♡ 寝取ってやろかオラァァン!?」

「戯言はもうたくさんだ。/《スラッシュ》!」

「遅っそ。/《スラッシュ》」

「! バカな」


 ダークアームブレードが、モガと同等の剣速で()く。


「この強さ、ただの≒《ニアライズ》ではないな」

「≒《ニアライズ》が変装ってソレ一万年前のハナシだから。アニキの強さごとコピーしたいっつったダルォオン!?」

「コピー。厄介だな。さっきのハナシ、新キノウとやらに限ってウソではなかったとは。÷《ディバイド》!」

「へっへ~、÷《ディバイド》」


 ÷(一刀両断)の刃がかち合った。センガは後手にも関わらず、モガの太刀筋を完璧に掴んでくる。


「アニキが来る前ェ、アーチねぇがマキナ相手に散々見せつけてくれちゃってサァ……おかげさまで手の内は把握済みってワケYO」


 余裕の笑みを溢し剣を叩き込むセンガ。モガは躊躇いがちに戦った森の時とは違う理由で防戦を強いられる。


「だとしても負けん。むしろ、オマエはすでに気づいているんじゃないのか?」

「アァン? 何にサァね?」

「オレのチカラを扱いきれずに敗北するミライに、だ。慣れない得物は手に余るだろう?」


 正直に白状すると、このセンガは強い。モガに虚勢を張らせる程度には、強い。

 モガのボディをコピーした以外にも、センガなりの強さの理由があるかもしれない。

 二度三度と、お互いのアームブレードがせめぎ合う。


「ほざけェ。一万年前とナンも変わってねェ野郎がァ!」

「フッ、たしかにな。オレ自身、進歩したなどと思ってはいない」

「ソーだろソダろォ。・《プッシュ》ぅ!」


 左腕でダークアームブレードを振るいながら、空いた右手がバリアブルスピアを操る。


「≒《ニアライズ》、からのぉ~……:《バッシュ》ぅー」

「! くっ、コレは」


 ニュッと(枝分かれ)したバリアブルスピアの穂先が、モガの回避先を刺す。

 変装という形で自身にかけてきた(形状変化)を、バリアブルスピアに反映したのだ。


「≒《ニアライズ》、≒《ニアライズ》!

 ≒《ニアライズ》≒《ニアライズ》≒《ニアライズ》ぅう~~~☆」


 蛇の如き(波打ち)でモガのアームブレードをすり抜け、(三つ又)の刃で競り合いを制し、時には槍を()に作り変える。


「ぐ、……まだだ。センガ!」


 夢幻の狂槍に脇腹を裂かれ、モガは喘ぐ。


 センガの攻め手は無限で多彩だった。間合いや緩急を突き詰めたモガの槍術とは、異なる所以で変幻自在(バリアブル)


「オマケの≒《ニアライズ》! ンで∴《ラッシュ》よォ!」

「……っ!!」


 モガが意識せずとも、浅紅の炎がひとりでにダメージを焼いていく。


(このホノオのおかげで、決定的な一撃をもらわない限り致死はない。無論、ユダン出来ないが)


 (引っ切り無し)に襲う槍を最小限の挙動で躱す。マントの効果時間を知れない以上、炎に頼り切りにはなれない。


「チッ、=《オーバーラップ》ッ!」

「おっといけねェ。=《オーバーラップ》。∴《ラッシュ》」

「っツ……ぐぅ、ダメージが」

「チョットちょっと~ヤラレながらで構わないので見てくれヨぃアニキぃ。すげぇんだよ、このカラダは」


 センガの操る黒い凶刃と緑の電光に、モガの命はジリジリと削られる。


「アニキの馬鹿チート無双と俺様の情報処理。最強の二つが揃いやぁ見てからでも反確ヨユー‼ マジ世話ねェわ……てことで、○《ツイスト》ぉ!」

「くっ、このままでは……ン。あれは……!」


 ダークアームブレードが怒涛の(回転切り)を放つ。


「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄!! オラオラオラオラオラオラオラ、オラァァン!!!!」


 横縦斜め、下から上、(いびつ)な球が不規則に跳ねるような、予測不可能な旋回攻撃がモガを襲う。


「ようやくか……」


 モガは出鱈目な○《ツイスト》を対処しながら、一方的な戦局に逆転の目を見つけ出す。

 一瞬の雷ほどに僅かな、しかし黒雲を裂く雷霆(らいてい)のように頼もしい活路。


「見せてやれ――――アーチ!」

(大事なことなので2回述べますが、評価・感想お待ちしております)

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