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十月一日はコーヒーの日

毎日制定されている「今日は〇〇の日」の〇〇をテーマにした短編集です。

1年間毎日更新目指しますので、応援よろしくお願いします!

 全日本コーヒー協会が千九百八十三年(昭和五十八)年に制定。

 国際コーヒー協会が定めた「コーヒー年度」の始まりの日。

 コーヒー豆の収穫が終り、新たにコーヒー作りが始まる時期である。


「コーヒー淹れるけど、飲む?」


 土曜日の午後、リビングでゲームをしている俺に、キッチンにいる妻の裕子ゆうこから声が掛かる。

 昨日、俺達は大喧嘩してしまった。出勤前に早く帰ると約束してたのに、それを忘れた俺は同僚と飲みに行ってしまったのだ。しかも事後連絡で。

 約束を守って仕事を切り上げ、早くに帰っていた裕子は当然俺に怒る。俺はラインで謝っただろと逆ギレ。悪いと思っていても、頭ごなしに怒られると素直に謝れなくなるのだ。

 結局昨日は大声で喧嘩し合って、そのまま仲直りせず寝てしまった。休日の今日になってもお互い自分で食事を作り、最低限の会話しかしていない。


「ほら、飲むんでしょ」


 裕子がそう言ってコーヒーの入った俺のマグカップをローテーブルの上に置く。自分は俺から少し距離を空けて座り、スマホ片手にコーヒーを飲みだした。

 裕子が飲んでいるのは、彼女の好きなレギュラーコーヒーだろう。だが、俺の前にあるマグカップに入っているのは、たぶんインスタントコーヒーだ。

 俺は裕子にお礼も言わずにマグカップを手に取り一口飲む。

 口の中にマイルドな香りが広がる。俺の好きなコーヒーだ。

 変わっていると言われることもあるが、俺はレギュラーコーヒーより、「違いが分かる男」が飲むインスタントコーヒーが好きなのだ。

 裕子はいつも二度手間でめんどくさいと言いながらも、自分にはレギュラーコーヒー、俺にはインスタントコーヒーを淹れてくれる。


「昨日は約束破ってゴメン」


 俺は飲みかけのコーヒーに向かって謝った。

 裕子は驚いたように俺を見る。


「コーヒーありがとう。裕子が淹れてくれたコーヒーが謝らせてくれたんだ」


 今度は裕子の顔を見ながらそう言った。


「コーヒーで仲直り出来るならお安い御用だわ」


 裕子はそう言って、俺のすぐ横に座り直す。俺も裕子の肩に手を回して体を引き寄せた。

 もうこんな優しい嫁さんを怒らせないようにしよう。

 俺はまたコーヒーを飲みながら心に誓った。

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