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第11話 ステラとメア

「ノア君! どうして一人で行動したの!」

「あなたは私を怒らせたいのですか?」


 怒る二人を前にして、心臓の鼓動が次第に早くなるのを感じる。

 何を言っても論破されて土下座をする未来しか見えないと考えていると、メアが「私が悪いの」と声を上げてくれた。


「私がお母さんを救ってほしくて声をかけたの! ノアは悪くないの!」


 助けてくれるのは嬉しいが、まさかの呼び捨てだった。

 名乗り出たメアを見たステラが口に両手を当てて驚いた表情をしているが、リルは相も変わらずノアを睨みつけている。


「メ、メアなの……本当にメアなの?」

「そうだよ、ステラちゃん。急にいなくなってごめんね」

「メアぁ~」


 涙を流しながらステラがメアを抱きしめたと同時に、ノアはリルに頬を叩かれてしまっていた。


「痛いよ……」

「当然です。急にいなくなって、どれほど姫様が辛かったか分かりますか?」

「分からないです……」

「一緒に戦う誓いを破られたって泣いていたのですよ? あなたを騎士にして国を変える覚悟は相当なモノなのです。再度姫様を泣かせたら、私が引導を渡すと覚えておいてください」

「わ、分かりました……」


 相当怒らせてしまったようだ。

 ルナを取り戻せると思い、勝手に行動をした罰だろう。だが、リルに殺されてしまうのは勘弁したい。


「気を付けるし、二度と誓いを破らないよ」

「信じられませんが、今は信じます。もう裏切らないでください」


 美人に睨まれるのはどこかゾクゾクする。

 決してマゾではないと思うが、以前にヘリスが美人に怒られると気持ちがいいぞと言っていたことを思い出してしまう。


「おやっさんが言っていたことはこれか……確かに分かる気がするけど、毎回は嫌だな」


 ヘリスのことを思い出して微笑していると、ノアと呼ぶ声が聞こえてくる。


「ノア来てー! 早くー!」

 

 メアが変わらず呼び捨てで名前を呼んでくる。

 やめてと言っても性格的に変えることはないだろう。抱き合いながら手招きをしてくるので、溜息をつきながらノアは近寄ることにした。


「どうした? 何かあったのか?」

「ステラちゃんにも作戦のことを話したんだけど、協力してくれるって!」


 まさか了承されるとは。


「リルにも話してくるから、少し待ってて!」

「あ、おい!」


 呼び止めようとしたが走ってリルの側にステラが行ってしまう。

 ノアはリルが賛成してくれるか分からないので、黙って連れて行こうと考えていたがそれは叶わないらしい。


「ステラちゃんが作戦に乗ってくれないと思ってた?」

「少しね。だって思いっきりヴェルニの側に行くわけだからさ、大罪人を騎士にしたことや国に反旗を翻しているからな。王族とはいえ殺されかもしれないし」

「そうだね。だけど、そこはノアが守るんでしょ?」

「当然だ。死ぬわけにはいかないけど、守れるだけ守るつもりだ」


 嘘は言っていない。

 ルナを救うまでは守るつもりだ。その先は考えていないが、今はこれでいい。

 ノアはリルと話しているステラを優しい眼差しで見つつ、守らないとと小さな声で呟いていた。


「な~に~。ステラちゃんのこと好きなの~?」


 何を勘違いしたのか、ノアがステラを気になっているような言いぶりだ。


「好きとかじゃないよ。年下みたいだから、ルナみたいな妹だと思っているさ。怪我をしないか、何かしでかさないか見ているだけだ」

「本当に~? ま、いいけど。何かステラちゃんのことで知りたいことがあったら聞いてね」

「聞く機会はないと思うけど、覚えておくよ」


 横腹を小突いてくるメアを横目で見つつ、真剣に話している二人を見ていた。

 とても話しが長い。時折難しい顔をしているリルだが、どうやらステラの説得により納得したようだ。


「お待たせ! リルさんも納得してくれたから地下通路に行きましょう」

「納得というわけではないですが、今はそれしかないと思ったので」


 それでも一緒に来てくれることに安堵したノアは、リルに頭を下げた。


「ありがとうございます。これでルナも救えます」

「まだ感謝の言葉は早いですよ。救い出せてからその言葉を下さい」

「そうだな。そうするよ」


 戦った時からリルは頼もしいと感じている。

 優しさと強さを兼ね備えている人は敵だと恐ろしいが、味方だと頼もしい。ノアに足りない要素を備えているので、少しでもモノにしていこうと思える王国騎士だ。


「さて、話も纏まったし行きましょうか!」

「行こうー! 待っててねお母さん!」


 ステラの号令で都市サレアに向かうことにした。

 不安ばかりが膨らむ。多分メアの計画通りにはいかないだろう。ヴェルニにより妨害や、都市サレアにいる王国騎士と戦闘になることは避けようがない。それでも地下通路を通って見つからずに入るしかない。


「不安ですか?」

「そうだな。正直に言うとトントン拍子に進むとは思えないんだ。絶対戦闘になるし、その時にステラやメアを絶対に守れる自信がない」


 前を笑顔で歩く二人を見つつ、横を歩くリルに相談をした。

 すると、予想外の答えが返って来たのである。


「一人で守ろうとする必要はないです。私が一緒に守りますから、ノアは前だけ見て戦ってください」

「ありがとう。そう言ってくれて嬉しいよ」


 二人で微笑していると、前を歩くステラが「熱々だね」とからかってくる。


「ち、違うますよ姫様!」

「強く否定するのが怪しいわよー」


 クスクスと笑うステラの側に駆け寄って、必死に否定しているリル。

 そこまで否定をしなくてもと思うが、好きなステラにそこまで言われて嫌なのだろう。そんな楽しそうな雰囲気を出しながら、都市サレアに向かうための通路がある平屋に向かうことにした。

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