魔笛編 第4話「潜入」
月曜日、放課後。潤也は美化委員で集まった。
鈴原を見ると声をかけた。
「やっ!今日花壇の整備だね。この花、もっと栄養剤あげていいな。これ、小さな雑草入り込んだな。コイツに栄養とられちゃってるよ。とっとこ!コレ」
気負う所もなく、サラッと話しかけてきたので涼子も気軽に話し、段々と気軽に、何でも言える様になってきた。
潤也は人をそんな気にさせてしまうムードメーカーである。
「あれ?そのアクリル『スカイウェーブ』のじゃない?」
帰り道、涼子のカバンについているアクリルキーホルダーを見て言った。
「スカイウェーブ」は最近、有名になり始めたロックバンドである。
「あっそうなの!でも、私クラシックのヴァイオリン弾きでしょ。スカイウェーブ大好きでロックとコラボの話があるんだけど、先生がクセがつくからやめた方がいいって……」
「へえ、涼子ちゃん、やらないで後悔するんだったらやってみれば!ダメだと思ったら戻れるじゃん。一回でそんなクセついたりしないでしょ」
涼子は笑った。
「元気出た!考えてみるね」
ある所に差し掛かると、涼子が止まった。
「潤也君。変なこと言うと思うかもしれないけど、私ここでね、ある音を聞いたの。今まで聞いたことのない音。人の声かなぁ。私、絶対音感あるでしょ。でも、どの音符にも当てはまらない音があるのよ」
「へえ!」 ビックリした様子で潤也は言ったが、
内心では 「ナイス!予感的中!緑郎!」 と思っていた。
「それ、気になるね。じゃ、涼子ちゃんにお守りあげとくよ。このキーホルダーさ、すっごく幸運を運んでくれるからさ。その音からもきっと守ってくれる」
「いいの?大事な物でしょ」
「別にいいよ。また一緒に花壇キレイにしよーね」
潤也は涼子にポイントをつけたと言ってよい。
これで涼子の行く所には行ける。
潜入出来るのだ。
★ーーーーーーー★
その夜、梨央の家へ集まった。
潤也がまろくんに自分が小さな時に遊んでいた駅の中にあるコンビニのオモチャをあげる約束をしていたので、梨央の家になったのだ。
まろ太は喜んで潤也と遊び、疲れると眠ってしまった。
潤也は涼子に渡したキーホルダーの片割れを持っている。
これで情報も読み取れる。
涼子は明日、ある場所へ呼び出されている。
駅へ26時。
緑郎は2人に準備をして集まろうと約束した。
何があるか分からない敵陣へ乗り込む事になる。
「梨央、言わないと持って来なさそうだから、
着替えとかも一応、持ってきてね」 と緑郎が言った。
「旅行か?オレは何も持ってかねーぞ」
「その日に帰るとは言えないんだ。用意はしといて。御両親には僕の方からも話しておいたけど」
「面倒くせーなー」
潤也はちょっとワクワクしている。
「僕もお菓子とか持っていこうかなぁ。
美味しいものがあるか、分からないし。トランプは?」
「トランプ必要じゃないでしょ」
「お前、遊びに行くんじゃねーぞ」
しかし、この時まろ太は半分眠りから覚めていて、話を聞き、
置いて行かれると思い、プルプルしていた。
★ーーーーー★ーーーーー★
26時、駅へ集まると、15~6人位だろうか。
人が集まってきた。
「あっ涼子ちゃん」
潤也が近寄って行ったが、様子が変だ。
反応が鈍い。潤也を見ても何も言わず、改札を通って行ってしまった。
「完全、ヤラレてんな」
梨央は改札に寄りかかりながら言った。
「僕達も行こう」
緑郎とホームヘ上がって行くとクラシカルな電車が止まっていた。
「何これ?ふっるーい」 と潤也。
「かなりの魔力がかけられている。行き先はあの町だろう」
全員が座席に着くと、扉が音も無く閉まり、滑る様に動き出した。
窓は暗く、しばらく何も映らなかったが、明るくなったと思うと、海や山々や美しい風景が広がっている。
「ここ行くの?」
潤也がわりと良いじゃない?みたいな顔で皆を見る。
「これは見せている景色だ。
実際は魔界の闇だろう」 と緑郎が言った。
「やっぱりね。この魔法解いてやろうか?」 と潤也。
「いや、イタズラに恐怖心を煽る事になる。
やめておこう。魔力をかけられてはいるが、心を失ったわけじゃない。今、意識と繋がらないだけだ」
「何考えてやがるんだか」
梨央はかったるそうに、荷物を枕に寝ようとした…
時だった。
梨央の荷物が動いた。
「ん?」
梨央が荷物を開くと、真っ白い毛玉が……。
「まろ!まろか?」
梨央はポメまろをつまみ出した。
手には電車のオモチャを持っている。
「まろ!今日はついて来いって言ってねーぞ!」
つい大声を出してしまった。
元々、強面狼男の梨央は中々の迫力だ。
まろ太は怒られた事がない。
恐怖で何も言えず、泣き出してしまった。
「怒らないでよ!梨央!」
潤也はまろ太を抱き寄せる。
「怒ってないよ~。まろくん、お兄ちゃん心配しちゃってさ~」
「今、大事な事は、僕達が目的を達成し、そして、まろ太くんを絶対に守り、自分達も無事帰ることだ」
緑郎は言う。
「まろくん、これから行く所はね、お兄ちゃんも行ったことが無い所だから、心配でまろくんには言わなかったんだ。
でも、何も言わないでお兄ちゃんが何日もいなかったら、まろくんも心配だよね。僕が悪かった。ごめんね。ちゃんと話さなくて」
まろ太は涙目だったが、潤也に涙をハンカチで拭いてもらって、
鼻をかませてもらって、ジュースも飲ませてもらって、だいぶ落ち着いてきた。
緑郎は膝をつき、まろ太の手を取って言った。
「まろくん、これから行く所はね、危ない所が沢山あるんだ。
お兄ちゃんの言う事聞けるかな?」
「うん!うん!」
「よかった。では、ろっくんともお約束してね。
まろくんはここでは狼でいること。
小さなお友達がいないから、目立っちゃうからね」
「うん!うん!」
梨央はまろ太を泣かせてしまい、
内心、少しヘコんでいた。
(まろに、あんな目で見られたの初めてだな。
いきなり怒鳴っちまって、怖かったろーな……)
緑郎は、自分以外3人にブレスレットを渡した。
お互いの情報を知る為と身の危険を知らせる為。
それと、バルーンを一つ梨央に渡した。
「万が一、何かあったら、この中に入れ。
守れるし、思う所へ行けるだろう」
潤也は、「緑郎、ブレスレット無いけど、どうするの?」
「潤也、僕のことは魔力で君に流す。潤也なら受け取れるはずだ」
「OK」
そんな事を話しているうちに電車が着き、扉が開いた。