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かくれんぼ 『終わらないかくれんぼ』

作者: 綾野祐介

かくれんぼ

『終わらないかくれんぼ』


                綾野祐介


「もういいかい?」


 かくれんぼの時の鬼の掛け声。


 子は鬼から見つからないように隠れる。そ

して隠れ終わったら


「もういいよ。」


 といい、まだなら


「まぁだだよ。」


 という。


 但し、声に出して言うのである程度の位置

は掴めてしまうのではないだろうか。子供の

うちであれば、その辺りは問題なく遊びは進

むのだろう。だから、大人になってからかく

れんぼをすることは滅多にない。


 童心に帰って昔の幼馴染たちと、とうこと

はもしかしたらあるのかも知れない。


「もういいかい?」


 大人の声だ。大の大人がかくれんぼ?、と

は思ったが、それでさっきの思考をトレース

する。まあ、あるのだろう。


「まぁだだよ。」


 やはり位置はある程度掴めるようだ。大人

ならすぐに見つけてしまう。鬼も子も大人の

ようだが、全く何をやっているのだろう。他

にやることはないのだろうか。


「もういいかい?」


「まぁだだよ。」


 いつまで隠れるのに手間取っているのか。

それにしても鬼と子と二人でやっている。そ

れって面白いのだろうか?


「もういいかい?」


 鬼の声にイラつきはない。私だったらあま

り時間をかけられるとイラついて切れてしま

いかねない。この鬼は子に寛容だ。


「まぁだだよ。」


 なぜか子は隠れ終わらないようだ。男性の

鬼と女性の子のかくれんぼ。少し異常に思え

て来た。


「もういいかい。」


 なんだか男性の鬼は楽しんでいるかのよう

だ。カップルがいちゃついているだけなのか

も知れない。馬鹿らしい。それをずっと聞い

ている私も、ただの間抜けだ。


「まぁだだよ。」


 どうも終わらないようだ。ただ、少し違和

感を感じる。女性の声が若干震えているよう

にも聞こえたからだ。


「もういいかい?」


 全く同じテンション、口調で鬼が問いかけ

る。感情の起伏はない。


「まぁだだよ。」


 女性の声はだんだん上擦ってきている。や

はり何かがおかしい。


「もういいかい?」


 男性の声は止まらない。


「まぁだだよ。」

 

 なんだか泣いているかのような女性の声。


「もういいかい?」


 女性の返事が途切れた。



 私は気になって声のする方に向かってみた。



 女性は血まみれで息絶えていた。

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