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赤銅の要塞都市①

 地上を隈なく幅を利かせていた暗がり達は、白い花を揺らす風となってビルの影に逃げ込み、どこまでも細長伸びていった。朝焼けに浮かび上がる、鋼板の群れ。赤錆の上を、アサガオのツタが粛然としている。そんな静かに白靄が息吹き出す要塞都市の外、灰色の荒野では、今多くの魔獣共が犇めき合って砂塵と伴に退散を始めているのだろう。

 そんな遠く暗景に微睡む瞳にも、日の光が射した。〝いけない〟

 私は、勢いよくベットから飛び起きた。覆っていた紅狼猿の毛布が宙に舞う。肌触りの良い、火天羊のカーペットに白くて小さな素足が着地した。続いて毛布が螺旋状に床に垂れる。

 目の前の鏡には、満月の様な瞳をした少女が一人。うん、私だ。最近動きやすい様に、伸ばしていた赤髪をサッパリと切ってしまったため、一瞬知らない活発系美少女がいらっしゃったかしらと思ったが、私だったかー。

「おはようございます。クニエヒお嬢様」

「おはやーおう、カローシィ。今日も()()()の観察してくるからソッコーで支度よろー」

〝かしこまりました〟と言って私に、荒ぶる髪々を鎮める整身魔法やら洗顔魔法、ドレスアップ魔法をかけている、ソフトボール大の黒い球体に角の生えた物体は、霊獣の「カローシィ」ちゃんだ。

 紹介遅れまして、私の名前は「クニエヒ・フォネー・エダンルーダ」。オベアウラギ王の原初魔法構造体「第十四番」を預かる赤銅色の要塞都市「ヤナギタ」へ最近、封番防人(ほうばんさきもり)の任を仰せつかった「ミクマ・フォネー・エダンルーダ」の一人娘だ。母はまだ居ない。というのも、私はミクマ(おとう)拾子(ようし)であり、かつミクマ(おとう)はこの街でお嫁さんを現在募集中だからだ。

 およ?失礼話がそれましたッ。この記録が一体何のかと申しむすると、私が髪を短くした原因でもある()()()の観察日誌なのでありますッ!アイツとは誰かと言うと、この街いっちば~んというか、私の12年の人生の中でもっとも変人奇人な少年「カイト・アルエイヤ」。

 彼曰く、彼は「テンセイシャ」なる誰も聞いたことも見た事も無い種族だそうで、何でも「オレマタナンカヤッチャイマシタ」なる快楽神経に作用する系の呪文を唱えるために、日々謎の特訓をしている面白人間なのだッ!

 あぁ!アイツは今もどこかで、奇妙奇天烈な事をやっているに違いない!気になる!気になる気になる気になる気になる気になる気になる気になる気になる気になる気になる気になる気になる気になる気になる気になる気になる気になる気になる気になる気になる気になる気になる気になる気になる気になる気になる気になる気になる気になる気になる………すっご~~~く気になるッ!!

 居ても立っても居られないッ!私は魔法の着替えが終わると同時に、窓から外へ飛び出した。恰好は動きやすいお気に入りの、白竜鱗のパーカーと雷踏牛生地のショートパンツ。ふとももが露出し過ぎとミクマ(おとう)に言われるが、センスが原始時代から氷河期なオヤジはこれだから困る。というか、こっちがコレだけ気になっているんだから、向こうもちょっとはコッチを気にしてくれなきゃ悔しい。これはその為の武器なのだ、私の闘いだ、オヤジは気にするなっ!

 そんな、気合の発火と伴に四方の風を集め大気中の霊性を偏在させて、私は赤いビルの群れの谷間の空を、気になる方へ気になる方へと滑り降りて行ったのだった。


 

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