004・新居と準備
2日後、朝からマインに呼ばれ候補を見繕ったからあとは好きなのを選べと言われた。
今は、執事のヨーデエルに連れられて町の新居候補1に来た。
場所は冒険者ギルドの裏通り。
ここは、冒険者向けの装備店舗が多く集まっている通りだ。
ギルドが近くにあって便利で人も集まる為、衛兵の詰め所もあり詰め所がお隣という物件。
こんな優良物件がタイミングよく空いているというのは不思議なものであるが気には留めない。
「ここにします」
「ほかの物件は視ないのですか?」
「めんどくさい」
「ちゃんと吟味しないとダメですよ。ご主人様!面倒なら私にお任せください。
何を販売予定とか営業方針とかも聞きましたので全く考え無しで決めるよりはましにできます」
ライラに怒られ全て任せることにした。ライラはヨーデエルに次々とこの物件について質問していく。
暇なので私はミーヤと建物内を探索することにした。
1階部分は7割ほどが店舗スペースで陳列棚は壁側3方向と真ん中あたりに普通の人の腰くらいの高さのショウケース。
奥側はレジスペースになる。その裏に住居への通路がある。
トイレと在庫品を入れるための部屋があるくらい。
更に2階と3階はそれぞれ住居スペース。2階はキッチンやリビング、風呂などがある。
3階は部屋とトイレ。各階にトイレが完備された優秀な物件だなーっと二人でうなずく。
下に戻るとライラに、次の物件を見に行くと言われた。
めんどうなので移動を渋っていると、ヨーデエルが残りの候補の立地と建物の図面を見せてくれた。
ダンジョン産のレアアイテムや武器防具を販売するならやはりここがいいという結論に持っていくことが出来た。
「では、最後にこの建物は貸出の形になるので、改装したい場合は事前に許可を取ってください。戻せる範囲の改装であればご自由どうぞ。
それ以上に自由にしたいのであれば、買い取りも可能ですのでそちらもご連絡下さい。値段は時価なのでその際にお伝えします」
「わかりました」
「それでは、私はここで失礼させていただきます」
そういうと、ヨーデエルは去っていった。
「それで、ご主人様。色々と不便ですがどうなさいます?」
「んー大体どうにかなると思う。まずは寝室を決めよう」
そう言って私は2階と3階の部屋を物色して3階の一番広い部屋に目星をつけた。
この世界でのベッドは今一つ寝心地が良くない。
多分、どんな高級店でもそれほど変わらないだろう。なにせ領主様のお屋敷のベッドですら私は不満だったのだ。
そうなったら自分で生み出してしまうのが一番。
ミーヤとライラは2階で生活に必要なものをリストアップしてもらっている。
その間にやってしまおう。
元の世界の最高に気持ちいいベッド。キングサイズよりでっかいので。
さらに気持ちいいマットレスも召還。敷布団と布団に枕もセットだ。枕は3人分。
うん。いい感じ。そういえば、領主の館に泊っている間に騎士団長が装備している剣にスキルが付いていたっけ。
寝具にもスキルってつくのかな。
RPGゲームだと付与とか言ったかな。やってみる。
一先ず枕に「安眠」の効果を。
鑑定の能力で見てみる。
間違いなく「安眠」が付与されたようだ。同じ要領で全ての寝具に安眠を付けていく。
これで寝たら最高に気持ちいいに違いない。うっとりしてしまう。
絶対に今、ほほがふにゃってなっているに違いない。楽しみだ。とても!
あと、領主の館に泊ってた夜に毎日思い出す言葉があった。
毎晩ベッドに入ると思い出してもんもんとしていた。今日は、もう我慢できないかもしれない。
あのサミーが言っていた。「二人は性行為を行う事を了承しております。」
今夜はきっといたずらしてしまうに違いない。
そんな妄想を始めたところ、ミーヤとライラが上がってきてベッドがあることに驚かれた。
「じゃあ必要なものを買いに行こうか。と言ってもそれほどお金がないから最低限で、
そのあとギルドでいい感じの依頼をみてダンジョンに行こうか」
「そうですね。ご主人様の所持金はそれでよく家を持とうと思うような金額でしたから……」
「そうにゃ。さすがのにゃーも驚きにゃ」
「まぁうん。とりあえず、二人の装備を整えて早々にダンジョンに行こう。その日暮らしを抜け出さないと」
「わかりました。手早く行きましょう」
私はアイテムバックを背負おうとするが、
「それは私が背負いましょう。ご主人様だけに荷物を持たせるわけにはいきません」
「あぁそういえば、二人にかばんを持たせた方がいいか」
「そうです。奴隷ですから」
私はアイテムバックから同じリュックを1つ取り出しミーヤとライラに預けた。
「私はアイテムストレージ?みたいなスキルがあってどこからでもアイテム出せるからそれはお願い」
「……相変わらずご主人はぶっ壊れてるにゃぁ……」
「……ご主人様。そちらも出来るだけ内緒にしてください。物持ちとして重宝されるスキルなので」
「ほぇーじゃー二人も使えるようにする?リュックいらなくなるし」
「え……っとほしいですが、隠すためにもリュックは必要です!」
「わかったー」
2人にストレージのスキルを与えた。
「使えるようにしておいた」
「「え?」」
ミーヤとライラはポカンとしながらストレージを確認しているようだ。
「……ご主人、これどれくらいの容量があるにゃ?普通じゃ想像もつかない量が入りそうにゃ」
「ん?設定してないから限界はないんじゃないの?」
「馬鹿にゃ!そんなストレージ頭がおかしいにゃ!にゃーも人間辞めちまったにゃ!」
冒険者をそれなりにやっていた二人にはこれがいかに破格か分かるようで呆れられてしまった。
便利に越した事はない。が、罪悪感がある。
「じゃー消そうk」
「「ダメ!」にゃ」
「すごく嬉しいですから!」
物凄く声を張り上げられた。
まぁ便利だからいいよね。と3人の意見は一致した。
「まずは何を買うん?」
「そうですね。トイレ用に水属性の魔石があるといいですね。他用もあれば便利ですが。
あとは、日用品を少々。その後、防具と武器ですね」
「水属性の魔石って水を流すのに使う感じ?そうすると他に使うのはお風呂とか料理かな?」
「そうですね。トイレ用にこの街では多く使われます。お風呂はわかりませんが水浴びにも使います。
料理は残念ながら私もミーヤも殆ど出来ないので当分は外食になりますね」
「あぁなら私が作るよー料理は元の世界なら人並みに出来たから」
「えっと、ご主人様を煩わせるのは問題なので指示して頂ければ私たちがやります」
「んー私は料理自体は嫌いじゃないから一緒にやる」
「わかりました。ですが、今は薪や火属性の魔石をかう余裕はないので外食ですね」
「了解」
さくさくっと日用品をそろえて今は武器屋に来た。
「っで二人はどんな武器がいいの?」
「みゃーは槍か短剣にゃ」
「私は、杖やワンド。多少短剣も使えます。杖やワンドには魔法を増幅する効果があるので魔法を使うのであれば私はそちらにします。
ご主人様は得物は何を使われるんですか?」
「短剣をもってるけど、体が小さいから普通の剣みたいになるかなー」
「でしたら私はやはり杖かワンドでミーヤには槍をお願いしましょう。ご主人様に武器があるならミーヤの武器が優先でしょう」
ミーヤは既に一本の槍を手に持って戻ってきた。
「これがいいにゃ」
「……予算いっぱい額だなー」
「そうですね。私は武器なしで援護に回りますね」
「でも、みゃーがしっかり働いていっぱい稼ぐからすぐ買えるようになるにゃ」
そう言って武器屋の店主の元に行く。
「あぁ?!ミーヤの嬢ちゃんじゃねーか!食い逃げで捕まったって話だったが本当だったんだなっ」
「うっさいにゃ!さっさとお会計にゃ」
「へいへい。今度は犯罪者になるんじゃねーぞ」
「大丈夫にゃ!ご主人がいればきっとくいっぱぐれないにゃ」
「ん?ご主人ってのはそこのちっこいのか?ちぃと頼りなくないか?」
「大丈夫にゃ!……多分」
「まぁいいわ!あと、お前が捕まる前に使ってた武器、預かってるから金がたまったら買取に来い。そんだけだ」
「おぉ?!ほんとかにゃ!頑張るにゃ!」
「ミーヤ、あの店主と知り合いだったのか?」
「そうにゃー、冒険者時代……今もそうだけど、この店にはよく来てたにゃ」
「そうか、なら信頼できるお店なんだな」
「そうにゃ。いい店にゃ。店主は少しうざったいにゃけど」
こうして、鋼鉄の槍をミーヤに買い与えた。
一旦家に帰って、余計な荷物を置いていくことにした。
そこで、槍に頑丈のスキルを付与した。
「ミーヤ、槍に頑丈のスキル付けたけど、他に欲しいスキルある?」
「え?ご主人……そんなことも出来るのかにゃ。鍛冶師や付与術師泣かせにゃ。そっちも仲間に居ないなら隠したほうがいいにゃ。
それでほしいスキルかにゃ……HP吸収とか攻撃力2倍とかかにゃ~10倍付けたらあまりの攻撃力に人前じゃ使えなくなりそうにゃ」
「わかった。その二つつけておくね」
「これだけでこの武器の価値は数百倍になったにゃ。持ってるだけでちょっと不安にゃ……」
「そんな武器作って売ったら儲けそう」
「やめるにゃ。誰が使うかわからにゃいし、鍛冶屋が可哀そうにゃ。相場もぶっ壊れるにゃ」
「そうです。自分たちが使う分には仕方ないとして、手放すときにはスキルは解除した方がいいでしょう」
「そういうものかーわかった」
そんな事をいいつつ自分が使っている短剣に、頑丈とHP/MP吸収、攻撃力10倍を付けておいた。
ライラには頑丈とMP吸収を付けた短剣を作りだして渡した。
ライラは何かを訴える目をしていたが気が付かないふりをしてやり過ごした。
「それじゃダンジョンへ行こうか」
「炎の妖精の方にいくにゃ。悪意の方は初めてで行くにはちょっと難易度が高いにゃ」
「そうですね。ご主人様は警戒心が些か足りないので。ご主人様は無事でも罠に巻き込まれた私たちは無事で済まないかもしれません」
「返す言葉もない。一先ず炎の妖精に向かうということで」
2人に武器を持たせて出発した。
冒険者ギルドで依頼ボードを確認していく。
私には難易度が今一つわからないのでミーヤとライラに任せる。
2人は今は冒険者ギルドの登録がないので選んだ依頼を私が受注する予定だ。
来た時間が悪いのかあまりいい依頼はなかったらしく炎の妖精のダンジョンの浅い階層でドロップする薬草の材料の依頼を持ってきた。
基本的に依頼は朝の比較的早い時間に張り出される事が多く取り合いになることが多いらしく今は微妙らしい。
受付に行くとメリベルが領主との訓練についていろいろ聞いてきたが適当にわからないとか言ってスルーした。
物凄く不満げに手続きを渋ってきたがギルマスに見つかりゴリっと手続きが終わった。
ギルマスも興味があるらしくあとで聞かせろと言われたけどまぁ面倒だし。
依頼を受注して炎の妖精ダンジョン入口まで来た。
入口は衛兵の詰め所が近くに建ててあり、扉の前には入口を警戒した兵士がいる。
「さて、ダンジョンに入るにゃ。でも中では何が起こるかわからないにゃ。だから当分はにゃーが先頭に立つにゃ」
「そうですね。その方が良いでしょう。ご主人様は注意力が些か足りないので」
「まぁその通りだと思う。私は後衛として魔法で支援した方がいい?」
「いやご主人のステータスは超優秀にゃからどっちもカバーできるようになった方がいいにゃ。まぁ適正が無ければ諦めるにゃ」
「私が後衛として対応していく形になるでしょうね」
「あ、そういえば二人も冒険者登録した方がよかったの?」
「そうね。しておいた方が私たちが代わりに換金とか出来るから楽かもしれないわね。あとはパーティー登録もできるし」
「じゃ今度しようか。今回の換金が終わったら登録料も集まるだろうし」
そして、私は初めてのダンジョンに3人で挑むことになった。
前衛はミーヤと私。後衛はライラという隊列で先頭はミーヤ。
浅い階層は他の冒険者もいるため、罠のたぐいは殆どが解除されているのでサクサクと奥に進んで5階層くらいまで一気に行く予定。