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プロローグ:最近よくある話らしい

――――私は死んだ。

死因は恐らく……衰弱死。

理由は簡単。自分が無力であることに気が付いてしまった。

結果、何もかもに疲れめんどうになった。仕事も人間関係も食事も。そして無意識に行うこと以外すべてだ。

最後は、何をしたのかも思い出せない。

だがなぜか私は、視界が真っ白なのに意識がはっきりしている。


「やぁ。めんどくさがり屋の君。君には面倒な説明はすべて省くよ。それで早速だけど君には我々の世界に来てもらうよ。

その世界で生きてもらいたい。だけどそのままだとすぐに死んでしまうから、生き残る為に君が望む力をあげよう」


っぱっと思い浮かぶのは拒否権が無さそうな事。なら楽になる力は何か考えるのが生産的。


「そうそう。君のそういうところが好きだよ」


初対面だと思う相手に好意を抱かれても困る。

まぁ悪い気持ちにはならない。

さて、相手のことは思考から切り離して力について考えることにする。

色々出来たら便利そう。ご飯が勝手に出てきていくら食べても太らなくて…


「一応、怪物とかいるから自衛手段もあったほうがいいよ」


……なら、自動迎撃とかできたほうがいいのかな。

でも全部捨てがたい。あぁ~いっそ『思ったことがなんでも対価なしにおこせたらいいな』


「お、理想的なものを望んだね。それがいいよ。じゃ頑張って生きてね。最低100年は頑張って」


え?っと思ったときには意識が途切れた。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


……ちゅんちゅん


スズメの鳴き声かな。

気が付くと視界には地平線には橙色に輝く太陽が昇り始めた。

目の前には草原。後ろは森。

まだ、若干の靄を残した快晴。


……めんどくさい。

なんでも出来る力…ねぇ。

我々の世界に来てもらうって言ってたからきっと異世界なんだろうなぁ。

なら、この世界の常識を頭にインストールとかできるのかな。っと念じてみる。


一気に頭に情報がなだれ込んできた。軽いめまいでふら付きつつ何とかこらえる。

この世界は思っていたより物騒でファンタジーな世界でRPGゲームの様な感じ。

ステータスと念じると自分のステータスが表示されたり、レベルに経験値。

スキルや特技、魔法があってエルフにドワーフ、獣人に魔族などさまざまな種族がいる。

更には動物と別に怪物というよりモンスターや魔獣に聖獣なんてものまでいる。

文明レベルは魔法が発展しているおかげか化学はそれほど盛んではないようだ。

また、町や村によって文化レベルの差は激しいようだ。


ステータスで自分の能力を確認してみる。

名前:ノギヒ ヨウ

Lv.1

HP:5/5(30)

MP:1(10)

力:2(30)

敏捷:2(20)

体力:2(20)

器用さ:50(10)

魔力:0(10)

幸運:20(20)

スキル:なし

加護:奇跡の加護


ちなみにかっこの数字は一般的な村人のステータスを参考までに表示してみた。


……すごく私は弱い。この世界の常識的に人里の外に一人でいていいステータスじゃない。


ガサガサッ


森の茂みから蠢く音がした直後、


「ガオオオォ!」


デッカくて黒い熊が現れた。

やばい。


「ちょちょ!チョットたんまぁあ!」


心の底から叫んだ。私の人生で一番大声を出した。

思わず顔をそらして手で顔をかばいながら尻餅をついた。

ツんだ。間違いなく死ぬ。

痛みが来るのをじっと身構えているが一向に来ない。

おそるおそる目を開けてみると3mはありそうな大きな熊が今まさに飛びかかろうと「空中」で止まっていた。

そういえば、草や木の凪ぐ音すらしない。

聞こえるのは自分の心臓の音。それもとてつもなく早く脈打つ音だ。


……時間停止?…動かないなら殺しておこう。

っふと自分の考えが物騒なことに気が付く。

この世界ではモンスターは殺せるなら殺しておく。それが常識として頭にあるのだ。

一応、相手のステータスをチェックしてみたいな。

自分以外のもののステータスは普通見えないらしいが私には関係ない。


名前:ブラックベア

Lv.20

HP:50/50

MP:10


相手のレベルが高い為に自分のステータスより見れるものが少ない。

圧倒的に私より強い。一撫でしただけで私は絶対死んでしまう。

っが、今はこの熊は動かないので力いっぱい殴ってみる。

手が中々に痛い。熊のHPをチェックしてみるがHPは1も減っていない。

それどころか私の貴重なHPが5→4になっている。

笑えない。一般的にHPが無くなったら死ぬのは常識らしい。


自分を強化しよう。

痛いのとか怖いのとか嫌だし、どこかの超戦士みたいのが来られても大丈夫なような数字にしておこう。

全ステータスに1兆追加してみた。これで安心間違いなし。手の痛みもステータス上昇と共に消えた。

よし、倒そう。っと拳を構えた時に気が付いた。

これで熊がバラバラに爆発して肉片とか浴びたら嫌だな。っと。

そこで町で売っている適当な剣を召還してそれで切った。


ガッ!


首は届かないので胸あたりを凪いだのだが、熊の中心あたりで剣が折れてしまった。

それでも熊のHPを見てみると0/50になっていた。

この世界ではモンスターはHPが無くなると光になって消えて運が良ければドロップアイテムが落ちるようだ。

今回はどうなのだろう。しばらく待っても熊は怖いポーズで固まったままだ。

若干かわいく見えてきた。


そこでようやく時間が止まっていることを思い出した。

自分のステップの距離を確認の上でひとまず自分が逃げられるように距離を取って時間を動かしてみる。


熊の上半身が吹き飛ぶように跳ね上がりつつ光の粒になって消えた。

ちょっとしたグロでホラーな衝撃映像だった。

自分のステータスを確認するとLv.が2に上がり、操作して上げた1兆と少しに微々たる量のステータスが上昇していた。


うん。無理やり上げたステータスがレベルアップでもとの数字に戻ることはないようだ。

人里に行って私はまったり過ごしたい。でもこのままだと目立つ。あと身分証替わりになるので冒険者ギルドで冒険者登録しておくことにしよう。

自分の見た目を変えよう。自分の見た目は自信がない。というか衰弱死するほどだからきっとガリガリなんだろう。

そんなのがあんなステータスを持ってたら明らかに異常だし狙われかねない。ステータス偽造でさっきの平均的な数字に偽造しておこう。

それより自分の見た目だ。

私はかわいいのがいい。かわいくて小さくて巨乳!これは譲れない。自分の美的センスは前の世界のままなのだろう。

っぱっと浮かぶのがロリ巨乳で幼女なのがちょっと自分が何言っているのかわからない。

まぁ深く考えるのは面倒だから130cmくらいで巨乳の美少女。ほかはそのままでいいや。

ついでにこの世界の一般的な村娘な感じの服に変え、短剣とリュックを装備した。


さて、冒険者ギルドのある町に行って冒険者登録しよう。

私の文化的な人間らしい生活の為に。



この時すでに自分の怠惰な性格が変わりつつあったようだ。




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