路地の先
三枝にとっては夢や希望にあふれたきらびやかな世界にしか思えなかった。ビルを抜けると、車や人の足音などが入り混じった喧騒の世界へと引き戻されたのかのようだった。それでも足を止める人などはおらず冷ややかな目を向けて無言で訴えるに過ぎないのだ。時代の流れに身を任せたことによって生み出した結論なのだろうと思った。矛盾を指摘したとしても政治家は悪事を隠すためにもみ消してしまうのだ。それがどちらに傾いてしまっても関係ないと判断する。何処かの専門家が人を動かすことに権力を持ったとでも思ったのだろうか、打って変わってクレーマーのようなことをしだす。だが、国の人を動かすほどの実力はもっていないことにも残念にも気づかないのだ。文字だけに頼って動いたとしても誰が動くかとかにも関わってくるのだろうから。
「冷たいとか言っている場合じゃないんだよ。進まないといけないときに来ている。」
彼には見えぬ炎を絶やしたとしても誰も問わないのだろう。スーツを着て少し大きなバックを持った人がうろうろとしている。道に迷ったのだろうか。それでもなお誰も見知らぬふりをしていなくなってしまう。三枝は声をかけるべきかを迷ってやめてしまった。慌てて走っている人もいる。それでも変わりなく時間というものは動き回っている。
「あのー、スマホに書いているビルってわからないですか?・・・ちょっと得意先の場所が変わったと上司に聞いたんですけど、さっぱりわからなくて。」
スーツを着た人が彼に声をかけてきた。聞くところによると地方が本社としている会社の社員なのだという。スマホで何度も地図を確認しても全くわからないのだといった。細道に迷ったのかどうかもわからないと。
「それでしたらこの道をまっすぐ行くと大通りに出ますからわかりやすい看板とかあると思います。ビルの名前が大きく書かれていますから。」
「そうですか。有難うございます。」
そういったスーツの人はそそくさと急いでいるようであった。商談の時間が迫っているのだろう。得意先と言えど何処かで頼ることを恥と思っていたのだろう。そのつけが回って来たような気がした。そのまま歩いていると高校生らしき人物に目がついた。スカートを自分で短くして少し茶色に染めてメイクをしていた。それでも個性だと受け取る先生がどれだけいるのだろうか。縛られたルールの中にいらないと思われるものですら残っていたりするのだろうから。アパートへとたどり着いていた。




