動くゼンマイ人形
木佐は次の裁判のために六法を読みこんでいるのだろう。それでいたとしても邪魔といわないのはわかっているからだろう。三枝の電話が突如なりだした。
「いいよ。此処で出れば・・・。」
「すいません。」
彼に謝って電話を受けた。電話の相手は澄川書店の橋倉であったのだ。
「はい。」
「三枝さん、すいません。対談について正式に決まったので連絡をしたんですよ。」
「小関さんは受けてくれるんですか。」
少し驚いたように言った。それは少しは本心であって予測も立っていたが本当になってしまうのかとも思っていたのだ。小関は受けざる負えないと思ったのかもしれない。
「最初から決まった通りに行うといったんですよ。秘書の方を通じての対話というのは大変です。場所は決めさせてほしいといわれたので場所と日程はたぶん、数日のうちになると思っています。」
「わかりました。また、決まったら連絡をください。」
携帯を切って木佐のほうへと体を向けた。彼には何かわかったのか少し笑顔を見せていても何処か固くなっているようにも思えた。三枝は再びソファに座り、資料に目をやった。
「対談が正式に決まったんですよ。高橋製薬の会長と社長の予定があったんですが、変わってしまって・・・。」
「そうだったのか。苦労が重なったということか。・・・事件が起きるのはいいとも言えないが、それを隠すことに時間を費やすこともできないからな。」
「もういい時間なので帰ります。」
三枝は分厚いファイルを木佐に手渡した。この資料というのは流れてはいけないものなのかもしれない。そう思ったのだ。木佐はファイルを受け取ったが何処か止まっているような顔をしているのである。
「あんな短時間で全て読めたのかい?」
「はい、全てじゃなくても必要な資料を見たので・・・。あと、木佐さんにお願いがあるんです。」
「なんだ?」
三枝にとっては救いの手を差し伸べるまではいかなくともそれなりの救いを与えるべきと思う人物がいるのだ。
「小関絵里がきっかけを作った事件の加害者のリーダーの人の弁護をお願いしたいんです。・・・俺がある時に動きますから。」
「わかった。いいよ。・・・俺も何処かで真実を明かす必要があると思っているんだ。その時期に来たということだ。」
木佐の笑顔には表に出ることのない決意の上の熱意に飲まれそうになっている。主犯がのうのうと会社の経営者という立場でもあってと思うのだ。被害者はあおられたことによって起きたのだ。黙っているが裏で操っていたことも示されるのだろうから。動くべき時だと・・・。




