透明に見える黒
髙橋絵里の週刊誌に対することも行ったのだ。権現が後ろから尾を引いていることもわかっている。だとすると、絵里は何故父親の事件にかかわることになったのかだ。三枝は資料を見ていた。高橋製薬とかかわりのある政治家の弁護も行っていたのだ。明らかに黒で罪を背負わせたいと思っていても白に変えないといけないのだというのを貸すのだろうから。
「高橋絵里に会った時に言っていたことがあったんだよね。父親の事件にかかわらないと兄と同じような待遇にはしないと断言されたそうだよ。それに父親が殺人教唆をしたなんて言えないから、どんなことであっても止めるように政治家とかかわっていたそうだ。」
「それで気に食わないと高橋製薬が製造した薬の副作用を知っていながらも使うというわけですか。医者も関係があったとしか思えないです。」
研究員にも極秘に扱う薬を製造される仕事を行わせていたのだ。そのこともあって表ざたにはなっていないが、今回の裁判で公になることはわかっている。マスコミの扱いがうまい木佐にとっては動く裁判となるだろう。窪塚紘一も医者として大きくなりたいと願っていながら何かを抱えて高橋製薬と関係をもっていたことになる。
「窪塚紘一という医者はどんな医者なんですか?」
「彼か。彼は貧乏学生というところだったそうだよ。父親の鉄工所が高橋製薬が原因でつぶれたことも知っていた。そのこともあって大学では居心地が悪かったそうだ。偏ったことをしていたことで兄弟間でも起きてね。あこがれた医者という職について恩返しをしたかった母親にも死なれたんだよ。」
母親の死を疑った窪塚は高橋製薬の営業と仲良くするようになったのだ。海外製の薬品であったとしても受け入れることで研究者を取り込めるようにしていた。研究者に依頼をして薬を作ってもらえる環境は作り上げることはできたが、代償がついてきていた。
「代償というのは何ですか?」
「政治家とか指定をしてくる人を殺せということだよ。どんなに悩んだとしてもだよ。」
副作用を知らなかったと言い張ったとしても薬品会社は掌を返すだろう。そうでもあっても構わないと思っているのだろう。
「今回の裁判は窪塚医師も話すときに高橋製薬の全てが明らかになると思っているんだよ。」
「そうですね。・・・見えない黒幕に操られた人間たちにあふれる社会なんて気が気じゃありませんよ。透明性のある社会になってほしいです。」
「そうだね。俺もそう思うよ。」
木佐は自分の机に座って六法を読んでいた。高橋製薬という会社の姿が見えてくるのだろう。嘘偽りなく映ってくる。あとは小関絵里の本性だと。




