あのころの話
三枝は木佐に会うために少しばかり高価なジャケットを着た。弁護士という職を聞くと堅苦しくなってしまうのはやむ負えない部分でもある。指定を受けた建物のエントランスへと向かった。そこには多数の会社があり、受付が一括で行えるのだという。
「木佐学さんと会う約束になっているのですが・・・。」
そういうと受付の女性は淡々とやっている。電話をして話を通しているようである。事務所の中に入ることになったらしく、そう伝えられた。大きなエレベーターホールに向かった。ビルというのは大きなところで多数の会社がシェアをする場所が階数事にあるのだ。言われた階へといった。そこには食物を扱う会社や印刷会社などいろいろあるのだろう。木佐が自ら作った事務所だ。ドアにインターホンを押した。すると高価なスーツを着た男性が近づいてきた。小さな応接室へと向かった。
「いや、弘樹君が来るとは思わなかったなぁ。だってあったのは高校生の時だから・・・。時間が経つのは嫌なものだね。」
「前はこんな場所ではなかったですよね。」
「そうなんだよ。古いビルの中にいたのはいいんだけど、依頼者が躊躇して入ってこないこともあったから異動したんだよ。此処のほうが家賃が安いし、他の会社との交流もあっていいんだよ。まぁ、人が増えたというのは事務の人くらいだ。パラリーガルを雇っているときもあったけどね。まぁ、なりてがないわけだ。」
以前のビルは今は商業施設になるために土地を売ったのだというのだ。そうなる前で此処に映っていたために弊害を受けることはなかったという。
「シェアオフェスにいるというのはいいことだよ。弁護士にとっては・・・。新しい仕事が舞い込んでくるんだ。共同の応接室もあったりするし、会議室もあるから下手に流れないしね。最悪流したくなかったら此処でするから。」
「そうなんですね。今は刑事事件を扱わないし、民事ですからかなりお金になると聞きましたけど・・・。」
「そうだ。国選にも選ばれないからね。それより本題の話をしないかい?」
木佐はコーヒーをカップに注いだ。2つを作ったのだ。
「俺が聴きたいのは高橋製薬にかかわっていた時の話です。俺はこの事件のことの発端が高橋製薬にいると思っているんです。」
「あのころの話か。」
熱いコーヒーを冷ましながら木佐は考えているようである。苦い話なのか金を思えば甘かった話なのかとも思うのだ。単純には判断を言えないかもしれないと。




