不審な動き
主人公は苦難を乗り越えながら成長していくのだ。そのことで些細な事で争ったりもするだろうと思った。高校の時は一心不乱に書いていたことを思い出した。興味を持ったということだけで書いたのだ。そのことで世間に知れ渡ってしまうのを恐れて都合のいい言葉を並べていた。賞を取った時にマスコミにその時の事件のことを書いてしまったことで騒ぎになったのだ。一時はやめようと思った。やめたほうが手っ取り早くていいと思ってしまった。それでも辞めなかったのは書いたことで新たな目線ができたとその当時の記者に言われたのだ。書いたのは小説であって事実を描いたのではないのだから外野にとやかく言われる筋はないのだろうといってくれた。その週刊誌かどうかはわからないが、記者の人はもうやめてしまっているだろう。パソコンに書いていた小説の主人公がうまくいったとも言えない終わり方をした。それもまたいいのかもしれないと思った。保存をして、メールで送った。橋倉にと。追われていたことからはなくなってしまって仕事部屋から出た。テレビの前においてあったチューハイに手をかけた。冷えていないが、何処か満たすものがあると思った。ソファに座ってチーズを食べた。思いつきでテレビをつけると、ニュースをしている。殺人事件が起きたらしく現場からの取材もしているようだ。
「10年前の資産家が自殺したとされた事件はいまだに解決していません。・・・心苦しいことにその事件の息子さんが殺された模様です。」
キャスターは協調するかのように言った。息子が死んだといった。凶器は鋭い刃物のようなものだといっている。殺された息子の名前は高橋洋一と。彼は自殺したとされる母親が経営を行っていた会社の社長をしていたようだ。高橋製薬をしていた。高橋製薬は初期は製薬だけを行っていたが、それだけではなく髙橋明子が薬剤師をしていた経歴をもっているので、薬局を行うことを提案したことによって経営がうまくいったのだ。そのため、旦那はもっと社長をやってほしかったらしいが、経営がうまくいったのを見るとすぐにやめてしまった。それから名誉会長という名だけは残っていた。本人が望んでいる形ではなかったので家族仲はそれほど良くなかったのだ。むしろ、この行為が悪化させてしまったといえるのだ。明子は一等地に住むのを嫌がり、田舎へと越したのだという。そこで自らの生活のために薬局をしているさなかに起きた自殺だった。