肩書に沿う
そして、訪れる日になった。朝になって再び高校のほうから駐車場とかの話が上がったが、基本車では行かないと伝えるとそうですかとそっけなく終わった。三枝はコンビニによってコーヒーを買い、地下鉄の駅へと進んだ。乗ってみると人も多いようだ。三枝は電車に乗り、バスを短時間でも乗るのかと思ったがそうでもなく駅から近い場所にあった。高校のネットのサイトと同じような建物が目に入った。高校生が騒がしく校門を出て行っていた。すると、何かに気づいた教職員がそそくさと建物の中に入って行った。高校の玄関に入っていくとトロフィーに囲まれている。部活でも成果を上げているのだろう。
「すいません。」
小さな窓から声をかけると先ほど走っていた人が少し息を上げているようだった。
「三枝弘樹さんですか?」
「そうです。」
「お待ちしておりました。校長のほうがお会いしたいとの申し出があったので、先に校長に会っていただけないですか?」
「構わないですよ。」
校長というのは高校の校長なのだろう。三枝が来るとなったのを聞いて会いたいと言い出したに過ぎない。案内してくれる教職員について行った。校長室と書かれたプレートが少しばかりくすんでいた。ノックすると声がした。教職員が先に入って行って校長のいる机まで行った。
「校長がお会いしたいとおしゃっていた三枝さんです。」
「いやー、あえて光栄です。」
校長の恰好は黒スーツを張り付けているようにしか見えなかった。以前は教師として働いていたというのだ。専門もあったらしいが忘れてしまったのだ。校長は握手を求めてきたので一応握手をした。三枝にとっては形ばかりだ。ソファに座った。お茶が用意されていた。
「高橋さんのことをお聞きしたいと伺いましたから、驚きましたよ。」
「そうですか。小関絵里さんは何時から此処の学園にいるんですか?」
彼が純粋に問うって見るとあっさりとした口調で答えた。
「幼稚園ですよ。お父様の教育を受けていることもあってか、お兄様は別の学園に行ったみたいですけど、幼稚園受験と小学校受験には失敗なさったと聞きました。」
校長の口から明らかにいらない情報が含まれていたと思った。少しばかり世間話をした後に校長はいなくなった。次に校長室から入って来たのは小関絵里と同じ年代の教師にしか見えなかった。座っているのもなんだと思って立ち上がった。
「そう固くならないでください。絵里の話をするなら私が受けるといったんです。嘘偽りなく知ってほしいので・・・。」
小関の同級生に当たることが分かった。同級生の話は聞くべきと心底思った。




