誇りと・・・
疲れた顔を張り付けた夏樹の姿だった。玄関で対処するもと思ってリビングへといった。ソファに座らせて、コーヒーを渡した。
「ごめん。今、本部と前にいたところを往復して疲れちゃった。異動が決まったのはいいけど、それをよく思わない人も多いから。」
「本部ってことは人事?」
「そう。人事になったから新卒を採用する立場ってことでもなくて、今いる人を見ることになるから余計に快く思わないのよ。」
本部に入ったことも決まった。受け継ぎを行っているのもあるが、受け継ぐ人も全くといっていいほど動かないので動くしかない。保険というのは信用問題であると教えてもわからないのか不思議そうな顔をして眺めているのだというのだ。
「困ったものだね。俺もそんなことを言っていられないんだけど・・・。」
「知ってるわよ。立て続けに対談がなくなった話でしょ。事件が起きたから仕方ないにしてもよ。話が上がっている会社で社員の人から話を聞くことがあるからね。」
社長である小関絵里の信頼というのは失っている状態なのだという。ライフオブが増して株式会社になっていることもあるので株主から怒りを受けていることもあるのだという。本部へ行くと本決まりになっていないときにでも行ったのだろう。走り続けている様子が分かった。
「休みは取れているの?」
「取れているよ。まぁ、取次がうまくいかないと保険ってずれが起きたら大きなことが起きてしまうとしか思えなくて・・・。受け継ぐことになった子はずっと事務をしていたのよ。数字を見るのは慣れているけど歩きの仕事を滞っていたから余計に心配になってしまうの。」
事務も必要なのだが、外回りに変わったと知った時にも事務をしていたらしい。取次が変わるということで顔合わせをしたいのだが全くその子がしないのだという。仕方なく名刺を配って歩くしかない。開拓した会社も無駄になるのかもしれないという不安があるのだと。
「顔を見せてどういうことがあってとか話せばある程度の信頼は持てるのよ。あとは自分でしてっていえるんだけど。自分から全くしないで人の所為にされるのなら今いる人達にいうのよ。あの子は何もしなかったってね。」
仕事を取ってこれなくなってしまう不安もないのか。人が変わる不安に押しつぶされそうになっている夏樹をそっと見ていた。コーヒーをちびちびと飲む姿を横目で見るしかなかった。最初は乗り気ではなかった会社でも誇らしげに思うものがあったのだと思った。




