予期せぬ力
鈴木孝則の資料を眺めたに近かったこともあって詳しくは覚えていない。だが、木佐が登場することを嫌がったことは事実。木佐という優秀な弁護士がいることが邪魔になるということはまれなことだ。捨てがたい駒を捨てたということ。それすらもいとわなかった組織だとする。高橋権現と仲が良かった議員の事件を扱わせて国選の弁護士を使わなかったのは深い意味があるとしか思えない。木佐に会ってわかることがある。三枝の電話が鳴った。
「もしもし。」
「久しぶりだね。木佐です。」
木佐本人から連絡が来るとは思っても見なかったが、少し安心した感じがした。受けてくれるということなのだ。
「どうしたんですか?」
「いや、スクリプトの社長さんがね、弘樹君が調べていることにつながっていると思って連絡したんですよ。今取り扱っている裁判が・・・。」
聞くと窪塚紘一だというのだ。窪塚が高橋製薬とてを組んで作った薬で死人が出たというのだ。それも心臓に負担がかかる薬だというのを知っていながら隠していたのではと疑っているのだという。木佐にとっても相手が相手であるためにてこずるかと思ったがそうでもないらしい。
「上が揺れていることもあって、内部情報を流してくれる人がいてね、もろ漏れているんですよね。ありがたいことです。」
内部告発に携わっているのが警察の刑事だというのだ。権現がいたときには怯えていたらしいが、全くだという。専務も常務も社員に必死らしいが外部の会社に逃すのではないかとも思っているのだという。
「そこに営業の鈴木卓という人も絡んでくるのは知ってますか?」
「えぇ、知ってますよ。彼は営業で知識といってもその売り出しの薬くらいしか知らないみたいですし、研究職ほどじゃないと思ってますよ。」
鈴木の知識は猫をかぶっていると仮定すれば・・・。あり得ないことでもない。研究者は携わっていたこともあって認めているのだという。マウスを使っての実験を行ってもいるのだという。施設というのも最先端で知らなかったことはないといった。
「医者が知らないでは終わらないと思っています。まぁ、大学病院のほうも大ごとにしたくないのに、てごずっているとしか思えないんです。」
投与する薬を間違えれば明らかに死というものにつながると思える。それすらもなかったことにするのであればどれほどものを奪うのか。
「院長が最終的には出てくるとは思わないんですけどね。かかわっていないでしょうし。」
「院長が出てきたらどうなるんですか?」
「まぁ、俺だけじゃあてこずってまうと思うんです。」
院長の力がかかわってくると思った。




