崖のある道
三枝が警視庁へ行き、数日たった。時間は時には意地悪く進んでいくようだ。小関絵里についての進展は聞かない。木佐に話を聞く日が近づいているようにしかならない。事件を追っているときに小説を書いていないというのが集中できると思っている。澄川書店のほうも融通が利くのもあるが・・・。テレビをつけても高橋権現がなくなったこと、高橋洋一が亡くなったことで高橋製薬ではいったい何が起きているのかと騒がしくなっている。といってもネット上であらさがしような行為が行われており、過去の事件が掘り起こされたのがあって、高橋製薬にも打撃を与えるということだった。
「のんきだな。コメンテーターも。過去の事件を掘り返したところで手段がなくなったからそれなりの言葉を言って終わらせるなんて言うのは楽をしているんだよ。」
当時の当事者を当たっているようでもあるが、断られているのだ。以前似たようなケースがあったので、きれいごとを並べてしまっているといわれたこともあったので自粛しているのだ。三枝は冷蔵庫からペットボトルのコーヒーを取り出した。コップを取って少し手間を楽しんでいる。こだわったコップといってもそこまでの趣味でもないので安物を買っている。それに注いだ。小説家になったからといって生活が変わったわけでもない。綱渡りの生活であると思っている。騒がれているときは注目を浴びて売れるが、引くときは早いのだ。ソファに座って資料を見つめた。警察に全ての資料を渡すわけがないのだ。残っていたファイルを見つめた。新聞の切り抜きだ。
「小さくとも残っていないと事件なんて端っこのほうになってしまうからな。」
1つの新聞の記事が気になった。木佐が以前取り扱った裁判だった。議員の裁判を受けたのだろうが、国選の弁護士を断ったのが議員のほうだったのだ。決定的な証拠を突きつけられていることもすでに伝わっている状態なのだ。その議員とつながっていたのが高橋製薬の高橋権現であると小さく書かれている。権現がはめたのだ。だから契約を解除する方法を違約金を払ってでもやり抜きたかったのだ。この裏できっと都合の悪い話題が浮かび上がっていた。それをかき消すためにやった行為だとしたら・・・。
「鈴木孝則が死んだ時期と一緒だったな。それを事故死として処理になっているはずだから怯えることはなかったはず。無駄な行為になったということか。」
当時の新聞を持っているわけでもないので想像しかない。それでも確実に進んでいる。




